コービー・ブライアントとマイケル・ジョーダン、ふたりの勝者の共通点

Mike Trudell, Lakers.com

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教師は、最もハードにトライする生徒を誇る。絶対的なベストになろうとする者を――。

マイケル・ジョーダンはNBAを支配していた1990年代に気づいていなかったかもしれない。だが、彼はコービー・ブライアントという名前の少年を教えていた。1996年に高校を卒業したブライアントがドラフトで指名されるずっと前のことだ。

すぐにコービーはほぼ常にジョーダンの助言を求めるようになった。偉大な選手になりたいという、抑えがたい欲求を共有していたこともあり、最高級のふたりの競争者は非常に近い存在となった。

COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックのなかで、我々の多くは『ESPN』で放送されているジョーダンと1997-98シーズンのシカゴ・ブルズを追ったドキュメンタリーシリーズ『The Last Dance』(邦題『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』/Netflix)に釘付けとなっている。

第7話で感動的だったハイライトは、ディレクターから「そのインテンシティ(激しさ)がナイスガイと受け取られない代償につながったと思うか?」と質問されたジョーダンの答えだ。

“勝利には代償が伴う。リーダーシップには代償が伴うんだ。私は人が引っ張ってほしくないと思っている時に引っ張った。挑戦されたくないと思っているときに挑戦した。私はそういう権利を勝ち取った。私よりあとに加わったチームメイトたちは、私が耐えたすべてに耐えていない。チームに加わったら、私がやってきた一種の基準に沿ってもらう。それは譲れない。マイケル・ジョーダンについて、チームメイトたちに聞いてみてくれ。彼は自分がやらなかったことをひとつでも求めたか、とね。『彼は本当にナイスガイじゃなかった。暴君だったかも』と言うが、違う。何も勝っていないじゃないか。私は勝ちたかった。だが、彼らにも勝利の一員であってほしかったんだ。私はそうしなければいけないわけじゃない。ただ自分がそういう人間だからやっているんだ。それが私の戦い方なんだよ。それが私のメンタリティだったんだ。そういうやり方でプレイしたくなければ、しなければいい”

Michael Jordan

1月にコービーが悲劇的に亡くなったとき、ステイプルズ・センターでの告別式で、ジョーダンはステージに立ったときから涙を流し、「コービーと私が非常に仲良しだったことに人は驚くかもしれない」と話した。

「だが、我々は非常に仲良しだった。コービーは私の親友だった。彼は弟のようだった。約束する。今日から私は、自分にはできる限り助けようとしてきた弟がいたという思い出とともに生きる。安らかに眠れ、弟よ」。

現役時代、コービーがあのようなプレイ、あのようなリーダーシップに駆り立てるものは何か問われ、ドキュメンタリーでのジョーダンのようだったことを何度も思い出す。

2019年9月、『Motiversity』の「The Mindset of a Winner」のインタビューで、コービーは「1位になりたければ、私とプレイしろ。2位でよければ、ほかに行け」と口にした。

それがコービーだ。そして、ジョーダンだ。

Kobe Bryant Western Conference All Stars Michael Jordan Eastern conference All Stars

コービーは「いかにより優れたバスケットボール選手になるかを学ぼうと、すべてをしてきた」と続けている。

「すべて。すべてだ」。

コービーはインタビューのなかで、映画『グラディエーター』のマキシマスが闘いの前に土を掴む場面を用いて、「そのおりの中にいるときは、俺に触れるな。話しかけるな」と述べた。

「放っておいてくれ」。

そして、彼は「G.O.A.T」(史上最高)の山についても話した。キャリアを通じ、ビル・ラッセル、ジェリー・ウェスト、オスカー・ロバートソン、マジック・ジョンソン、ラリー・バード、アキーム・オラジュワン、そして誰よりもジョーダンと、歴代の偉大な選手たちの考えを取り入れたと。

コービーは「特にマイケルだ。自分がNBA入りしたときから、彼は兄になったんだ」と説明した。

「どういうプロセスだったか? 彼らのところに行き、ゲームの一部始終を理解し、彼らがどれほど細かくこだわって臨んでいたかを知り、それをやったんだ。情熱があっても、生活のすべてをそれに捧げる気がない選手たちもいた。選択なんだ。家族とか、ほかにやるべきことがあったりね。本当にゲームが最優先にはならないんだ」。

