シニアプロデューサーが語る最新作『NBA 2K17』の魅力(西尾瑞穂)

Mizuho Nishio

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10月20日(木)に発売予定の『NBA 2K』シリーズ最新作『NBA 2K17』のプロモーションのため、昨年に引き続きシニアプロデューサーのエリック・べニッシュ氏が来日した。

前作からさらに大きな進化を遂げた『NBA 2K17』の注目ポイントや制作裏話について、今回もべニッシュ氏に大いに語ってもらった。


――先日、私はサンフランシスコの2Kスタジオとモーション・キャプチャー・スタジオ(以下モーキャプ・スタジオ)を取材しました。そこで、とても充実した設備や最新技術を目の当たりにしました。しかし、それ以上に、制作スタッフのチームワークがNBA 2Kシリーズを支えていると感じました。『NBA 2K17』の制作にあたり、何人のスタッフが関わったのでしょうか?

フルタイムでNBA 2Kシリーズの制作に関わっているスタッフは約130人で、2K社が制作するスポーツゲーム(WWE、NHL)の全てのスタッフを合計すると、とても大きな組織になるよ。

――NBA 2Kの制作スタッフの間で一番人気のあるNBAチームはどこでしょう?

今はゴールデンステイト・ウォリアーズのファンが一番多いと思う。なぜなら、うちのスタッフは勝つことが好きだからね(笑)。それに、ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンらのプレイは見ていて楽しいし、今シーズンからはケビン・デュラントまで加わる。今まで以上にウォリアーズはシュートを決めまくるんじゃないかな。

――ロサンゼルスで生まれ育ったあなたは、生粋のロサンゼルス・レイカーズファンだと聞いています。そのレイカーズですが、現在のところ『NBA 2K17』における総合評価(チーム・レーティング)は全30チーム中28位でした。長年レイカーズを応援しているエリックさんから見て、今シーズンのレイカーズはいかがですか? そして、レイカーズの未来については、どのようにお考えですか?

(頭を抱えながら)レイカーズの総合評価が28位というのは本当にショックだよ。でも、レイカーズの未来はとても明るい。それは間違いない。19歳になったばかりのブランドン・イングラムをはじめとした若いコアメンバーが結束を深め、彼らがNBAの試合で経験を積み、負けることから学び、そしていつの日か、脇を固めるベテラン選手も加わることで1つのチームとして完成すれば、ウォリアーズやキャバリアーズも倒せるチームになると思っているよ。でも、今シーズンはせいぜい30勝ぐらいかな(笑)

――『NBA 2K17』のカバー・アスリートに関してですが、いくつかの国では、その国出身の選手をカバーに起用したバージョンも発売されています。例えば、イタリアではダニーロ・ガリナーリ、スペインではパウ・ガソル、ドイツではデニス・シュルーダーがカバーを飾るバージョンが発売予定です。そういった特別バージョンは、それぞれの国のファンからの要望で作られるのでしょうか?

特別バージョンのカバーについては、我々NBA 2Kのスタッフが「その国の人気選手は誰か?」ということを独自に調査しているんだ。数年前には、フランスでトニー・パーカーのバージョンを発売したり、台湾でジェレミー・リンのバージョンを発売したりした。イタリアでマルコ・ベリネリのカバーを作らなかったのは、彼に申し訳ないことをしたな(笑)。とにかく、各国のファンが喜ぶカバーを作ることも、NBA 2Kシリーズでは重視しているよ。

――昨年あなたにインタビューしたとき、2015-16シーズンの優勝予想をしてもらいました。覚えていますか?

ちょっと待ってくれ! 僕はどんな予想をしたかな!?(笑)

――あなたは、「ファイナルはウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズの再戦になる。そして、もしカイリー・アービングが健康ならばキャバリアーズが優勝するだろう」と予想しました。なんと大正解です!

(ガッツポーズをしながら)よし! やった! 完璧じゃないか! 安心したよ(笑)

――では、今シーズンの優勝チームはどこになると予想しますか?

