マーベリックスのギャフォードがNBA記録更新に迫る 好調の背景にドンチッチとのケミストリー

Scott Rafferty

坂東実藍 Miran Bando

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ダラス・マーベリックスのダニエル・ギャフォードは、NBAの歴史をつくりかけている。ここ4試合でフィールドゴール28本中28本成功と完璧なショット成功率で65得点をあげているのだ。かつて35本連続成功を達成したウィルト・チェンバレンの記録更新まで、あと1、2試合に迫っている。

実現できるかどうかは別にして、シーズン途中にマーベリックスにトレードされてから良いプレイをしているギャフォードの好調は見事なものだ。そしてそれは、しばしばギャフォードの得点機会をお膳立てしているルカ・ドンチッチの素晴らしさの証でもある。

シカゴ・ブルズに勝利した今週の試合では、ギャフォードとドンチッチのケミストリーを表すプレイがあった。ここで見ていこう。

ルカ・ドンチッチとダニエル・ギャフォードのケミストリーを表すプレイ

🎥 プレイ

✏️ 分析

コートに立っていたマーベリックスの選手は、ドンチッチとギャフォード、カイリー・アービング、PJ・ワシントン、そしてデリック・ジョーンズJr.だ。

ワシントンとジョーンズJr.が両サイドのコーナーに位置し、アービングは左ウィングに移動して、ドンチッチとギャフォードが3ポイントラインのトップでピック&ロールをできるようにスペースを空ける。

ギャフォードがドンチッチを追いかけまわすアレックス・カルーソにスクリーンをかけると、カルーソとニコラ・ブーチェビッチはドンチッチをマークする。ドンチッチにギャフォードのスクリーンを使わせないようにするプランだったようだ。

Luka Doncic and Daniel Gafford No. 1
(NBA)

しかし、ドンチッチがブーチェビッチの注意を完全に引きつけ、ギャフォードは賢くバスケットへと向かう。

左コーナーでジョーンズJr.を守っていたジュリアン・フィリップス、右コーナーでワシントンを守っていたデマー・デローザンは、ギャフォードがダンクにいくのを阻もうと絞る。

Luka Doncic and Daniel Gafford No. 2
(NBA)

ここでドンチッチが魔法を見せた。パスの選択肢は3つだ。

  1. 左コーナーでオープンなジョーンズJr.にパス。今季のジョーンズJr.はこの位置からの3ポイントショットが成功率34.3%だ。
  2. 右コーナーでオープンなワシントンにパス。今季のワシントンはこの位置からの3P成功率が25.8%だが、通算では35.6%をマークしている。
  3. ペイント内のギャフォードにパス。今季のギャフォードはFG試投の77.0%が制限区域内からのショットだ。しかしこの時は、両サイドにディフェンダーがいる。

統計的にブルズにとって最善の結果は、ショットクロックが終わりかけた時に、ジョーンズJr.かワシントンのどちらかにコンテストした状態で3Pを打たせることだろう。しかし、ドンチッチはフィリップスをあざむき、ジョーンズJr.を見てひとつ目の選択肢と見せかけて、それからノールックでギャフォードにパスを出す。

Luka Doncic and Daniel Gafford No. 3
(NBA)

そして、直接レイアップやダンクにはつながらなかったが、いずれにしてもギャフォードにとってはイージーな得点となった。

 

🤔重要性

ドンチッチがギャフォードにパスを出した時は、得点に結びつくと考えたほうがいい。

ワシントン・ウィザーズからマーベリックスにトレードされて以降、ギャフォードは59本のFGを沈めている。そのうち23本はドンチッチからお膳立てされたものだ。ギャフォードはショットの71.4%をドンチッチのパスから放っている。

ギャフォードのショットのほぼすべてがバスケット付近からなのは助けになる。だが、その強みと弱点を知り、生かすプレイをしている選手にも言及すべきだ。また、ギャフォードがスクリーン、ロール、カッティングに意欲的なのも、ドンチッチと一緒に活躍するために必要なスキルだろう。

ドンチッチはリーグ最高レベルの確率でアイソレーションをするが、そこでギャフォードはダンカースポットの大きなターゲットとなる。6フィート10インチ(約208センチ)でウィングスパンが7フィート2インチ(約218センチ)のギャフォードは、新人デレック・ライブリー二世同様に高さで脅威となる。

今季、ダンクの数でライブリー二世を上回るのは9選手しかいない。そのひとりがギャフォードだ。

また、ドンチッチはピック&ロールからプレイをつくる確率もリーグ有数だ。そういったプレイにおけるビッグマンの役割は簡単に思われるかもしれない。しかし、それをうまくこなすためには微妙なところが必要なのだ。

わずかな時間とはいえ、ロールする前にしっかりとスクリーンを保たなければいけない時もある。

逆にうまくスクリーンを外すべき時もある。

さらには、スクリーンをまったくかけないことが最高のスクリーンとなることもあるのだ。

もちろん、それらの状況すべてで重要なのはドンチッチである。ほとんどすべての相手に対し、どこからでも効率よく得点をあげられる能力をドンチッチが持つからこそ、相手チームの2人(時には3人)からマークされるのだ。そしてドンチッチにできないパスはない。

マーベリックスにとって重要なのは、ドンチッチの周囲のロールプレイヤーたちが、ドンチッチのマークを増やした相手チームを罰せられることだ。現在の好調ぶりは、ギャフォードがそれをうまくこなしていることを示す好例だろう。

原文:This Luka Doncic play explains how Mavericks center Daniel Gafford can break a Wilt Chamberlain record(抄訳)
翻訳:坂東実藍

Scott Rafferty

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Scott Rafferty is an experienced NBA journalist who first started writing for The Sporting News in 2017. There are few things he appreciates more than a Nikola Jokic no-look pass, Klay Thompson heat check or Giannis Antetokounmpo eurostep. He's a member of the NBA Global team.

坂東実藍 Miran Bando

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。