3月6日(日本時間7日)、NBAのアダム・シルバー・コミッショナーは、ダラス・マーベリックスのオーナー、マーク・キューバンが2月22日(同23日)に行なわれたアトランタ・ホークス戦での審判の判定に関して主張した抗議を認めず、キューバンに50万ドル(約5260万円)の罰金処分を下した。
この件について、NBAは、以下の声明文を発表している。
マーベリックスは、ホークスのジョン・コリンズが第4クォーター終盤に決めたフィールドゴール時にゴールテンディングを犯したとして笛を吹かれ、抗議した。映像判定の結果、マブスのゴールテンディングは覆されたものの、リプレイセンターで映像を確認した審判は、ゴールテンディングがコールされた瞬間、コリンズがシュートを放つ体勢にあったとして、ホークスの得点として認められるべきと結論づけた。マーベリックス側は、この得点を認めた審判がプレイルールを誤って認識しているとして抗議した。
試合終了直後、キューバン氏はコートに入り、審判に直接抗議した。試合の最中に同氏がコートで審判の判定に抗議したのは今回の件が2度目で、試合後、キューバン氏はリポーターの前で審判を批判し、Twitterにも審判を批判する内容の投稿を複数回行なった。試合翌日、同氏の発言はリーグと審判団の品位を落とす類のものと判断された。この翌日、マーベリックスはリーグのルールに則り、抗議文をリーグに提出。それから数日間にわたり、キューバン氏はNBAの審判を公の場で批判し続けた。
調査の結果、シルバー・コミッショナーは、マーベリックス対ホークスの一戦で、プレイルールを逸脱した判定はなかったという意思を表明。リプレイセンターは、ゴールテンディングと判定された瞬間にシュート体勢に入っている選手がいる場合、その得点が認められるというルールを正しく把握していた。また、リプレイセンターは、映像判定のプロセスを正しく遂行した。
リーグが同プレイの映像を分析したところ、コリンズがポゼッションを得る1/15秒前に笛が吹かれた。しかし、過去の事例と同様に、試合を裁く審判、リプレイセンターの審判により下された判定が、試合終了後の検証により誤っていたと判断されても、それはプレイルールの誤認には該当しない。審判は常に正しい判定を心がけている。リアルタイムで判定を下さなければいけない性質上、異なる判定が下される可能性も否めないものの、試合を改めて実施することはできない。これらの理由により、シルバー・コミッショナーは、判定に関する抗議、すでに終了した試合を終盤からやり直すという特例救済措置を与えられないと判断した。
またNBAは、キューバン氏が公の場でNBAの審判、判定プログラム、リーグの審判運営部門で働く人員個人を批判したとして、NBAのルールに違反していると判断した。
ファンとメディアが審判の判定を批判するのはスポーツの一部として認識されていても、チーム関係者は、より高い行動規範に準ずる必要がある。チームオーナーが試合中、試合後に審判の判定を批判する行為は、アンフェアな競合優位性を生み出し、高潔な試合を傷つけることになる。また、リーグ職員の品格を傷つける行為は、威圧的な労働環境を生み出してしまう。試合中は他者に対してコーチ、選手、ファンへの敬意を表す行動を求めている以上、球団関係者は模範を示すべきであり、会場内での適切な行動基準を下回るべきではない。
ファンやメディアとは異なり、球団関係者には、審判の判定に関してリーグオフィスに意義を唱える方法が複数用意されている。キューバン氏らの協力により、NBAは改善されたマネージメント、トレーニング、透明性、テクノロジーを用い、審判プログラムをより良いものに変えている。現在までに改善された点は以下の通り。
・シャーロット・ホーネッツのオーナー、マイケル・ジョーダン氏が議長を務める労使関係委員会が、監督者としての務めを果たす。
・リーグは、チーム重役、コーチ、選手、審判により構成される競技委員会と密接に連携し、プレイルール、判定に関連する事柄に関して、定期的に新たな意見を導入。これにより、ヘッドコーチによるチャレンジの実施が導入された。
・NBAリプレイセンターの改善とLast Two-Minute Report(試合最後の2分間の判定に関するリポート)により、判定に関する正確性、透明性、一貫性は高まった。
・トップレベルのビジネスマン、アメリカ軍に在籍した人材をリーグ運営部に起用。コートでのトップレベル審判(モンティ・マカッチェン)を新たなNBA、WNBA、NBA Gリーグの審判育成の監督者に起用。
・人工知能などの新たなテクノロジー導入により、ゴールテンディングなどリアルタイムでの判定が難しい場面での判定を改善。
・全てのNBA審判が下した判定の検証、ヘッドコーチによる毎試合後のフィードバックにより審判を評価。
・以前より多様性のある候補者の中からNBA審判を選出。
スポーツにおいて、審判は最も過酷な仕事のひとつ。審判がコート上でのパフォーマンスに関して説明責任を果たすのと同様に、競技の公平性と試合の品位を保つのは、リーグ、チームオーナー、球団職員、選手の義務である。