NBA公認の大人気バスケットボール・ビデオゲーム『NBA 2K』シリーズの最新作『NBA 2K22』の発表に先駆け、今作の「NBA75周年記念エディション」のカバーアスリートに選ばれたカリーム・アブドゥル・ジャバー、ケビン・デュラント、ダーク・ノビツキーの3名がオンライン会見を行なった。
1969年にNBAデビューし、ミルウォーキー・バックスとロサンゼルス・レイカーズで6度のNBAチャンピオン、6度のシーズンMVP、2度のファイナルMVP、NBAオールスターゲーム選出19回という輝かしい経歴を持つスーパー・レジェンドのジャバーにとって、NBA 2K22のカバーを飾ることはどのような意味があるのだろうか。また、ジャバーは昨今のNBAについてどのような印象を持っているのだろうか。
NBAファイナル第1戦の試合開始直前に行われた会見で、ジャバーが様々な話題について語った。
――NBA 2K22のカバーアスリートに起用された今の気持ちを聞かせてください。
NBA 2K22のカバーアスリート起用について打診されたときは、とても嬉しかったです。世界的に人気のあるゲームに関わることができるということで、世界中のバスケットボール界において自分が築き上げてきた功績を感じることができました。こういった評価を受けられることは非常に光栄なことです。
NBA 2K22のカバーを飾ることは素晴らしいことですし、とても名誉なことです。カバーアートに載ること、カバーアスリートとして認められたことを非常に嬉しく思います。それ以外に言葉はありません。素晴らしい名誉と評価を受けたおかげで、とても幸せな気持ちになりました。
――あなたはNBA 2K22のレジェンドモードに登場することが認められた数少ない選手のひとりです。今のところ、あなたはキャリア通算得点の部門でNBA歴代最多記録を持っています。その名誉ある記録に追い付けそうなのは、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)ぐらいでしょう。この先、ジェームズはあなたの記録に追い付くことができると思いますか?
レブロンが私の記録に追い付けるかどうかは分かりません。記録に追い付く鍵は、健康を維持することです。レブロンは怪我が少ない選手ではありますが、それでも何度か怪我をしたことがあります。なによりも重要なのは、健康な状態を長期間維持し、安全にプレイすることです。彼が健康であり続けることを祈ります。健康を維持できたなら、私の記録を塗り替えることができるかもしれません。
――ジェームズの記録は常にチェックしているのでしょうか?
常にチェックしているわけではありません。ですが、彼が私の記録に近づいたときには丹念にチェックすることになるでしょう。きっと、私は彼の記録について何かコメントすることになりますからね。彼が記録を塗り替えたら、私は喜んで彼を祝福するつもりです。記録というのは、競争者としての自分の到達点を確認する指標にすぎません。記録を保持する選手は、それが一時的なものにすぎないことを理解しなければなりません。
――NBA 2Kシリーズは伝説的なスターチームを毎回登場させています。あなたはバックスとレイカーズをNBAチャンピオンに導いた経験を持っていますが、この2チームから選手を選抜してチームを作るとしたら、誰を選出しますか?
素晴らしい選手ばかりなので、難しい質問ですね。当時のバックスにはオスカー・ロバートソンがいました。オスカーは最も偉大なバスケットボール選手のひとりです。当時は彼のプレイを見る手段がほとんどなかった時代ですから、彼の才能が正しく評価されていないのは残念なことです。しかし、オスカーは素晴らしい選手でした。ですから、私はまず私自身とオスカーを選びます。
残りは4、5人の選手をレイカーズから選出すると思います。レイカーズにはマジック・ジョンソン、ジェリー・ウェスト、コービー・ブライアント、シャキール・オニール、ジェームズ・ウォージー、エルジン・ベイラー、レブロン・ジェームズといった素晴らしい選手が目白押しです。1960年11月にエルジンがニューヨーク・ニックスを相手に72得点した試合を、私は会場で見ていました。
私はこの2チームの選手の多くと面識があります。ですが、私が選抜チームを作るとしたら、ここに挙げた数名の選手を選ぶでしょう。
――昨今のNBAは以前とは大きく異なり、従来のようなセンターの存在は減少傾向にあります。最近では多くのビッグマンが3Pシュートを打つことを要求されています。もしこの時代に生まれていたとしたら、自分のプレイスタイルは大きく異なっていたと思いますか?
