【NBA 2019-20シーズン開幕前戦力分析】オーランド・マジック

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2019-20シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第17回目は、オーランド・マジック編をお届けする。

2018-19シーズン成績:42勝40敗、プレイオフ1回戦でトロント・ラプターズに敗退

新加入:アル・ファルーク・アミヌ(フリーエージェント)、チュマ・オキキ(ドラフト)

退団:ティモフェイ・モズゴフ

気付いていないかもしれないが、マジックは実は2018-19シーズンにディビジョン制覇を達成している。弱体化したサウスイースト・ディビジョンでのことであるため、失笑する人もいるかもしれないが、ドワイト・ハワード時代以降あまり成果を出すことができていないフランチャイズにとって、どんな形であれチームが前進しているのは良いことだ。

シーズン半ばにスランプを迎えたものの、終盤にかけて11勝2敗という強さを見せ、プレイオフ出場を果たした。さらに1回戦では、その後優勝したトロント・ラプターズを相手に1勝したのだ。イースタン・カンファレンスに所属しているのが助けにはなっているが、マジックが成し遂げたことをあまり過小評価するのは良くない。

アーロン・ゴードンとエバン・フォーニエが安定したシーズンを送り、テレンス・ロスはキャリア最高のシーズンを送り、ニコラ・ブーチェビッチはオールスターに選ばれた(フリーエージェントになるブーチェビッチとロスが、良い契約を勝ち取るためにプレイしていたのも活躍の要因ではあるかもしれないが)。さらにチームは新しく迎えたスティーブ・クリフォードHCの要求にもうまく応えた。

しかし、落胆もあった。主にここ2年のドラフト1巡目指名選手だ。2年目のジョナサン・アイザックは期待されていた成長を見せることができず、ストレッチ4になるべきなのか、サイズを使ってペイントでプレイすべきなのかを迷っている様子だった。結局、どちらも及第点レベルにとどまった(平均9.6得点、5.5リバウンド)。ルーキーのモー・バンバはケガに苦しみ、わずか47試合の出場に終わっており、長い目で見る必要がありそうな結果となった。最終的に、マジックは7年ぶりにプレイオフに進出、2010-11シーズン以来最も勝ち星をあげるシーズンとなった。NBAのレーダーに微かな光を灯し、地元の観客を満足させることになんとか成功した。

Nikola Vucevic

 

オフの動き

チームの未来を見据えた上で、チームのオールスターセンターの去就をマジックが考えなければならないのは、この10年で2回目だった。前回はハワードだ。今回は、ハワードの代わりとして獲得した男だ。当時と同じように、マジックはビッグマンと再契約すべきかを悩んだ。

実際は双方による決断が必要だ。マジックがブーチ(ブーチェビッチの愛称)を欲しがるのであれば、制限なしのフリーエージェントだった本人も残留したいと考えていなければならない。そしてどちらも即決できるものではなかった。ブーチェビッチと彼の家族はオーランドでの時間を楽しんではいたが、チーム自体はようやく勝ち越しシーズンを記録したものの、優勝候補と呼べるものではない。そしてロサンゼルス・クリッパーズを含むいくつかのチームが、柔らかいシュートタッチと良いフットワークを持ち合わせたセンターの彼に興味を示していた。

一方のマジックは、2018年に全体6位指名でバンバを指名したばかり。考えとしては、バンバがいずれブーチェビッチに取って代わる選手になるものだと期待するだろう。そこでブーチェビッチを残留させた場合、バンバはそれをどういうメッセージとして受け取るだろうか? ウェンデル・カーターJr.やコリン・セクストンよりも上位で指名した選手の成長を抑制することにならないだろうか?

終わってみれば、マジックとブーチェビッチは、4年1億ドルでの再契約に合意した。チームの考えは何だろうか? ブーチェビッチはトレードの駒にもなり得るので、高かったとしても彼を保持し続けるほうが、何の見返りもなくチームを去られるよりはマシだというものだ。

荒削りなルーキーシーズンを送ったバンバは、成長するのにまだ時間がかかるため、それまでは自分の番が回ってくるのを待つ必要がある。

さらにマジックが再契約したのは、NBAでの最初の6シーズンをアスレティックなスウィングマンとして過ごしながら、なかなかそれらしい結果を出せなかったロスだ。昨シーズンは(ようやく)オフェンスのオプションとして起用でき、3ポイントショット成功率も良く(38.3%)、4年5400万ドルの延長契約を勝ち取った。マジックは27歳のロスが晩成型だと判断しているのだ。

加えて、同ポジションの層に厚みを出すためにマジックはアル・ファルーク・アミヌも獲得した。彼はコートを広げ、ディフェンスもしっかりとやってくれるが、ドリブルからのプレイがあまり得意ではないため、自らシュートチャンスを作ることはできない。3年2900万ドルという契約は妥当な額だろう。

ここ数年、マジックはドラフトロッタリーの常連となっていたが、プレイオフに進出したことでその命運は突如として大きく変わった。デメリットとして、あまり未来のスーパースターを獲得することができないドラフト1巡目半ばという指名順になったことがあげられる。そういった指名権では通常リスクを負うものであり、マジックは実際にチュマ・オキキを指名するという賭けに出た。

オーバーン大学出身のオキキは、NCAAトーナメントのスウィート16でヒザを負傷し、ファイナル4を欠場している。ケガをするまでは、198cmのオキキは特にリバウンドにおけるゴール周りでの嗅覚に長けながら、3ポイントショットも打てる才能を見せていた。多くのスカウトはケガさえなければ、ロッタリー指名、またはトップ10指名選手になっていただろうと予測している。

同じポジションにアイザックという若手がいることから、マジックはオキキを今シーズンは起用しないという選択肢も検討している。しっかりと治療に専念し、NBA Gリーグで経験を積むこともできる。

そして、昨シーズンのトレード期限日にフィラデルフィア・76ersから獲得した、元全体1位指名のマーケル・フルツという存在もある。昨シーズン患った胸郭出口症候群からまだ復帰しておらず、いまだにマジックでは試合に出場したことがない。それでも、マジックは彼の才能を信じ、2020-21シーズンの彼の契約オプションを行使することにした。もし彼が健康状態を取り戻し、ワシントン大学でスターになった頃の活躍ができるのであれば、マジックがイースタン・カンファレンスの競合になる手助けをすることができるはずだ。

ブーチェビッチとロスに大金を投じる決断をする以外、マジックは大きな動きを見せていない。イーストで勝ち上がるためのスーパースターはいまだに不在だが、2年連続でプレイオフ出場を果たす可能性を持った主力がいることはすでに証明されている。

原文:30 Teams in 30 Days: Solid finish, playoff push prompts Magic to run it back by NBA.com

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