またウォリアーズとキャバリアーズの再戦……と言ったら面白くないから、ちょっと違う組み合わせを考えようかな。でも、西はウォリアーズが固いね。では、東を考えてみよう。どこがキャバリアーズを倒せるか……シカゴ・ブルズではなさそうだな。インディアナ・ペイサーズも違うな。(背後のポール・ジョージの看板に向かって)……すまない、ポール。ボストン・セルティックスはアル・ホーフォードの加入で面白いチームになるけれど、まだ若過ぎると思う。オーランド・マジックやアトランタ・ホークスも違うから、やっぱりウォリアーズとキャブズの再戦になるかな。そして、今シーズンはウォリアーズがNBAチャンピオンになると予想するよ。カリーがリベンジに燃えているだろうしね。

――昨年は、『NBA 2K16』の優勝シミュレーションの結果もお聞きしました。そのときは、『NBA 2K16』もキャバリアーズとウォリアーズの再戦でキャバリアーズが優勝するという結果が有力だったと聞きました。『NBA 2K17』のシミュレーションによる今シーズンの優勝チーム予想はいかがでしょうか?

『NBA 2K17』のシミュレーションでも10回中7~8回の確率でウォリアーズが優勝したよ。もちろん、怪我やトレード次第によって結果は左右されるけれどね。

――今オフの注目は、ケビン・デュラントがフリーエージェントでウォリアーズに加入したことです。このニュースが発表された直後に、サンアントニオ・スパーズのカイル・アンダーソンは、「俺の家で『NBA 2K17』をプレイするときはウォリアーズは使用禁止だ。それが我が家のルールだ」と、ツイートでジョークを飛ばしました。後にそのツイートは削除されましたが、この件はご存知ですか?

ああ、もちろん知っているよ。面白いツイートだったから、削除する必要はなかったのにね(笑)

――ですが、デュラントの加入によって『NBA 2K17』のウォリアーズがかなり突出した“スーパーチーム”になることは明らかで、それによって『NBA 2K17』のゲームバランスが崩れるのではないかという懸念も実際にあります。例えば、オンライン対戦するときにほとんどの人がウォリアーズを使う、という事態も考えられますが、この件に関してはどのように考えていますか?

まず第一に、ウォリアーズは間違いなく強力なチームになったと思う。カリー、トンプソン、デュラントがどこからでも得点してくるからね。しかし、『NBA 2K17』ではディフェンスのシステムを大幅に改善したので、ユーザーの操作や戦術次第で、彼ら3人を同時にシャットアウトすることは十分可能になっている。もちろん、グリーンを含めた4人同時にシャットアウトすることもね。

次に、今作ではユーザーの操作の良し悪しが、ゲーム内のプレイの良し悪しに色濃く反映されるようになっている。例えば、ユーザーがしっかりと狙いを定めないとシュートは入らないし、シュートの強弱もユーザーの操作をダイレクトに反映する仕組みになっている。だから、もし多くのユーザーがウォリアーズを使ったとしても、操作が悪ければ、キャバリアーズやロサンゼルス・クリッパーズのような他の強豪チームにいとも簡単に叩きのめされるはずだよ。

――ウォリアーズに関連してもう1点、ステフィン・カリーのシュートについて聞かせてください。現実のカリーはどこからでもシュートを決められるし、普通では“バッドショット”と思われるようなシチュエーションでも3ポイントショットを決めてきます。そして、昨シーズン、彼は数多くの記録を塗り替えました。そのため、前作の『NBA 2K16』では、カリーの能力値やAIの思考回路について、シーズンの途中で大幅な修正が加えられたと聞きます。それは『NBA 2K17』にも引き継がれているようで、先ほど試遊した際も、ゲーム内のカリーは信じられないシュートを数多く沈めていました。カリーは『NBA 2K17』の最強ポイントガードだと考えていいですか?

確かに、カリーは3Pラインのはるか後ろからでも高確率でシュートを決められるし、ハーフウェイライン付近までシュートレンジにしているのは彼ぐらいのものだろう。『NBA 2K17』でも、彼のそういった能力は忠実に再現されているよ。

しかし、だからといって「『NBA 2K17』の最強ポイントガードはカリーか?」と言われると、そうではない。カリーは素晴らしいスコアリング・ポイントガードだけれど、例えばクリス・ポールはパスやゲームメイキングでチームメイトを生かす司令塔タイプのポイントガードとしては最高の選手だし、なによりポールはカリーよりもディフェンスが上手いからね。とはいえ、カリーがとんでもない選手であることは間違いないよ。

――『NBA 2K17』の注目ポイントの1つは、ドリームチームIと今年のアメリカ代表チームをプレイできるということです。この2チーム間の試合は何度もシミュレーションを重ねたと思いますが、どちらが強いでしょうか?

