NBA史上最長のシーズンを制したレイカーズ

Mike Trudell, Lakers.com

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レイカーズの厳しく、長かった1年

最も精神的に厳しく、感傷的で、NBA史上最長期間続いた2019-20シーズンは、ロサンゼルス・レイカーズが球団史上17回目の優勝を果たして幕を閉じた。

NBAファイナルMVPを受賞したレブロン・ジェームズ、オールNBAファーストチームに選出されたアンソニー・デイビスが中心のタレント揃いで経験豊富なチームにとって、非常に長い冒険だった。新型コロナウイルスの感染拡大により3か月のシーズン中断を挟み、再開後はオーランド郊外の隔離された環境で試合が行なわれた。

2019年10月6日、レイカーズはプレシーズン遠征のため中国に向かった。

そして2020年10月11日(日本時間12日)、レイカーズはマイアミ・ヒートとのファイナル第6戦に106-93で勝利。ポートランド・トレイルブレイザーズ、ヒューストン・ロケッツ、デンバー・ナゲッツ、ヒートを破り、プレイオフを16勝5敗で終えてラリー・オブライエン・トロフィーを獲得した。

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前例のない道のり以外にも、レイカーズはコービー・ブライアントと彼の次女ジアンナさんの事故死とも向き合わなければいけなかった。コロナウイルスの感染拡大により、3月から6月までシーズンは中断された。その間、ジョージ・フロイド、ブリオナ・テイラーらが警察官の暴力により命を落とし、社会正義を訴えるBlack Lives Matterの活動が活発化。レイカーズも人種問題の専門家をスタッフに迎え入れた。

バスケットボールだけに集中するのが難しい状況だったものの、フランク・ボーゲル・ヘッドコーチのコーチングにより、彼らは日々の仕事に意識を向けることができた。

開幕2戦目から7連勝

中国でのプレシーズンツアーを終えた彼らは10月中旬にアメリカに戻り、昨年の10月22日(同23日)に行なわれたロサンゼルス・クリッパーズとの開幕戦に向けて準備を進めた。開幕戦は接戦の末に敗れたが、2戦目から7連勝を記録。その時期からレイカーズはウェスタン・カンファレンス首位から一度も陥落しなかった。

11月10日(同11日)にトロント・ラプターズに敗れてから10連勝をマークし17勝2敗、24勝3敗と勝ち星を増やしていった。12月3日(同4日)には敵地でデンバー・ナゲッツに105-96、その3日後には同じくロードでポートランド・トレイルブレイザーズに136-113に勝利した。

シーズン初の連敗は12月17〜25日(同18〜26日)に喫した4連敗だったが、その前の15試合中12試合は敵地での試合であり、ジェームズとデイビスにそれぞれ1試合ずつ欠場した。

Anthony Davis

連敗から抜け出してからは10試合で9勝をあげて戦績は33勝7敗にまで伸びていた。2月8日(同9日)から3月8日(同9日)までの12試合で11勝を記録した時期のハイライトは、イースタン・カンファレンス首位のミルウォーキー・バックスに113-103、ウェスト2位のクリッパーズに112-103で勝利した試合だろう。シーズンが中断される前の最後の一戦は、3月10日(同11日)に行なわれた敵地でのブルックリン・ネッツ戦だった。その試合には敗れたが、その時点で49勝14敗、ウェスト2位とは5.5ゲーム差をつけていた。

新型コロナウイルスの影響でシーズン中断

それからの数か月、選手たちは自宅でトレーニングを続けなければいけなかった。コロナウイルス感染拡大が落ち着いてからUCLAヘルストレーニングセンターでの個人練習が可能になり、自主隔離期間を経てフロリダで練習試合を行ない、8試合のシーディングゲームズ(順位決定戦)に臨んだ。

レギュラーシーズンで攻守に渡って活躍したエイブリー・ブラッドリーは、個人的な事情により再開後のシーズンに参加しなかった。

オーランドでのバブルでは、希望する選手に限り、社会正義を訴えるメッセージ入りのジャージー着用が認められた。レイカーズは、シーディングゲーム初戦でクリッパーズと対戦した。ウェスタン・カンファレンス決勝の前哨戦と言われたカードに103-101で勝利したチームは、カンファレンス首位を確定させた。これによりジェームズとデイビスら主力の出場時間を制限することが可能になり、残る7試合を2勝5敗で終えた。ただ、この時期にラジョン・ロンドが負傷離脱するアクシデントが発生し、同選手はカンファレンス準決勝まで欠場が続いた。

プレイオフ、ファイナル、優勝

プレイオフ・ファーストラウンドの相手は、シーディングゲームズを6勝2敗で終え、メンフィス・グリズリーズとのプレイイン・トーナメントを制したブレイザーズだった。シリーズ第1戦は、主力の試合勘が鈍っていたこともあってシュートとフリースローが入らなかったものの、堅いディフェンスで試合を作って終盤まで粘ったが、93-100で敗れた。

しかし、第2戦から修正し、4連勝で突破。シーディングゲームズで平均123得点を記録していたブレイザーズを平均106得点に封じた守備が大きかった。特に、レギュラーシーズンで平均30.0得点、フィールドゴール成功率43.7%を記録していたデイミアン・リラードを24.3得点、FG成功率39.3%に抑え、仕事をさせなかった。

