マイク・マスカーラ（ワシントン・ウィザーズ）はフィラデルフィア・76ersで47試合に出場しているが、彼がフィラデルフィアで伝説になったのは、オクラホマシティ・サンダーのメンバーとしてプレイした2020年8月12日（日本時間13日）の試合だった。
その理由は、その試合でマスカーラが決めたクラッチショットが、76ersがタイリース・マクシーをドラフト指名したことと直結しているからだ。
今回はマスカーラがフィラデルフィアの英雄になった理由について説明しよう。
76ersファンがマクシーのことをマスカーラに感謝する理由
マスカーラが所属していたサンダーは2020年8月12日（同13日）、NBAバブル期のレギュラーシーズンの最後から2番目の試合でマイアミ・ヒートと対戦した。両チームにとってほとんど意味のない試合だったが、実は次のドラフトで大きな意味を持つ試合だった。
サンダーは76ersに2020年のドラフト指名権を渡すことになっていたが、それにはプロテクトがついていた。1〜20位ならサンダーが指名権を保持できる。21〜30位なら指名権は76ersに渡るという条件だった。
このプロテクションはギリギリまでどうなるかわからなかった。サンダーとヒートはレギュラーシーズンの2試合を残すのみで、順位は拮抗していた。もしサンダーがヒートに勝てば、その指名権は76ersに渡る。もしサンダーが負ければ、サンダーがその指名権をキープすることになるという状況だった。
残り34秒で3点をリードしたヒートは、そのまま勝利して76ersの指名権獲得を阻止するかに見えた。しかし、マスカーラにコーナースリーを決められ、サンダーに同点に追いつかれる。直後にヒートは得点し、2点のリードを奪い返した。ところが、マスカーラが残り5秒に再び3Pを決め、サンダーが1点差で勝利した。
For those not familiar or don’t remember, Mike Muscala hit these two dagger 3’s in a meaningless bubble game for the Thunder, securing the pick to us in Philly… Which turned into Tyrese Kendrid Maxeypic.twitter.com/UJzVFkHvOI https://t.co/ZbIUkt0t7b
— Josh Reynolds (@JoshReynolds24) November 13, 2023
このサンダーの勝利で、ヒートの指名権は20位となり、サンダーは21位指名権を76ersに送る結果となった。76ersはその指名権を使ってマクシーを指名している。
複数の手に渡ったマクシーの指名権
マクシーの指名を見送った20チームのことはさておき、その21位指名権でマクシーを指名する機会があったであろうチームは山ほどあった。そのドラフトまでの数年間にその指名権は何度も動いていて、76ersは、チーム史上最悪のトレードの1つとなるところから、辛うじて挽回することに成功した。
サンダーはもともと、2016年にジェラミ・グラントと引き換えに2020年の1巡目指名権を76ersにトレードしている。その後、76ersはその指名権を2017年のドラフト25位指名権と引き換えにオーランド・マジックにトレードした。76ersはその指名権でラトビア人選手のアンジェス・パセチニクスを指名しているが、彼がNBAに来ることはなかった。
76ersにとって幸運だったのは、2019年にマーケル・フルツをマジックに送るトレードの一部として、そのサンダーの指名権を取り戻したことだ。マクシーはマジックでスターになる寸前だったが、代わりに76ersでプレイすることになったというわけだ。
指名の経緯を知るマクシーはマスカーラに感謝
マスカーラのあのショットは76ersの伝説になった。マクシーはそのことを頻繁に思い出させられるという。初の50点ゲームの後、マクシーは「その話はよく聞くよ」と記者団に話している。
「ボブ（チームのセキュリティー）が月に最低2回は思い出させてくれるんだ。見たことがあるけど素晴らしいことだよ。最高だ。ちょっと皮肉だよね。マイクに感謝するよ。僕はここが好きなんだ」
最終的にすべてがうまくいき、マクシーはフィラデルフィアでファンの一番のお気に入りの選手へと成長を遂げた。
原文：76ers fans have Mike Muscala to thank for Tyrese Maxey: How Thunder, Magic missed on drafting rising star
翻訳：YOKO B