ジョーダンとコービーは、一生に一度しか試合を観に来られないような少年のことをよく分かっていた。そして、その少年を失望させなかった。ケガ?疲労? 関係ない。

コービーは「一生懸命稼いだ金を払って、自分のパフォーマンスを見に来る人たちがたくさんいるんだ」と話した。

「良いプレイをしなければいけない。それができるようにしておくことが仕事なんだ。どの試合でもそのレベルでパフォーマンスができるように強くいることが仕事なのさ。そして、競争者として、自分は逃げない」。

Kobe Bryant Los Angeles Lakers Michael Jordan Chicago Bulls

1997年12月17日(日本時間18日)、シカゴでレイカーズがブルズと対戦したときに、フリースローラインでコービーが近づき、ベースラインでのフェイダウェイジャンパーの秘訣を尋ねた最初のときから、ジョーダンはコービーのそういうところを見抜いていた。コービーによれば、ジョーダンは、跳ぶ際に前足で相手を感じ、その足で遠ざけ続けるのだと、秘訣を教えてくれたそうだ。

ちなみに、104-83でブルズが勝利したこの試合で、コービーはフィールドゴール20本中12本成功の33得点、ジョーダンはFG22本中12本成功、11本のフリースロー成功で36得点だった。

ジョーダンは「彼は夜の22時半でも、深夜の2時や3時でも連絡してきた。ポストアップやフットワーク、トライアングル(オフェンス)のことを話したよ」と述べている。

「最初は腹立たしかったけど、一種の情熱だった。この若者にはみんなが決して知らないような情熱があったのさ。何かを愛し、それに対する強い情熱があれば、理解してトライしようと極限まで駆り立てるものなんだ。彼は自分にできる最高のバスケットボール選手になることを望んだんだ」。

コービーはパウ・ガソル、アンドリュー・バイナム、ラマー・オドムのベストを引き出した。特にガソルは、バイナムが負傷で不在だったボストン・セルティックスとのファイナルの厳しいシリーズで見事に応えた。

2011年にブライアントは「パウにはもう少し自分勝手に、アグレッシブになれという話をした」と明かしている。

「メンフィス時代も彼はここ一番の選手だったけど、いつもすごくナイスだった。白鳥だったんだ。自分は彼が黒い白鳥(ブラックスワン)になることを必要としている。時々×××になれとね」。

レイカーズが必要としたとき、ガソルは「黒い白鳥」になった。2010年のセルティックスとのファイナル第7戦、ガソルは19得点、18リバウンド、4アシスト、2ブロックを記録した。そのガソルはずっと、自分のプレイを次のレベルに引き上げてくれた大きな功績はコービーの鼓舞だと話している。

ジョーダンとコービーがチームメイトたちに対して悪役を演じた物語はたくさんある。偉大さを求める上でのことだ。ジョーダンが言ったように、それは自分だけのためではない。彼はチームメイトたちにも同様に勝利を経験してほしかったのだ。そして、ジョーダンとコービーは多くの選手にリングをもたらした。

引退後のコービーの生活に関して触れるなかで、ジョーダンは「その情熱から、私は彼のことを称賛していた。スポーツだけでなく、親として、夫として、毎日いつも向上しようとするのは、なかなか見られるものじゃない」と話している。

「私は彼がしてきたこと、(妻の)バネッサと分かち合ってきたこと、そして子どもたちと分かち合ってきたことにインスパイアされている」。

実際、ジョーダンは6歳の双子の娘たちが待つ家に帰るのが待ち遠しいと話した。コービーのような娘を持つ父親になろうとするのが待ち遠しいと。

ジョーダンは「コービーは自分がしていたことすべてに自分のすべてを注いだ。引退のときに彼は幸せそうだった」と続けた。

「彼は新しい情熱を見つけたんだ。そして、コーチとしてコミュニティで恩返しをし続けた。そしてより大切なことに、彼は素晴らしい父親、素晴らしい夫だった。家族に自分を捧げ、心の底から娘たちを愛した。コービーはコートに何も残さなかった。彼が我々に望んでいることだと思う」。

若きコービーにとっては、ゲータレードのCM「マイクのようになろう」の一部だったかもしれない。だが何より、ブライアントは自分の絶対のベストになることを望んだのだ。そして、その道を求め続ける彼を止めるものはなかった。

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原文:Kobe and Mike by Mike Trudell/Lakers.com(抄訳)​


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