ファーストラウンドと同様のことが、ロケッツとのカンファレンス準決勝でも起こった。レイカーズは再び第1戦を落としたものの、第2戦からの4連勝で勝ち上がりを決めた。そしてレギュラーシーズンで平均34.3得点だったジェームズ・ハーデを29.4得点、27.2得点だったラッセル・ウェストブルックを19.8得点に抑えた。

カンファレンス決勝では、ナゲッツとぶつかった。第3戦で黒星を喫したが、またも4勝1敗で突破した。ブレイザーズのリラード&CJ・マッカラム、ロケッツのハーデン&ウェストブルックと同様に、ナゲッツにもニコラ・ヨキッチ&ジャマール・マレーという強力なデュオがいるが、レイカーズが誇る攻守に優れる2人のスターがもたらすインパクトを上回ることはなかった。

ロールプレイヤーの活躍も違いをもたらし、117-107で勝利した第5戦(ジェームズは38得点、16リバウンド、10アシストのトリプルダブル)でシリーズ突破を決め、ファイナルに勝ち進んだ。

LeBron James

イーストを勝ち上がったのは、レイカーズと同じくプレイオフ開幕後12勝3敗を記録していたヒートだった。シリーズはレイカーズが第1、2戦を制して主導権を握った、第3戦はヒートが勝ち、レイカーズが第4戦を制して優勝まで王手をかけた。優勝まであと1勝に迫ったレイカーズは、第5戦にブラックマンバ・ジャージーを着用して臨んだが敗れ、第6戦までもつれた。

ボーゲルHCは、第6戦の先発にアレックス・カルーソを抜擢。カルーソの先発出場はポストシーズンになって初だったが、レイカーズは狙い通りに守備でヒートを圧倒し、前半を64-36で終えてほぼ勝利を決定づけた。

昨季のチームが始動した初日から丸1年以上の月日が流れていた。優勝できたのは、チーム全員の力があってこそだった。

勝利をもたらしたレイカーズのディフェンス

バスケットボール運営部門のバイスプレジデントとGMを兼任するロブ・ペリンカは、昨年7月にニューオーリンズ・ペリカンズからデイビスをトレードで獲得すると、ジェームズと同選手を軸にロスターを編成。経験豊富で攻守に優れるベテランを多く揃え、2人のオールスターを支えた。

昨年の5月にHCに就任したボーゲルは、選手、スタッフの信頼を勝ち取り、ディフェンス第一のチームを作り上げた。

ジェームズとデイビスは、シーズンMVP、年間最優秀守備選手賞の最終候補にそれぞれ選出されたが、どちらの個人賞もバックスのヤニス・アデトクンボが受賞。この結果は、多少なりとも優勝を目指す2人にとってモチベーションになったのだろう。それは、プレイオフで2人が記録したスタッツを見れば明らかだ。

ジェームズ:27.6得点、FG成功率56.0%、3ポイントショット成功率37.0%、10.8リバウンド、8.8アシスト、1.2スティール、0.9ブロック

デイビス:27.7得点、FG成功率57.1%、3ポイントショット成功率38.3%、9.7リバウンド、3.5アシスト、1.2スティール、1.4ブロック

2019-20シーズン NBAアウォード受賞者一覧

レイカーズにとってジェームズ、デイビスに続く“第3の選手”は、チームディフェンスだった。合計84本の3Pを成功させたケンテイビアス・コールドウェル・ポープとダニー・グリーンの守備も違いを生み出した。カルーソとロンドはセカンドユニットながら、チームがスモールラインナップを組んだ際に試合を締めくくる存在として活躍。カルーソは守備でインパクトを残し、ロンドはレギュラーシーズンよりもプレイオフでのパフォーマンスの方が印象に残った。

Alex Caruso

カイル・クーズマは守備に集中し、カットからリムを狙った動き、スポットアップ3Pで貢献した。マーキーフ・モリスはロケッツとのシリーズを制した一戦で先発センターに起用され、期待に応えた。ほかにもジャベール・マギー、ドワイト・ハワードがペイント内を守った。特にハワードは、ナゲッツとのシリーズでヨキッチ対策として機能し、スモールボールの時間帯はベンチからチームに声援を送った。

無観客という環境では、チームメイトの声援も大きかった。ムードメイカーのジャレッド・ダドリー、クイン・クック、ディオン・ウェイターズ、JR・スミスにマギーとハワードも加わってチームをサポートした。

このようにして、レイカーズは2010年以来の優勝を果たした。今回の優勝は、2013年に前オーナーのドクター・ジェリー・バスが亡くなってから初の栄冠でもある。現在CEOとオーナーを兼任するジニー・バスは、父親と同じように対戦相手に敬意を払い、NBA史上最長となったシーズンを通してチームのために力を尽くした所属選手、コーチ、フロントオフィスを称え、アダム・シルバーNBAコミッショナーからトロフィーを受け取った。

原文:The Longest Season by Mike Trudell/Lakers.com(抄訳)


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