キングがロサンゼルスにやってくる。
現在のNBAでトップ、歴代でも有数の選手であるレブロン・ジェームズは、キャリアにおける次のチャプターを紫と金のインクで記すと決めた。
ジェームズは昨季のポストシーズンで、NBA史上有数の個人成績を残した。8年連続となるファイナル進出までの道のりで、ポストシーズンにおける得点(1試合平均34.0)、ダブルダブル(15)、トリプルダブル(4)でトップの数字を残してきたのだ。アシスト(1試合平均9.0)も2位につけている。
だがそれでも、これらの見事な数字だけでは、レブロンの支配力を完全に表すことができない。
6フィート8インチ(約203センチ)、250ポンド(約113キロ)のジェームズは、登録としてはフォワードだが、そのオールラウンドなスキルを武器に、フロアのあらゆるポジションでプレイすることができる。
プレイオフでの素晴らしさは、レギュラーシーズンからすでに見てとれた。全82試合に出場し、1試合平均27.5得点は3位、9.1アシストは2位の数字だ。
最も重要な武器は、これまでのNBAで見ることができなかったスピードとパワーの融合だろう。ボールを持っているときのジェームズは、止めるのがほぼ不可能だ。ドライブからのショット成功率は60.3%とリーグ最高の数字だった。これは2位のドリュー・ホリデーを4.9%も上回る。また、アイソレーションにおける6.1得点も2位の成績だ。
ドリブルからの攻撃は、ガードのようなボールさばきに中距離からのプルアップ、3ポイントショット、ホップステップからのリバースレイアップなど狡猾なフィニッシュ、リングへの爆発力に、器用さやファウルを誘う能力と、あらゆるレパートリーを駆使することができる。
これらのスキルにワールドクラスのコート視野を併せ持つため、ジェームズはピック&ロールにおいても一流だ。ポゼッションごとの得点に基づくボールハンドリングのランキングでは、レギュラーシーズンで91位、ポストシーズンで90位に位置している。
昨季、ハーフコートオフェンスで苦しんだレイカーズにとって、ジェームズの加入は砂漠で自動販売機を見つけたようなものだ。
ボールを持っているときのジェームズが見事なのは確かだが、レイカーズのロスターにロンゾ・ボール、ラジョン・ロンドという才能に恵まれた2人のパサーがいることを考えれば、レブロンがボールを持たない時間も少なくないだろう。レイカーズにとって幸運なのは、そういう状況でも彼が力強いことだ。
キャッチ&シュート(ボールやロンドとプレイすることでこの機会を得ることは確実だろう)の3P成功率は38.3%を記録し、ポゼッションあたりのカットからの得点は平均1.62とリーグトップの数字だ。
もちろん、レイカーズの攻撃はハーフコートオフェンスだけではない。昨季の彼らはNBAで2番目に速いペースを記録し、速攻からの得点でも2位をマークしている。
ジェームズはこれまでペースにおいてトップ10に入るチームでプレイしたことがない。トランジションにおいてジェームズを阻むのが絶望的であることを考えれば、これは興味深い点だ。
それは、タックルするかのようにジェームズを止めようとしながら、それを突破されたうえにエンドワンを決められたマーカス・モリスに聞けば分かるはずだ。
また、NFLのロブ・グロンコウスキーのような役割をジェームズが担うなかで、コート全体を横切るアウトレットパスを好むボールが、“クォーターバック”としての評価をどれほど高めていくことだろうか。
最高級のスコアラーであるだけでなく、ジェームズはパサーとしての才能にも恵まれている。その類まれなる視野を用いて、試合であらゆるパスを出すことができるのだ。
他のディフェンダーの助けもなしに、一人の選手がジェームズをリングに向かわせないように阻むことはできない。ほんのわずかでも隙間があれば、彼はポケットパスでそれを生かしてくる。
特にピック&ロールでは、完璧な角度で相手選手たちの“森”をかいくぐるバウンドパスを出すことができる。
さらに最近では、ポストでのパサーとしても最高級の選手となった。今年のプレイオフでは、各チームが守備のミスマッチを生かそうとした。ジェームズはスピードのないビッグマンや非常に小さなガードをターゲットにそのミスマッチを狙う。
守る側がジェームズをカバーしなければいけないとき、たとえ3Pラインの近くからプレイを始めたとしても、ジェームズは強さで勝るのを武器にリングへと向かうのだ。
そして守るチームがポストでジェームズにダブルチームを仕掛けざるを得なくなると、ジェームズはチームメイトのためにお膳立てするのである。おそらく、ジェームズほどうまくダブルチームを打ち破る選手は、バスケットボールの歴史においていなかっただろう。彼はディフェンダーたちをチェス盤の駒のように操るのだ。
さらに、ジェームズのパスレンジは無制限だけに、相手チームはコートの反対側であってもジェームズの味方をフリーにできない。オープンショットにつながってしまうからだ。
ジェームズが守備の意識を引きつけることで、ジョシュ・ハートやカイル・クーズマ、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープといったチームメイトたちは視野を生かせるだろう。
チームメイトと言えば、現在のレイカーズのロスターはジェームズにとってこれまでで最も守備意識の高いグループとなるかもしれない。
昨年のレイカーズは守備のエフィシェンシーがリーグ最下位から12位に飛躍した。ボール、ハート、コールドウェル・ポープ、ブランドン・イングラム、そしてルーク・ウォルトン・ヘッドコーチは、そのためにやるべきことを山ほどこなした。
この夏、レイカーズはロンド、ランス・スティーブンソン、ジャベール・マギーといった選手たちを獲得した。イングラムやボールのような見事なウィングスパンを持つ選手たちを新たなに加えたのだ。これは守備におけるジェームズの負担をある程度軽くするはずだ。それにより、ジェームズは自由かつ安全にプレイし、動き回って相手にダメージを与えることができる。
そして必要となれば、ジェームズは常に相手を抑えたり、トランジションからブロックを狙える。
15年前、レブロン・ジェームズという名のティーンエイジャーは、高校から直接NBAへと飛躍を遂げた。33歳になった今、ジェームズは世界最高の選手というだけでなく、いまだ進化を遂げている。
昨季のジェームズはアシスト(9.1)、リバウンド(8.6)、3P(1.8)で自己最多の数字を記録した。彼はよりポストアップやパス配給にスタイルをシフトさせており、その双方ですでにトップクラスだ。しかも、彼はさらなるショットを武器に加えようとしている。ステップバックからの3Pをコンスタントに決めているのだ。彼のフェイダウェイジャンパーは、新しい必殺技だ。プレイオフの間に、彼は68回をそのショットを試みて、52.9%の成功率を記録している。
トロント・ラプターズはよく知っているだろう。昨季の彼らは球団史上最高のチームだったが、ジェームズを止めることができずプレイオフでスウィープされ、フェイダウェイの練習相手にもされてしまった。
ジェームズのすごさに議論の余地はない。NBAの歴史において歴代7位の得点、11位のアシストを誇る選手だ。優勝3回を経験し、ファイナルのMVPに選ばれ、シーズンMVPは4回受賞。オールスター選出14回、五輪で2つの金メダルを獲得している。
彼は歴代でも最も完成された選手の一人だ。大きな欠点がない。彼はいまだ全盛期にあり、NBAの歴史において最高級の個人パフォーマンスをプレイオフで披露したばかりなのだ。
“キング・ジェームズ”は、ロサンゼルスで注目を浴びる用意ができている。我々はそれを知っている。だが、彼が次にどんな功績を残してくれるのか、本当に分かっている者はいない。
原文: Latest Laker: LeBron James by Joey Ramirez/Lakers.com(抄訳)