『NBA 2K17』のシミュレーション結果では、ドリームチームIが6割の確率で勝ったよ。ドリームチームIには、マイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソンがいるんだから、当然強いよね(笑)。ただ、ドリームチームIがプレイした時代と現代とでは、ファウルの判定基準やルールの違いも多いので、現実のこの2チームの強さを単純に比較することはできないと思う。

――今夏までアメリカ代表のヘッドコーチを務めたマイク・シャシェフスキー(以下コーチK)も「2KU」というモードに登場しますね。コーチKはコート上では非常に厳格ですが、プライベートではとても面白い人物だと聞いています。コーチKと仕事をしたときの逸話はありますか?

コーチKは本当に面白い人だったよ。我々スタッフと一緒にゲームに関して打ち合わせをしていたときに、横のモニターで『NBA 2K17』のデモ画面を流していたんだ。すると、突然コーチKが話を中断して、「ダメだダメだ、今のプレイは良くない。この選手がオープンだったんだから、彼はパスすべきだ」と、画面の中のゲーム映像に対してコーチングを始めたんだ! あれはとても面白かったし、我々にとって貴重な体験でもあったよ。

――『NBA 2K17』では、グラフィックやライティング、ユニフォームの質感が格段に向上しました。また、3Dスキャナーを使って忠実に再現されたシューズも素晴らしいです。テクノロジーの進歩は、ゲームのクオリティ向上における大きな要素でしょうか?

ゲームのクオリティは、テクノロジーと人間の努力の両方が組合わさることで、日々向上していくんだ。今作でシューズのクオリティやディテールが大幅に向上したのは、3Dスキャナーというテクノロジーのおかげでもあるけれど、300足以上のシューズをスキャンしてゲームの中に取り込むという膨大な作業をしたスタッフの努力の結晶でもある。ライティングに関しても、スタッフが全てのアリーナに足を運び、アリーナ毎に異なるライトの位置やライトの当たり方を調査し、それをゲームの中で忠実に再現したからこそ、あのリアリティが生まれたんだ。

――全ての『NBA 2K17』ユーザーが、音のクオリティに驚くことは間違いありません。NBA 2Kのスタッフは、アリーナ毎に音が違うことについて、いつ頃から気付いていたのでしょうか?

昨シーズン、我々は1万6000マイルを移動して全米中の全てのNBAアリーナを回り、あらゆる音を収録した。ユーザーの皆さんはきっと、ボールがフロアで弾む音や、リングにボールが当たったときの音、ショットクロックのブザーの音、観客の歓声の響き方、館内アナウンスの声などが、アリーナ毎に違うということに驚くだろうね。コアなNBAファンであっても「おや? このアリーナのブザーの音はサクラメントのアリーナと違うな」なんて気付く人は滅多にいないはずだ。

我々はかなり昔からその違いについて気付いていたけれど、1作につき9~10か月にも満たない制作期間では、なかなか実現に踏み切れなかったんだ。NBAチームのある都市を1箇所ずつくまなく回って、各都市に数日間宿泊し、何試合か録音作業をして……というのは途方もない作業だからね。しかし、我々はずっと「いつかはやりたい」と話し合いを続け、やっと今作で実現することができたんだ。結果的に、今作で実現したのがベストのタイミングだったと思うよ。

――『NBA 2K17』では、「ダイナミック・コメント・ブース」という新要素が加わりました。これは、まるで実際のテレビ放送のように、著名なコメンテイターがリアルタイムでプレイの分析をしてくれるという機能ですが、このために8人のコメンテイターから3万通りの分析コメントを収録したそうですね。

その通り。我々は何百時間もかけて収録作業をしたよ。前作までのコメンテイターは3人だったけれど、今作では一気に8人のコメンテイターが登場することになった。元NBA選手のスティーブ・スミスをはじめ、彼らは全員セレブリティで、オフシーズンであっても多忙なので、スケジュールを調整しながら膨大な時間をかけて収録するのは本当に大変な作業だったよ。でも、我々は是非とも彼らのコメントをゲームに取り入れたいと思ったし、彼らも『NBA 2K17』に登場することを熱望してくれた。

