【NBAトレード評価】ニックスとネッツによるミケル・ブリッジズのトレードをどう見るか

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

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どうやら、ドンテ・ディビンチェンゾ、ジョシュ・ハート、ジェイレン・ブランソンでは足りなかったようだ。ニューヨーク・ニックスはビラノバ大学出身の選手をさらに増やすと決めた。6月25日(日本時間26日)、同大で彼らのチームメイトだったミケル・ブリッジズを獲得すると報じられている。

まったく驚きのトレードではない。6週間前にほぼ似たような取引の案もあった。ブリッジズはブルックリン・ネッツよりもニックスでプレイするほうが理にかなっている。

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だが、実現のためにニックスが払った代償は大きい。その価値はあるのだろうか?

ミケル・ブリッジズのトレード内容

ニックス獲得:

  • ミケル・ブリッジズ
  • 2026年ドラフト2巡目指名権

ネッツ獲得:

  • ボーヤン・ボグダノビッチ
  • 2025年、27年、29年、31年の保護条件なしドラフト1巡目指名権
  • ミルウォーキー・バックスのトップ4保護条件つきドラフト1巡目指名権
  • 2025年のドラフト2巡目指名権
  • 2028年の保護条件なしのドラフト指名権交換権

ニックスの評価

5つのドラフト1巡目指名権と保護条件なしの指名権交換権は大きな代償だ。まったく同一条件での比較ではないが、つい先日のアレックス・カルーソのトレードで引き換えとなったのはジョシュ・ギディーで、指名権はついていなかった。

しかし、ニックスには26日(同27日)のドラフト後に動かせる1巡目指名権が8つまであった。5つの1巡目指名権を手放しても、まだ今後タレントを加えるための一定の柔軟性を残している。

ブリッジズはそれだけの価値に見合う選手だ。フェニックス・サンズでのキャリア初期と比べ、ネッツではより自分でつくることができるようになり、平均21.2得点を記録した。

ただ、得点は素晴らしかったが、ブリッジズはその役割から負担が過剰になっていた。まだ優勝を競うチームの明確な2番手、3番手となれる選手だ。そしてニックスならその可能性がある。チーム有数のアドバンテージをつくり出せる選手として、シーズン中にブランソンにかかっていた大きな重圧を和らげるのに役立つ。

サンズ時代にも見せたように、ブリッジズはボールのないところからのプレイが優れている。キャリア通算の3ポイントショット成功率は37.5%と、フロアを広げることができるだろう。それはプレイオフで相手チームがブランソンのドライブを止めるのをさらに難しくさせるはずだ。

また、ブリッジズは卓越したディフェンダーでもあり、2021-2022シーズンの年間最優秀守備選手賞の投票では2位だった。以降はそういった極めて高いレベルに戻っていないが、攻撃面での負担が軽減され、トム・シボドー・ヘッドコーチによる絶え間ない檄もあれば、当時の調子を取り戻せるはずだ。

ブリッジズが加わることで、ニックスはフリーエージェントのOG・アヌノビーがどうなるかという疑問が生じる。彼らのスキルセットは似ているからだ。ただ、アヌノビーは今季、ニックスにとってそういったタイプの選手がいかに貴重なのかを示した。アヌノビーがいた時のニックスは26勝6敗だ。

ブリッジズはアヌノビーが再び負傷した場合の保険になる。そして彼らは、非常にたやすく一緒にフロアでプレイすることもできるだろう。ニックスの成功において大きかったのは、守備の切り替えだ。アヌノビーとブリッジズのふたりともがいれば、その強みがさらに強化される。

大きなコストであることは間違いない。だが、ブリッジズはそれに値する選手だ。ニックスはイースタン・カンファレンスでボストン・セルティックスに挑むチームとして、バックスやフィラデルフィア・76ers以上と考えるべきだろう。

評価:B

ネッツの評価

これまでネッツはブリッジズのトレードに積極的ではなかった。断れないようなオファーを受けるまでそれが続いたかたちだ。

ブリッジズはネッツ最高の選手だが、彼がチームのナンバーワンの場合、上限は極めて制限されることがここ2シーズンで示された。彼を手放し、引き換えに指名権を得ることで、ネッツはいずれ本当に優勝を競えるようなチームをつくるチャンスを手に入れたのだ。

しかし、このトレードは優勝を目指し、達成できなければ終わりという類のものではない。ネッツはシーズンでわずか32勝と厳しい状態だった。そして向上に向けての道も多くなかったのだ。2024年のドラフト指名権はなく、ジェームズ・ハーデンのトレードで2027年までの指名権はヒューストン・ロケッツにコントロールされている。

5つのドラフト1巡目指名権を得ることで、ネッツは毎年のドラフトで次代のスーパースターを狙うにしても、それらの指名権を今後のトレードに使うにしても、柔軟性を大きく増したことになる。

今回の取引にボグダノビッチが含まれたのは、主にサラリーをつり合わせる目的からだ。契約満了を迎える選手のため、長期的な計画には含まれていなかったかもしれない。ただ、ボグダノビッチはデトロイト・ピストンズでのここ2シーズンで平均21.1得点と素晴らしい成績を残した選手だ。

ニックスではリズムに残ることができず、放出要員となったが、ボグダノビッチがピストンズ時代の調子に戻るなら、ネッツはシーズン途中に彼をトレードし、さらにドラフト指名権を増やすことができるかもしれない。一方でボグダノビッチは素晴らしい思い出を持つチームに戻ることになる。

ハーデン、カイリー・アービング、ケビン・デュラントのトリオが崩壊するまでのネッツは、ドラフトや賢明な補強で楽しく、有機的なチームをつくっていた。ショーン・マークスGMは、そういったグループを最初からつくりあげることができると示していたのだ。今、ニックスからのオファーのおかげで、彼は再びそのチャンスを手にした。これは両チームにとってウィンウィンとなる取引だ。

評価:A

原文:Mikal Bridges trade grades: Nets get a massive haul, 'Nova Knicks' get the ammo to challenge the Celtics(抄訳)
翻訳:坂東実藍

Stephen Noh

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

坂東実藍 Miran Bando

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。