新たなカイリー・アービングとルカ・ドンチッチでマーベリックスはプレイオフの脅威に?

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

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ダラス・マーベリックスのカイリー・アービングは、3月で32歳になった。一般的に、ガードはこの年齢になると急速に衰えだす。だが、アービングはかつてないほど良い状態のようだ。

直近の試合で勝利を収めた際、アービングは報道陣に「映画『ベンジャミン・バトン』を見たかい?」と述べている。

「30代前半にもっと身体能力が増したらどうだろう。実際にそうなっているんじゃないかな。ひざは悪くないし、足首もほとんど悪くない。数年かけて健康になった」

キャリア13年目でもアービングが大きく落ち込んでいない理由は、より健康な状態だからというだけではない。マーベリックスで理想的な状況にあり、ルカ・ドンチッチとは素晴らしいコンビとなった。新たなアービングは、どのチームもプレイオフでマーベリックスを恐れるべき理由となっている。

かつてなく元気なカイリー・アービング

以前からアービングはタフショットを見事に決める選手だ。それは今季も変わらない。信じられないようなレイアップを決め、ミッドレンジからのショットは成功率ほぼ50%。3ポイントショットは成功率40%と、あらゆるところから危険な存在になる。ハンドリングやタッチは相変わらず比類なきレベルだ。

肉体的にもより健康なようだ。自己最多のダンク達成について報道陣に冗談を飛ばした直後のユタ・ジャズ戦で、強烈なダンクを叩きこんでいる。

マーベリックスで2番手の選択肢である恩恵が大きい。1試合平均25.3得点は、ブルックリン・ネッツでの数字をわずかに下回る。だが、より効率的に得点をあげているのだ。3P成功率40.5%、トゥルーシューティング成功率59.8%は、いずれも自己平均を大きく上回る。ほとんど無理をする必要がないため、ターンオーバーも大差で自己最少の数字だ。ドンチッチと一緒にプレイすることで、アービングはイージーなショットを打てている。

そしてそれは、一方通行ではない。ドンチッチによってアービングが良くなったように、アービングによってドンチッチも良くなっているのだ。

カイリー・アービングとルカ・ドンチッチは止められないコンビ

マーベリックスはウェスタン・カンファレンスの6位だ。しかし、それにだまされてはいけない。アービングとドンチッチがそろっている時は素晴らしいチームで、27勝15敗を記録している。西地区でオクラホマシティ・サンダー、デンバー・ナゲッツ、ミネソタ・ティンバーウルブズの上位3チームに次ぐ勝率だ。

どちらも守備は平均を下回っており、ディフェンス面でのフィットに関しては疑問符がつくかもしれない。だが、アービングとドンチッチがコートに立っている時のマーベリックスのオフェンシブレーティング(121.7)は、ボストン・セルティックスに次ぐ2位となっている。

マーベリックスのロスターは大半が新しい面子だ。馴染むのに少し時間が必要だった。今の彼らがお互いに築いているケミストリーは、見ていて美しい。

マーベリックスのロスターは大半が新しい面子だ。馴染むのに少し時間が必要だった。今の彼らがお互いに築いているケミストリーは、見ていて美しい。

アービングとドンチッチは一緒にプレイしていて素晴らしいが、おそらくもっと大事なのは、離れている時も彼らが素晴らしいということだ。

ドンチッチはひとりでプレイオフのシリーズに勝つことができる。それは周知のとおりだ。しかし、マーベリックスの弱点だったのは、ドンチッチに頼りすぎ、シリーズ終盤で彼が疲れてしまうことだった。必要に迫られてそうなっていたのだ。昨季のマーベリックスは、ドンチッチ不在の時間帯を耐えられず、彼がベンチに座っている時に対戦相手に100ポゼッションあたり2.8点差をつけられた。

それらの問題を解決したのがアービングだ。ドンチッチがひと息つき、アービングに手綱を託した時でも、マーベリックスは100ポゼッションあたり1.8点差をつけている。

アービングにはドンチッチ不在のラインナップをけん引するだけの力が残っている。ドンチッチがいない時は100ポゼッションあたり42.2得点、10.5アシスト、トゥルーシューティング成功率63.3%という数字で、なんでもこなすプレイメーカーというドンチッチの役割をこなしているのだ。

だからこそ、マーベリックスはアービングを獲得した。そしてそれが機能しているのだ。アービングの存在は、対戦相手がポストでドンチッチにダブルチームを仕掛けるのを難しくしている。試合終盤のオプションも増えた(ナゲッツ戦でアービングが左手で決めた決勝点は今季最高のショットだ)。アービングによって、ドンチッチ不在のマーベリックスは石のように沈むことがないのである。

アービングとドンチッチはそれぞれ、ポストシーズンでさらにパフォーマンスを高めることができる。プレイオフの舞台では、スター選手がより重要だ。マーベリックスはついに、相手を苦しめるための正当な2番手を手に入れた。

ドンチッチは変わらずにドンチッチらしくあるだろう。そして新たなアービングによって、マーベリックスはプレイオフでの対戦を誰も望まないチームとなった。

原文:Kyrie Irving's improved play with and without Luka Doncic is what Mavericks need to reach championship potential(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。