NBA 2021-22シーズン開幕2試合で見えたこと

大西玲央 Reo Onishi

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10月19日(日本時間20日)、NBA創設75周年となる2021-22シーズンがついに開幕し、ブルックリン・ネッツ対ミルウォーキー・バックスとゴールデンステイト・ウォリアーズ対ロサンゼルス・レイカーズの2試合が行なわれた。

それぞれプレイオフでも対戦する可能性のある両試合から見えたことをいくつかピックアップしてみよう。

Giaanis Antetokounmpo, Kevin Durant

バックスが127-104でネッツを圧倒

圧倒的ヤニス

NBAファイナルの6試合で平均35.2得点、13.2リバウンド、5.0アシスト、1.2スティール、1.8ブロックという圧倒的な数字を見せたヤニス・アデトクンボが、レギュラーシーズンでもこの自信に溢れたプレイを続けるようならば、リーグにとってさらなる脅威となると言われていたが、開幕戦ではまさにその姿を見せた。

スター選手が揃うネッツ相手に30分間の出場で32得点、14リバウンド、7アシスト、1スティール、2ブロックという素晴らしい数字を残し、チームを勝利へと導いたのだ。相変わらずペイント外からのショットはあまり決まっていなかったものの、その突進力を止められる選手はおらず、楽々とリングにアタックできていた。ヤニス対策として多くのビッグマンを揃えたネッツ相手にそれができたのは、本人にとっても自信に繋がりそうだ。

さらに、昨季のプレイオフで話題になった長すぎるフリースロールーティンは大幅に短縮され、自然な流れで打つことができていた。実際この試合では9本中7本のフリースローを決め、弱点克服の兆しを見せた。

パティ・ミルズの重要性

カイリー・アービングがチームから離脱中ということもあって、本来望んでいた形でシーズンを迎えられなかったネッツは、まだ手探りな状態であることを露呈する試合となった。どういったラインナップが有効なのか、まだ決まっている様子はなく、初めて組んだケビン・デュラント、ジェームズ・ハーデン、ジョー・ハリス、ブレイク・グリフィン、ニック・クラクストンは上手く機能せず序盤からバックスにリードを許してしまった。

そんななかでデュラントは安定の活躍を見せていたが、もうひとり絶好調だったのがオフシーズンにサンアントニオ・スパーズからやってきたパティ・ミルズだ。ミルズは放った7本の3ポイントショット全てを決め、ベンチから29分の出場で21得点を獲得。新チームに移籍後のデビュー戦での3Pショット7本成功はNBA新記録更新となった。

得点以外に2リバウンド、2アシスト、1スティール、1ブロックとあらゆる面でチームに貢献し、出場しているあいだのチームの得失点差を表すプラスマイナスでほとんどのネッツ選手がマイナスだったなかで、ミルズはプラス7を記録した(ラマーカス・オルドリッジのプラス2がほか唯一のプラス選手)。

アービングの復帰がいつになるか不透明であることを考えると、ミルズがこうして貢献してくれることはネッツにとってとても大きい。あまり上手くいかなかったスターティングラインナップにミルズを投入するのか、ベンチからの起爆剤として起用し続けるのか、スティーブ・ナッシュ・ヘッドコーチの手腕に今後も注目だ。

Stephen Curry

ウォリアーズがレイカーズに逆転勝利

カリーの新パートナー、ジョーダン・プール

ステフィン・カリーのパートナーと言えば、スプラッシュブラザーズの相棒であるクレイ・トンプソンだ。しかしトンプソンの復帰は早くても12月25日(同26日)のクリスマスゲームと言われており、もう2シーズン以上ふたりが一緒にプレイしているのを我々は見ていない。そしてその間、ウォリアーズはプレイオフに出場することもできていない。

しかし昨季終盤からじわじわと数字を向上させていたのが若手のジョーダン・プールだ。そして今季もプレシーズン初戦に3Pショット7本成功を含む30得点、5リバウンド、5アシストの活躍を見せるなど、周囲からの期待の声は高まっていた。

そして迎えた開幕戦で、プールはカリーさながらのステップバックスリーを決めるなど、20得点の活躍でチームの勝利に大きく貢献した。特筆すべきは第4クォーター序盤にカリーがベンチで休んでいた時間帯だ。これまでのウォリアーズは、カリー不在時に大きく崩れてしまうことが多かったのだが、この試合ではこの時間帯にプール主体のオフェンスで試合の主導権を奪ったのだ。

もしこの活躍をシーズン通して続けることができるのであれば、トンプソンが復帰したウォリアーズのガード層はとても厚くなる。

ネマニャ・ビエリツァのフィット

2015年にユーロリーグMVPに選出されるなど、輝かしい経歴を持ってNBAにやってきたビエリツァだが、ここまであまり目立った活躍を見せていたわけではなかった。2019-20シーズンにサクラメント・キングスで記録した平均11.5得点、6.4リバウンドが最高で、昨季はキングスからヒートへとトレードされ、出場時間も減少するなど、思うように数字を伸ばすことができていなかった。

しかし、オフシーズンにウォリアーズに移籍したことがようやくビエリツァの才能開花に繋がったのかもしれない。レイカーズ相手にビエリツァはベンチから26分の出場で15得点、11リバウンド、4アシストを記録。プラスマイナスはゲーム最多となるプラス20で、彼がコートに立っている時間帯のウォリアーズは目に見えて上手く回っていた。

特筆すべきはそのパスセンスだ。この試合では4アシストとそこまで高いわけではないが、スティーブ・カーHCが好むチームでボールを回し続けるスタイルにビエリツァは最適な人材と言える。ピック&ロールやドリブルハンドオフでボールを受け取って、フリースローライン近辺まで切り込んでからのパスが特に長けており、そこから多くのプレイが生まれていた。デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチのゲームメイクを想像するとわかりやすいだろう。

今までインサイド選手のゲームメイクはドレイモンド・グリーンに頼ることが多かったウォリアーズだが、ビエリツァがそこに加わることでチームとしての選択肢が一気に広がりそうだ。

スター揃いのレイカーズ、模索中

レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスはそれぞれ30得点以上獲得のダブルダブルを記録するなど、開幕戦からしっかりと仕上がっていることを見せてくれた。特にジェームズは3Pが11本中5本と当たっており、今季はさらに外から狙ってくる怖さが加わるのかもしれない。

しかしこのふたりは昨季のロスターから残っている3選手のうちのふたりで、戦力として計算ができることはわかっていた。問題は新しく加入した選手たちのチームとのハマり具合だ。レイカーズで二桁得点したのはジェームズとデイビスのみで、次に高かったのはベンチから出場したカーメロ・アンソニーの9得点だった。

特に悪い意味で目立ったのが3人目のスター選手として期待されるラッセル・ウェストブルックだ。先発ポイントガードとして出場したウェストブルックは35分の出場でプラスマイナスがチーム最低となるマイナス23を記録し、フィールドゴール13本中4本成功のわずか8得点、5リバウンド、4アシストに終わった。

コーナーで待機しているシーンも多く、ボールを持ってこそ輝くウェストブルックを有効に活用できていたとは考えにくい。ジェームズもボールを持つ時間が多いことから、このふたりがどうコートで共存するのかに対して、今後早めに答えを出すことが重要となる。

ウェストブルックが自由にコート上を動き回るためには、よりコートを広く使う必要があるだろう。そのためにも、チームとして3Pショットの本数と成功率は上げていきたい数字となってくる。


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大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。