一般的なスポーツゲームでは特定の2人の実況と解説者がコメントするだけだけれど、『NBA 2K17』では8人のコメンテイターが試合毎にランダムにペアを組んで登場する。そんなことをやったゲームはかつてないし、凄く手間のかかる作業なので、他のゲーム会社ならやってみようとすら思わないことだろう。けれど、我々NBA 2Kのスタッフは「面白そうだな。よし、やろうじゃないか!」という感じだったよ。

――今作の「MyCAREER」モードは、前作とはかなり様変わりしたようですが。

『NBA 2K16』の「MyCAREER」モードは、スパイク・リー監督による1本の映画のような作りだった。それに対し、『NBA 2K17』は様々なストーリー分岐があるロールプレイングゲームのような作りになっていて、ユーザーがプレイした試合や人間関係の作り方次第で、話の流れや結末が大きく変わるんだ。

今作の「MyCAREER」モードの脚本と監督を務めたアーロン・コビントン(代表作『クリード チャンプを継ぐ者』)はNBA 2Kシリーズの熱狂的なユーザーで、今回の「MyCAREER」モードの制作に取り掛かるにあたり、「前作のスパイク・リー監督によるストーリーはとても素晴らしく私も大好きだが、あれはリー監督のストーリーだ。私は、ユーザー自身の選択によってストーリーが作られる形にしたい」というアイデアを話してくれたんだ。

また、前作では例えば「親友の死」といったバスケットボール以外の話がストーリーの大半を占めたが、今作のストーリーでは全てバスケットボールにまつわる話になっている。そのため、ユーザーはバスケットボールの世界にドップリと浸かることができるはずだよ。その点も、前作との大きな違いだね。

――「MyGM/MyLEAGUE」モードもかなり進化したようですね。

その通りだ。今作の「MyGM/MyLEAGUE」モードの特徴の1つは、2016-17シーズンがスタートする前のオフシーズンからゲームを開始することができるようになったことだね。これにより、ユーザーは6月のNBAドラフトや夏のフリーエージェントをもう一度やり直すことができる。トレードでドラフト全体1位指名権権を獲得してベン・シモンズを指名することもできるし、FAでケビン・デュラントを獲得することもできる。つまり、自分だけのオリジナルの歴史を作り出すことができるんだ。

また、リーグを30チームから36チームに拡張したり、エクスパンションドラフトで新設チームに選手を移籍させることもできる。一方で、プレイオフだけ「MyLEAGUE」をプレイしたり、現実のNBAのトレード情報を反映させた上でシーズン途中から「MyLEAGUE」をプレイするといった、ライトな楽しみ方もできる。多種多様な遊び方ができるので、ユーザーのあらゆるニーズに応えられるはずだよ。

――ゲームのシステムや操作方法に関しても大きな変更があるようですね。

ゲームのシステムは、今まで以上に現実のNBAに近づいているよ。ユーザーによっては「選手やコーチの人工知能が現実に近づくと、ゲームの難易度が上がるのではないか」という懸念を持つ人もいるだろうけれど、『NBA 2K17』をプレイしたユーザーは、より直感的に、そしてより簡単に操作できるようになっていることに気付くはずだ。

例えば、ユーザーが操作している選手以外のチームメイトが「ユーザーがピック&ロールをしようとしているから、自分たちはこう動こう」とか「ユーザーがダブルチームを仕掛けたから、他の選手はパスカットを狙おう」といったことを自動でやってくれるし、コーチもユーザーがプレイしやすいような指示を出してくれるよ。

また、「2KU」モードでは、『NBA 2K17』の操作方法やバスケットボールの戦術について、コーチKがビデオ映像を駆使しながら解説してくれるので、このモードをプレイすれば誰でも簡単に『NBA 2K17』を操作できるようになるはずだよ。

――来年2月のNBAオールスターウィークエンド期間中に、オールスター開催地のニューオーリンズで『NBA 2K17』のPro-Amトーナメント決勝大会が開催されるそうですね。一体どのような大会になるのでしょうか?