この時代にプレイしていたら、いろいろな面で違うことをしていたでしょう。ディフェンスでリバウンドを掴んで、自分でそのまま速攻に持ち込むことは当時から考えていました。高校でバスケットボールを始めたときに、自分ならそれができると思いました。ですが、高校時代のコーチに「ボールを触ろうとするな。それはガードに任せておけ。背中でディフェンスを押し込んで、ゴール下でポジションを確保しろ」と指示されました。しかし、昨今のバスケットボールはアップテンポなので、センターであろうがフォワードであろうが、誰でも速攻に持ち込んで、そのままフィニッシュできます。だから私は今のバスケットボールがとても楽しいのです。
それから、最近では長身の選手にも高いディフェンス技術が要求されるようになりました。相手のガードがピック&ロールを仕掛けてきたら、センターはペリメーターの外に出てペネトレーションを阻止しないといけないからです。このような変化の全てがバスケットボールの進化に貢献しており、コート上で起きていることを理解する手助けになっていると思います。
――昨今のバスケットボールを見ていると、従来のようなビッグマンのポストムーブの技術は失われつつあるように思えます。選手のオフェンスのレパートリーにポストムーブを加えることは、そんなに難しいことなのでしょうか?
ゴールに背を向けることに違和感を感じない選手であれば、オフェンスのレパートリーにポストムーブを加えることに大した時間は掛からないでしょう。全ては自分がどう感じるか次第です。ゴール近辺の位置取りをマスターしている選手なら、たとえゴールに背を向けていても自分の位置を常に把握することができます。ゴールに視線を向ける必要すらありません。床に引かれたラインやスタンドにいる人々との距離感から、自分の位置を把握することが可能なのです。
――あなたが現役時代に得意とした"スカイフック”は誰にも止めることができませんでした。きっとスカイフックをNBA 2K22の中で再現しようとするユーザーも多いはずです。そんなユーザーに向けて、この技のコツを教えてください。
スカイフックはダブルチームに対するカウンターとしても非常に有効です。スカイフックを警戒して相手がダブルチームを仕掛けてきたら、フリーになった味方に素早くパスしてオープンショットを演出することもできます。スカイフックを武器にすれば、自分でシュートを狙うこともできるし、ダブルチームをかわしてノーマークになった味方にフリーなシュートを狙わせることもできるので、試合を有利に進められるのです。
――マイケル・ジョーダンのフェイダウェイショット、マジック・ジョンソンのノールックパス、アキーム・オラジュワンのドリームシェイク、マヌ・ジノビリのユーロステップといったNBA史上最高のシグネチャームーブの数々の中で、あなたのスカイフックはどれぐらいのランクに位置すると思いますか?
スカイフックがナンバー1でしょう。今名前が挙げられた選手の中で、私よりも通算得点が多い選手はいないのですから。シュートの精度と私が辿り着いた境地を考慮に入れれば、スカイフックがナンバー1と言っても差し支えないはずです。スカイフックは本当に自慢のスキルです。たくさんのスキルがあり、使い方も人によって様々です。私のやり方が優れているとは言いませんが、私にはスカイフックが合っていたようです。
――あなたはポストスコアラーとして優れた成果を残しましたが、仮に今バスケットボールをプレイするとしたら、どんなタイプの選手になっていると思いますか?
