【NBA 2019-20シーズン開幕前戦力分析】ミネソタ・ティンバーウルブズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2019-20シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第10回目は、ミネソタ・ティンバーウルブズ編をお届けする。

2018-19シーズン成績:36勝46敗

新加入:ジャレット・カルバー(ドラフト)、ジェイク・レイマン(トレード)、ジョーダン・ベル(フリーエージェント)、シャバズ・ネイピアー(トレード)

退団:タイアス・ジョーンズ、デリック・ローズ、タージ・ギブソン、ダリオ・シャリッチ

前シーズンにプレイオフ出場を果たしていただけに、昨シーズンは若手の成長もあまり見られず、ウルブズにとって一歩後退する残念なものとなってしまった。育成が停滞してしまうのは危険信号であり、ウルブズも当然何かが問題であることに気づいた。そのなかでも最も懸念されているのが、スウィングマンのアンドリュー・ウィギンズの不振だ。

一時はチームの救世主のひとりとして考えられ、1年前にマックス契約を与えたばかりだったが、ウィギンズはシュート、ディフェンス、影響力、そして特にモチベーションという全ての面で後退した。若手がスター選手になるための見えない力を全く感じさせることなく、チームは24歳のウィギンズがサポート選手にしかなれない可能性を恐れ始めている。

ほとんどの試合で、ウルブズはカール・アンソニー・タウンズに頼り、彼はそれに応え続けた。平均得点(24.4)、平均リバウンド(12.4)、平均ブロック(1.6)でチームリーダーとなり、3ポイントショットも成功率40%を記録した。それでも、彼だけではチームを牽引することはできなかった。ウルブズはさらに、10月のユタ・ジャズ戦で50得点を記録するなど、デリック・ローズが見事な復活を遂げた。ローズはさらに30得点以上獲得した試合を3度記録し、ケガに悩まされていた日々が終わったという可能性を示唆した。ウルブズにとって、昨シーズン最初の10試合が終わった時点でトレードされたジミー・バトラーよりも、よっぽどチームにはまっていたのだ。

バトラーの見返りとして、ウルブズはフィラデルフィア・76ersからダリオ・シャリッチとロバート・コビントンを獲得した。どちらも良い補強となったが、チームの問題は解決せず、そのツケを払うこととなったのはトム・シボドーHC(ヘッドコーチ)だった。シボドーHCは40試合で解雇され、チーム史上最多勝利コーチである故フリップ・ソーンダーズの息子であるライアン・ソーンダーズが新たに就任。当初はこの動きにポジティブな反応を示したウルブズだったが、すぐ元の状態に戻ってしまい、プレイオフ争いに加わることは実質なかった。

シボドー前HCはチームの人事も担当していたため、ウルブズはシーズンが終了すると直ちにバスケットボール運営部門をリードしてくれる人材を探し求めた。チームは2003-04シーズン以来、プレイオフには1度しか出場できておらず、基盤の不安定さを露呈してしまっている。

 

オフの動き

ウルブズは例年の如く不透明な見通しで2019年の夏に突入した。オーナーのグレン・テイラーも、ウルブズファンも、暗黒の日々は終わったと思っていたところで、昨シーズンは再び低迷してしまった。ということは、それは変化が必要であることを意味している。

テイラーはバスケットボール運営部門の代表にガーソン・ローサスを任命した。この動きはリーグ内外で称賛された。ローサス代表はシボドーとは違って、フロントでの経験が豊富だ。ヒューストン・ロケッツで16シーズン務めており、キャロル・ドーソンとダリル・モーリーといった優れたGM(ゼネラルマネジャー)から指導されてきた。

彼の最初の決断は、ソーンダーズHCを留任させることだった。ソーンダーズHCはこれまでヘッドコーチの経験がなかっただけに、これは決して簡単な決断ではなかった。それでも、彼はロッカールームでしっかりとリスペクトを勝ち取り、血筋も良く、彼が残ることで何かしらの 安定性を保つことができた。ローサス代表とテイラーは、ソーンダーズHCは半シーズン以上コーチをするに値すると評価したのだ。

Jarrett Culver

続いて、ウルブズはシャリッチをフェニックス・サンズにトレードすることで、ドラフトの指名順位を5つ上げ、ジャレット・カルバーを指名した。テキサス工科大学出身のガードであるカルバーは、成熟したプレイスタイルと十分なシュートレンジを誇り、賢さ、タフさ、サイズといった面ではすでにNBAでプレイできる準備ができてるように見える。カルバーは昨シーズンの1巡目指名であるジョシュ・オコーギーとともに先発シューティングガードの座を競うことになる。

奇妙なことに、ウルブズはふたりのポイントガードを失っている。ローズがフリーエージェントとしてデトロイト・ピストンズと契約し、控えガードのタイアス・ジョーンズがメンフィス・グリズリーズとサインした2800万ドルのオファーシートにマッチすることを拒んだ。ジャーニーマンのシャバズ・ネイピアーをその代わりに獲得してはいるが、今後もウルブズにとってポイントガードの補強は必須だろう。

残りのふたつの補強は、チームのフロントラインに層の厚みを出すためのものだ。身体能力の高いスウィングマンであるジェイク・レイマンは昨シーズン、ポートランド・トレイルブレイザーズで多少活躍したものの、ローテーション落ちしてしまった。ジョーダン・ベルはここ2シーズン、ゴールデンステイト・ウォリアーズで妥当な役割を果たしていたものの、成長をあまり見せることができず出場時間が減っていった。両者ともにまだ若く、契約も安価なことから、彼らにセカンドチャンスを与えることに大きなリスクはない。

ローサス代表がやらなかったことは、ウィギンズをトレードすることだ。すでに彼に対して苛立ちを感じ始めているウルブズファンは、それを快く受け入れていただろう。これから4シーズン、平均3000万ドルという大型契約を持ってはいるものの、彼を欲しがるチームはいるだろう。しかし、ウルブズに対する見返りは少ないだろう。それを考慮すると、現段階ではウィギンズがチームに残る形となっているのもうなずける。

ローサス代表にとって、より大きな懸念はオールスターセンターであるタウンズがトレードを要求する可能性だ。最近では彼のようなエリート選手が、自チームに成長の見込みを感じないとトレードを要求することが一般化している。外から見ている限りでは、次にアンソニー・デイビスのような動きを取ろうとするのはタウンズである可能性が高い。

一方で、ウルブズは若手主体の基盤に、アセットを追加し続けることを望んでいる。そしてそれは、一時はもうしばらくは行かなくて良いと考えられていたドラフトロッタリーに、今後も何度も訪れることを意味しているのだ。

原文:30 Teams in 30 Days: Wolves look to continue building young base by NBA.com

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