我々は現在、e-sports(ゲームの競技大会)がゲーム業界の非常に大きな要素の1つだと考えている。『NBA 2K17』では、ただボタンを押せばシュートを決められるようにはせず、ユーザーは競技者として、シュートの方向や投げる強さまで自分で操作しないといけなくしたことからも、それは分かってもらえるはずだ。

『NBA 2K16』では、NBAファイナルが終了した直後の今年6月にロサンゼルスで大きなPro-Amトーナメントを開催し、ポール・ジョージと元NBA選手のリック・フォックスが大会のホストを務めてくれて、8チームが腕を競い合った。とても素晴らしい大会だったし、出場したチームのプレイを生で見て、NBA 2Kのスタッフが学ぶことも多かったよ。その経験も踏まえて、次のニューオーリンズのトーナメントはもっと大きな規模にする予定だよ!

――そのPro-Amトーナメントには、日本からも参加することは可能なのでしょうか?

現在はまだ優勝賞金や試合のレギュレーション等を話し合っている段階なので、詳細は後日発表するよ。

――NBA 2Kシリーズの大ファンの1人として、私から2つのアイデアを提案したいのですが、聞いてもらえますか?

いいじゃないか! もちろん聞くよ!

――『NBA 2K17』ではモバイルアプリを使ったフェイス・スキャンが導入されました。スマートフォンは今は我々に欠かせないデバイスですし、NBA 2Kシリーズとの関わりも今後どんどん深まっていくと思います。そこで、自分が実際にバスケをしている様子をスマートフォンで撮影したユーザーが、その動画ファイルをNBA 2Kのゲームソフトに転送すると、NBA 2Kが保有する膨大なモーション・キャプチャー・データを元にその映像を解析し、ゲーム内にユーザー独自のシグネチャームーブが生成され、自分そっくりのプレイをする選手を作ることができたら面白いと思うのですが、このアイデアはいかがでしょうか?

スマートフォンのカメラを使ったモーション・キャプチャー技術に関しては、数年前からリサーチを始めているよ。ただ、まず現段階で問題なのは、スマートフォンでは一方向からしか撮影できないということだ。例えば、カメラの手前でドリブルする映像を撮ったとしても、体の向こう側にある腕がどういう動きをしているかは見えない。君がモーキャプ・スタジオで実際に見たように、モーション・キャプチャーには360度あらゆる方向からカメラで撮影してデータを収集する必要がある。そういった問題が1点。

もう1つは、映像の明るさの問題だ。適切な明るさを確保した環境でクッキリとした映像を撮影しなければ、モーション・キャプチャーのデータ分析はできないんだ。

でも、君の提案はとても面白いと思うし、テクノロジーが進歩したら、いつか実現すると思うよ。

――もう1つの提案は、最近話題のバーチャルリアリティー(以下VR)技術です。VRヘッドマウント・ディスプレイ(内側が全面モニターになったゴーグル)をかけて、NBA選手の視点でNBA 2Kをプレイできたら、まさにリアルそのものだと思います。加えて、イヤフォンを通して、正面からは相手選手のトラッシュトークが、横からはヘッドコーチが指示を出す声が聞こえる……というところまで再現すると、文字通りNBAの世界を仮想体験できると思うのですが、いかがでしょうか?

VRは、間違いなく今後重要になる技術で、いずれ何らかの形でNBA 2Kシリーズに取り入れようと研究を進めているよ。ただ、バスケットボールという動きの激しい競技の特性上、ユーザーがモーション・シック(乗り物酔いのような症状)に陥る可能性が非常に高いんだ。そういった症状を未然に防ぐためには、安定した動きの映像にするなど、非常に多くの技術的な調整が必要になるし、それ以外にもVRに関しては研究をしなければいけないことがまだまだ山積みなんだ。

NBA 2Kシリーズの制作期間は1作品につき1年にも満たないため、どうしても一度に導入する技術は限られてしまう。だから、VRの導入はもうしばらく先のことになりそうだね。ただ、VRとNBA 2Kとの相性が良いのは明らかなので、いつか必ず実現させるよ。

――最後に、日本のNBA 2Kファンに向けてメッセージをお願いします。

今年も日本に来て、最新作『NBA 2K17』の魅力を皆さんにお伝えすることができ、大変光栄に思っています。『NBA 2K17』は、かつてないほど大きな進化を遂げましたので、どうぞご期待ください。

日本のNBA 2Kファンの皆様の変わらぬサポートに、いつも感謝しています。これからも、NBA 2Kシリーズへの熱い応援をよろしくお願いします!

文:西尾瑞穂 Twitter: @jashin_mizuho Instagram: jashinmizuho

『NBA 2K17』公式サイト http://nba2k.jp/


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