いるべき場所にいると信じるマイアミ・ヒート

Michael C. Wright, NBA.com

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2020年の大統領選挙が近づくなか、マイアミ・ヒートのエリック・スポールストラ・ヘッドコーチは、チームの意識をロサンゼルス・レイカーズとのNBAファイナル第5戦に向けるべく、セオドア・ルーズベルト元大統領の1910年のスピーチの言葉を引用した。

スポールストラHCは何度も、ヒートは「誇りと血、汗、涙にまみれ」てきたとし、「そこに立つのは我々の選手たち」と話してきた。

アメリカ合衆国第26代大統領セオドア・ルーズベルトは、有名な演説のひとつ「共和国における市民権」で、以下のように述べている。

大切なのは、批判ではない。強き者がいかに躓いたか、偉業を成し遂げる者であればよりうまくやれたかを指摘する者ではない。功績は実際にアリーナにいる者に属すのだ。その顔は埃と汗、血にまみれている。勇敢に闘い、誤り、何度も手が届かない思いをしてきた――そういう者だ。なぜなら、失敗や欠点のない努力など存在しないからである。それでも、偉業のために実際に骨を折る者、大いなる熱意や偉大なる献身を知る者、価値ある目的に身を投じる者だ。うまくいけば大きな偉業を勝ち取ることができ、悪くても、失敗しても、少なくとも勇敢な失敗であり、その立場は決して、勝利も敗北も知らない臆病で冷たい魂を持つ者と同じにはならない。

彼らはレブロン・ジェームズ率いるレイカーズと対戦する。ジェームズのチームはシリーズ勝利を決める直近の18試合で17勝。そこにはNBAファイナルでの3連勝も含まれる。

レイカーズ加入までに優勝3回、MVP受賞4回を経験しているジェームズは「レイカーズの一員になって学んだことは、忠実なレイカーズファンは、選手が過去に何を成し遂げていようが気にしないということだ」と話している。

「彼らはレイカーズに加入するまでの経歴を一切気にしない。レイカーズの一員として結果を出して初めて、彼らはリスペクトしてくれる」。

興味深いことに、ジェームズは2016年に歴史を作っている。クリーブランド・キャバリアーズでゴールデンステイト・ウォリアーズを下し、彼らはファイナルで初めて1勝3敗から逆転優勝したチームとなったのだ。ポストシーズンでヒートが1勝3敗からシリーズを制したのは、1997年のニューヨーク・ニックスとのイースタン・カンファレンス・セミファイナルしかない。

それでも、ヒートは任務の大きさにひるんでいない。

ジミー・バトラーは「プレッシャーではないと思う」と話した。

「ただのひとつの勝利だと思う。ここで家に帰ることを考える者はいないだろう。ただの1勝だ。だから、プレッシャーはない。僕たちは勝利を目指す。それが僕らの仕事だ。勝つか家に帰るか、じゃない。勝つか、勝つかだ。僕らはそう考えている」。

しかし、ここに至るまでの状況を考えざるを得ない。

ヒートは第1戦でオールスター選手のバム・アデバヨ(首)、ベテランガードのゴラン・ドラギッチ(左足底筋膜断裂)と、ふたりの主力を失った。両選手とも続く2試合を欠場。アデバヨはヒートが96-102で敗れた10月6日(日本時間7日)の第4戦で復帰したが、ドラギッチはこの第4戦も欠場している。そしてスポールストラHCによると、ドラギッチのステータスは変わらない。

第5戦に向けても、ドラギッチの出場可能性は「doubtful」(疑わしい)のままだ。攻守両面でのバトラーの負担が続く。バトラーは第2戦と第3戦で45分間プレイしており、ここ3試合すべてプレイタイムは43分間超だ。

また、ドラギッチがファイナルに至るまでヒートのリーディングスコアラーだったことも忘れてはいけない。

それでも、ヒートの自信を問われると、バトラーは笑顔を見せた。スポールストラHCは、ヒートがシンプルに任務に集中することが重要だと指摘している。

スポールストラHCは「我々は、本当に競争的なシリーズだと考えている」と話した。

「なぜ我々はここにいるのか。我々にはその目的がある。我々はタイトル獲得を競っているんだ。そしてそれは、先に4勝したチームのものとなる。様々な話があるが、我々はほかの人たちが考えることなど気にしない。これは我々が今季望んできたすべてなんだ。それは、タイトルを競って戦うチャンスだよ。それはこれまでの試合を通じてまったく変わっていない」。

レイカーズも同様な心構えのようだ。そして彼らは第5戦でコービー・ブライアントに捧げる「ブラック・マンバ」のジャージーを纏う予定だ。もともとは第7戦で使用する予定だったが、勝負を決めるチャンスとなる第5戦で着ることにした。

今季、そのジャージーを纏った時のレイカーズが4勝0敗であることは記しておくべきだろう。

レイカーズのアンソニー・デイビスは、ファイナル最初の4試合で平均25.8得点、フィールドゴール成功率60.6%超を記録した。25得点&FG成功率60%超マークは、カリーム・アブドゥル・ジャバーに続く。そのデイビスは「僕らがやるべきことをやれば、負けずにいられるはずだ」と話した。

「特に僕らのチームと球団に今季起きたことのすべてを考えれば、ブラック・マンバのユニフォームで締めくくるのには、それだけの価値があると思う。もちろん、NBAにおける彼のレガシー(遺産)、球団やその期間の彼のレガシーは特別だ。僕らは、彼の名誉をたたえて締めくくるのを楽しみにしている。もちろん、とんでもないプレッシャーだ。でも、僕らは負けたくない。彼を落胆させたくない」。

一方、スポールストラHCは、第5戦に向けてモチベーションを高めるような戦術に関して詳細を語ることを拒んだ。彼は、それらが不要だと強調している。

その代わりに、スポールストラHCは8日(同9日)の練習後、再びルーズベルト大統領による演説の一部を引用している。

「ウチの選手たちを落ち着かせようとする必要はない。気質を試す必要などない」と述べた。

「我々に競争的な熱は必要ない。我々は全員、自分たちがどこにいるか知っている。我々はひとつの目的のためにここにいる。我々はタイトルを競っている。それは変わっていない。そしてウチの選手たちは、汗、涙、血にまみれてアリーナにいる者たちだ。まさにそれがあるべき場所だ」。

原文:Men in the Arena: Heat believe this is 'where they're meant to be' by Michael C. Wright/NBA.com(抄訳)​


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