プレイ分析:NBA最高の守備も出し抜くルカ・ドンチッチのピック&ロール

Scott Rafferty

坂東実藍 Miran Bando

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今季、ダラス・マーベリックスのルカ・ドンチッチはミネソタ・ティンバーウルブズと2回対戦した。そして、2回とも非常にうまく戦った。

NBA最高の守備を誇るウルブズとの2試合で、ドンチッチは平均36.5得点、10.5アシスト、6.0リバウンド、フィールドゴール成功率50.9%を記録している。最初の対戦ではウルブズに敗れたが、2試合目は34得点、8リバウンド、6アシストを記録し、マーベリックスを勝利に導いた。

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ドンチッチは試合のたびに30得点を含むトリプルダブルに迫るようなところまで来ている。彼がどれだけの高みに達することができるかを物語っているだろう。

ここでは、平均的な出来でも最高の守備を苦しめるドンチッチのプレイのひとつを見ていこう。

NBA最高の守備も出し抜くルカ・ドンチッチのピック&ロール

🎥 プレイ

✏️ 分析

ドワイト・パウエルがハンドオフを狙い、右ウィングでドンチッチに向かってドリブルする。
 

ドンチッチはすぐにパウエルのほうに向かわない。コーナーのデリック・ジョーンズJr.にスクリーンをかけ、3ポイントショットラインに戻る。そしてパウエルからボールを受け取ると、ショットを打つと見せかけた。これでクローズアウトをしようとアンソニー・エドワーズを急がせる。

Luka Doncic vs. Timberwolves No. 1
(NBA)

パウエルのスクリーンに引きつけることで、ドンチッチはエドワーズにスペースを与えず、そこを活用する。

Luka Doncic vs. Timberwolves No. 2
(NBA)

エドワーズがパウエルのスクリーンにかかったことで、ドンチッチを阻もうとルディ・ゴベアが3Pラインにおびき出された。

ドンチッチはドリブルを続け、サイドラインに近づくことで、意図的にゴベアを引きつける。

Luka Doncic vs. Timberwolves No. 3
(NBA)

これでウルブズは少し厄介な状況となった。

ウルブズとしては、ゴベアがスイッチしてドンチッチにつくことを望まない。そこでエドワーズが挽回しようとする。しかしそれは、ドンチッチに近いディフェンダーが2人になるということだ。さらに、左ウィングではジェイデン・マクダニエルズがカイリー・アービングへのパスを出させたくない。こうして、ウルブズは2on3という状況をつくられる。

ここでドンチッチの選択肢は3つだった。どれを選ぶかは、残るウルブズの2人、カイル・アンダーソンとカール・アンソニー・タウンズの出方次第だ。

  • 選択肢1:アンダーソンがパウエルにつこうとペイント内にとどまるなら、左コーナーのティム・ハーダウェイJr.にパス
  • 選択肢2:タウンズがパウエルにつこうとペイント内にとどまるなら、右コーナーのジョーンズJr.にパス
  • 選択肢3:アンダーソンとタウンズの反応が遅いか、コーナーへのパスを読んで動けば、ロールしたパウエルにパス

ドンチッチは巧みな手品師だ。選択肢2、つまりジョーンズJr.へのパスを狙うかと見られた。

Luka Doncic vs. Timberwolves No. 4
(NBA)

だが、アンダーソンがハーダウェイJr.につき、タウンズがとどまったことで、ドンチッチは選択肢3、つまりパウエルへのパスを選んだ。

6フィート8インチ(約203センチ)のドンチッチは、フロアの状況を見て、大半の人なら狙おうともしないようなパスを出したのである。

Luka Doncic vs. Timberwolves No. 5
(NBA)

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🤔 重要性

ドンチッチはピック&ロールでカバーするのが現在のNBAで最も難しい選手かもしれない。

ピック&ロールのボールハンドラーとしての1試合あたりの得点で、ドンチッチはアトランタ・ホークスのトレイ・ヤングに次ぐ2位。そしてドンチッチはポゼッションあたり1.06得点と、ヤングやリーグのほとんどの選手よりも効率的だ。

ドンチッチはステフィン・カリーやデイミアン・リラードのような素早さで3Pを打つことがない。だが、そのほかのすべてのことをリーグ最高レベルでこなす。

フローターレンジでドンチッチ以上の割合でショットを決めているのは、センターながら最高のフローターかもしれない二コラ・ヨキッチしかいない。そしてドンチッチはバスケット付近でのフィニッシュが成功率77.3%と見事な数字だ。リムに向けて突破したり、アリウープの脅威を与えたりする選手、ヤニス・アデトクンボのような選手に期待するような数字だろう。ダンクの回数がシーズンに1回だけという選手に期待するものではない。

ドンチッチは自分のペースでプレイし、体をうまく使ってディフェンダーを防ぎ、ユーロステップのようにディフェンダーをかわすだけのフットワークもある。そしてタッチも素晴らしい。フィニッシュに関して言えば、彼の限界は、相手がいる状況でダンクすることができないことだけかもしれない。

ドンチッチがどんな守備にも対応できるからこそ、ゴベアはこれほど引き出されることになった。スイッチしなかったのは、おそらくドンチッチにあっさりとやられるからだろう。

ゴベアの守備に対する批判ではない。ドンチッチは1on1でNBA最高かもしれない選手だ。

アイソレーションからの得点でドンチッチはリーグトップの効率だ。そのサイズはガードにとって守るのが大変で、一方でビッグマンにとっては対峙するにはあまりにトリッキーな選手である。今季のほとんどがそうであるように、ステップバックジャンパーが決まっている時なら、本当にドンチッチは対応しようがない。

ドンチッチのアイソレーションの大半はピック&ロールで始まる。それこそ、ゴベアとウルブズが避けようとしたことだ。

では、どうすればいいのか。従来のピック&ロールでは、ペイント内に進入されてレイアップフローターターンアラウンドジャンパーを決められるだろう。スイッチすれば、誰がマークしようが、ペリメーターからだろうがローブロックだろうが、ドンチッチにプレイをつくられる。ポストからのスコアラーとしても厄介な相手だからだ。そしてウルブズのように、ボールを持ったドンチッチに2人をつければ、守備の隙ができるまで引っ張られるだろう。

対戦相手はドンチッチに対するダブルマークのつけ方やタイミングを変えることで、彼の気を緩めようとしてきた。しかし通常、ドンチッチはそれも感じ取ってしまう。

以前からドンチッチはこういったことをしているが、そのスキルは毎年少しずつシャープになっている。マーベリックスも良い仕事をし、補完するようなロールプレイヤーを周囲に固めた。ほぼ常にドンチッチがパスを出せるように3人のシューターがおり、さらにロブも可能とするリムに向かう選手がいる。

平均的な出来の日でも、ドンチッチは常に答えを持っているかのようだ。

原文:This Luka Doncic pick-and-roll shows how the Mavericks star outsmarts even the NBA's best defenses(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Scott Rafferty

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Scott Rafferty is an experienced NBA journalist who first started writing for The Sporting News in 2017. There are few things he appreciates more than a Nikola Jokic no-look pass, Klay Thompson heat check or Giannis Antetokounmpo eurostep. He's a member of the NBA Global team.

坂東実藍 Miran Bando

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。