過去にコーチ経験のない元選手のNBAヘッドコーチ転向の歴史

大西玲央 Reo Onishi

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JJ・レディックがロサンゼルス・レイカーズの新ヘッドコーチに就任することが報じられた。先日ボストン・セルティックスの優勝で幕を閉じたNBAファイナルでは『ESPN』の中継で解説をしていたばかりだ。

レディックは2020-2021シーズンまで現役選手として活躍しており、その後は選手の頃からやっていたポッドキャストや、試合中継でのアナリストや解説者として活動。NBAでのコーチ経験がないままレイカーズのヘッドコーチという大役に抜擢された。

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コーチ経験がないまま元選手がNBAのヘッドコーチに就任というコースは、決して前例がないわけではない。

ジェイソン・キッド

まず、今年のNBAファイナルでダラス・マーベリックスのヘッドコーチとして指揮をとったジェイソン・キッドもそのひとりだ。2012-13シーズンまで選手としてプレイしたキッドは、その翌シーズンにブルックリン・ネッツの新ヘッドコーチに就任し、チームを44勝38敗の成績でプレイオフへと導いている。

その後はミルウォーキー・バックスのヘッドコーチ、ロサンゼルス・レイカーズのアシスタントコーチというポストを経て、2021-22シーズンからマーベリックスのヘッドコーチを務めている。今季は50勝32敗、ウェスタン・カンファレンス5位の成績でプレイオフに進出し、NBAファイナルまで勝ち上がっている。

スティーブ・カー

コーチ経験なしからのNBAヘッドコーチとして、最も成功しているのがゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーだ。選手として15年プレイし、2002-03シーズンを最後に引退したカーだが、その後は解説者として活躍。2007~2010年まではフェニックス・サンズのゼネラルマネージャーを務めたのち、再び解説業に復帰。

そして2014年にウォリアーズのヘッドコーチに就任すると、1年目にしてレギュラーシーズン67勝15敗、プレイオフで16勝5敗の成績を残しリーグ制覇を達成。就任から5年連続でNBAファイナル進出を果たし、チームを3度の優勝へと導いている。さらに2021-22シーズンにも優勝しており、レギュラーシーズン通算519勝274敗(勝率65.4%)、プレイオフ通算99勝41敗(勝率70.7%)という驚愕の成績を残している。

ドック・リバース

スティーブ・カーの他にチームを優勝へと導いたことのあるコーチはあと1人しかおらず、それがドック・リバースだ。リバースの場合は1995-96シーズンに引退し、1999年にオーランド・マジックのヘッドコーチに就任している。初年度の成績は41勝41敗で、その後マジックを3度プレイオフに道いたものの、5シーズン序盤に解任されている。

続く2004-05シーズンにセルティックスのヘッドコーチに就任し、就任4年目でチームを優勝させている。その後もロサンゼルス・クリッパーズとフィラデルフィア・76ersで指揮をとり、現在はミルウォーキー・バックスのヘッドコーチだ。レギュラーシーズンの通算成績は1114勝782敗で、コーチ経験なしからのNBAヘッドコーチとしては最も長いコーチキャリアを送っている。

ラリー・バード

コーチとしての年数は少ないものの、好成績を残したのがラリー・バードだ。1992年にセルティックスでの選手キャリアを引退後、バードは1997年までセルティックスフロントのスペシャルアシスタントとして活動。そして1997年にインディアナ・ペイサーズのヘッドコーチに就任している。

3シーズンしかコーチしていないものの、就任1年目にして前年39勝43敗だったチームを58勝24敗まで改善し、イースタン・カンファレンス・ファイナルまで導いた。ペイサーズが敗れた相手はその年2度目の3連覇を達成するマイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズで、そのブルズをも第7戦まで追い詰めている。就任3年目にはNBAファイナル進出を果たしている。

JJ・レディックは17人目

上述したコーチ以外では、ポール・サイラス、ディック・バンアースデイル、ダン・イッセル、クイン・バックナー、マジック・ジョンソン、ML・カー、アイザイア・トーマス、ケビン・マクヘイル、ビニー・デルネグロ、マーク・ジャクソン、デレック・フィッシャー、スティーブ・ナッシュがおり、レディックは17人目となる。

NBA中継での解説、ポッドキャストやレブロン・ジェームズと共にやっている番組での分析力などからバスケットボールという競技に対する理解度の高さは折り紙付きだ。しかしNBAのコーチはスターマネージメントを含み、選手たちからのリスペクトを得ることが最重要ポイントと言っても過言ではない。

レイカーズというスター選手が多く勝つことを求められるチームのヘッドコーチとして、わかりやすい結果が求められる過酷な1年目となることは間違いなさそうだが、選手としてもメディア人としても常に高い評価を得てきたレディックがコーチとしてどういった経歴を積んでいくのか注目だ。

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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。