現代でもポストスコアラーになるでしょうね。私のシュートはとても安定していましたから。私のフィールドゴール成功率はキャリア通算で56%ぐらいありましたから、コーチも2Pシュートを狙うことを望むでしょう。本気で取り組めば、きっと3Pシュートもマスターできたと思います。ですが、私は引退直前まで3Pシュートを学ぼうとすらしませんでした。最近の選手は身長が7フィート(213cm)あっても3Pライン近辺でプレイしますから、彼らとマッチアップするのは苦労するかもしれませんね。
――身長が208cm以上あるにもかかわらずコートのあらゆる位置でプレイできて、ペリメーターのディフェンスも難なくこなすケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)のような選手についてどう思いますか?
そういった選手が生まれるのは必然だったと思います。「長身選手はボールハンドリングが苦手」というのは間違った考え方です。デュラントは、長身選手であっても自在にボールを操れることを証明しました。誰も彼のドリブルを止められないし、彼のシュートをブロックすることもできません。彼はバスケットボールを次のレベルに引き上げた選手だと言えるでしょう。背が低い選手にできることは、長身選手にだってできるのです。
――今季のMVPを受賞したニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)やジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)、ルディ・ゴベア(ユタ・ジャズ)などの活躍を見ても分かる通り、最近になって再びビッグマンが脚光を浴びつつあるようです。どの選手も成功していますが、プレイスタイルは様々です。ビッグマンが進化したことや、その評価が再び上昇したことについては、どう考えますか?
NBAのビッグマンは天賦の才を持った選手だと思います。ペイントエリアに素早く飛び込んで、そこから自由に得点することができます。インサイドでもアウトサイドでもプレイできる選手もいます。アンソニー・デイビス(レイカーズ)はまさにその一例でしょう。昨季のレイカーズの優勝はデイビスのアウトサイドシュートがなければ達成できなかったはずです。これはバスケットボールという競技における新たな要素だと言えます。ビッグマンが注目されるのは嬉しいことですね。
――現役NBA選手の中でお気に入りのビッグマンはいますか? 「ネクスト・カリーム」になる可能性があるのは誰でしょうか?
私のお気に入りのビッグマンは、ロサンゼルスでプレイしている背番号3の選手、アンソニー・デイビスです。彼は最も才能に溢れた選手だと思います。ペイントエリアでは攻守両面において圧倒的ですし、ペリメーターでも脅威です。彼は中・長距離のジャンプシュートを安定して決められます。「ネクスト・カリーム」を選ぶとしたら、彼しかいません。
とはいえ、さきほど名前が挙がったエンビードやヨキッチも素晴らしい選手です。私は彼らのプレイをそれほど多く見たことがないのですが、もし彼らのプレイを何度も見る機会があれば、もしかしたら心変わりするかもしれません。しかし、私はデイビスを応援するつもりです。私は彼を応援しないといけないのです。なぜなら、私はずっとレイカーズの人間だからです。それに、実際にデイビスは成果を上げ続けているのですからね。
――あなたはNBA 2Kシリーズが誕生する前にNBAで伝説を築き上げた選手です。そして今、あなたが築き上げたものはNBA 2K22を通じて世界中で生き続けることになります。実際にあなたのプレイを見たことがない世代のファンが、ゲーム内であなたのプレイを追体験できることを、どのように感じますか?
このような形で私のプレイを今の若者に見せられるのは嬉しいことです。NBA選手だった当時、私はよく空港でビデオゲームをプレイしていました。そんなビデオゲームの世界に自分が出演できるのは喜ばしいことです。形は大きく様変わりしたとはいえ、私が当時プレイしたのと同じビデオゲームの世界ですからね。しかも、NBA 2Kシリーズは世界中で販売されています。それは、とても名誉あることです。私がこれだけ長生きできたのも幸運なことです。とても感謝しています。
若い世代の人々は私のプレイを見たことがないと思いますが、NBA 2K22のカバーで私を見ることによって、もしかしたら私のことを調べてくれるかもしれません。私が何を成し遂げ、どのようにしてそれを成し遂げたのか、そしてどれだけ長い間NBAでプレイを続けることができたのか。競技における選手の能力や価値について考える際に、そういった要素を全て考慮に入れるべきだと私は考えています。