子供の頃、ディアロは年上の人と対戦する機会を得るためにクイーンズ中のバスケットコートを練り歩いていた。ディアロは19歳となった今でも体重を増やす必要があるほどだが、当時はとりわけ細身な少年だった。しかし、コート上では立場を守るため、常に上達が求められた。ストリートで鍛えられたのは彼が初めてではない。元NBA選手のケニー・アンダーソンとケニー・スミスも、ディアロと同じくレフラックの複合住宅で育った。
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「成長するのにも、公園でバスケをするのにも、たくましくなる必要がある」。ディアロはそう語った。「見た目が若すぎると言うだけでコートに入れてもらえないこともあるんだ。実力が不十分だとか、試合についていける体つきじゃないとか言われて、相手にもしてもらえない」。
「幼い頃、僕たちは大きなコートでも戦えることを証明しなきゃいけなかったんだ。自分自身の力でなんとかできるってね。プレーは荒いし反則もされるけど、ほとんどファウルは取られない。ガチンコのバスケだったよ」
ニューヨーク、フラッシングにあるジョン・ボウン高校でそのキャリアをスタートさせたディアロだったが、2年生のシーズンを終えたあと、当時のコーチの一人にコネチカット州パットナムの私立学校への転校を勧められた。そこは、ディアロが住んでいた複合住宅の居住者より4000人以上も住民が少ない町であった。そこでは、ニューヨークのように周囲に気を散らすこともなく、試合と成績だけに注力することができた。
それが功を奏した。ディアロには全米の大学から入学のオファーが集まり、同世代では上位10人に食い込むほどの成長を遂げたのだ。奨学金のオファーも多数集まり、ディアロは昨年1月、ケンタッキー大学への進学を決めた。
しかし、彼は厳しい生い立ちのほとんどを引きずったままだ。彼は物事を即座に考え、まるで自分の人生を売り込むかのように目を合わせて会話する。ティーンエイジャーにしては実に成熟している。
ペインコーチは、ディアロについて以下のように語っている。「ハミに初めて会ったとき、私は彼が少し用心深いタイプだと分かったよ。ニューヨークで育った彼は、あらゆるものを見てきた。だから彼は若くして成熟しているんだ。彼は簡単には人を信用しない」。
彼の両親ときょうだいたちは、いまだに彼のバスケットボール界での有望な将来を受け入れ切れていないという。クイーンズに住む彼の親戚たちはなおのこと、ますます有名になっていく彼についてよく理解できていないという。
「彼らにとってはちょっとしたカルチャーショックみたいだ」ディアロはそう語った。「僕の家族にはこれまでNBAでプレーした経験がある人がいなかったんだ。まあ、ほとんどの人がそうだと思うけど。でも、プロのレベルで活躍するスポーツ選手すらいなかったから、皆がたくさん支援してくれているよ。僕の動向を見るのが家族の一大イベントになっているんだ。自宅にいる僕の家族もだし、ニューヨーク中の親戚もだ。皆が僕の成功を望んでいる」。
彼の情報は、ギニア国内の携帯電話やインターネット・カフェにまで届いている。これまでの19年間、“ディアロ”という名前で検索をかけると別のギニア系移民の名前が一番に表示されていた。その人物の名は、アマドゥ・ディアロ。1999年、彼はニューヨークで起きた誤認事件によって非番の警察官に41発の銃弾を撃たれ、死亡した。ハミドゥとアマドゥ・ディアロに関わり合いはないが、ハミドゥいわく、ギニアに住む彼の親族の中には、アマドゥ・ディアロの家族を知っている人物がいるという。しかし、今ではハミドゥ・ディアロの方が知名度が上がり、より明るい検索結果となった。
これは、2017年のコンバインでの垂直飛びのおかげでもある。しかし、今年の垂直飛びは102センチメートルと、あまり印象的ではなかった。これについてディアロは、「不思議で仕方ないよ。もっと高く飛んた気がするんだけど。ジャンプする前の姿勢の計測が間違ってたんじゃないかな。ジャンプした感触は良かったよ。でも、終わってしまったものは仕方がない。僕がどんなジャンプができる選手なのかは、もう皆知っているだろうしね」。
依然として、ギニアからは熱視線が送られているようだ。
「何が起こっているのかは、アフリカの彼らも知っているよ。彼らにはインターネット環境があるからね。“ディアロ”の名前を打ち込めば僕を見ることができる。彼らも僕を支えてくれているんだ。YouTubeで僕の動画を見てくれるし、僕の母に電話をかけてきて、僕のことを見ていると伝えてくれるんだ。すばらしいことだ。僕はそれを聞くのが大好きなんだよ」
画像:“僕にとって最も大事なのは、家族を養って母と父に恩返しをすることなんだ。僕は大好きなバスケットボールをすることで家族を助けることができる。それは僕が最も感謝していることだよ” ――ハミドゥ・ディアロ
ドラフトがどんな結果に終わったとしても、彼がそれを実現させるため前に進んでいることに変わりはない。
「彼の家族、つまりアフリカのルーツが彼にとって何を意味するのかについて、バスケットボールのことと同じくらい、我々はよく話すんだ」とペインは語った。「それが彼の原動力だ。ハミドゥ・ディアロ自身のためだけではない。彼が助けられる皆のためなんだ」。
(最終回へ続く)
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