ニックスがNBAに抗議 これまで再試合となったケースは?

Bryan Murphy

大西玲央 Reo Onishi

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ニックスはNBAを簡単には見逃すつもりがないようだ。

2月13日(現地12日)、ニューヨーク・ニックスがトヨタ・センターでヒューストン・ロケッツに103-105で敗れた試合は、今も議論の種となっている。同点で迎えた試合終了間際、ニックスのポイントガード、ジェイレン・ブランソンがファウルを吹かれ、ロケッツに決勝フリースローを許した。

しかし、ビデオリプレイとNBAの代表記者取材(プールリポート)から、実際は違った結末を迎えるべきだったことがわかっている。リーグは、ブランソンへのファウルコールが「不正確」であり、ロケッツにフリースローが与えられるべきでなかったことを認めた。レフリーのミスを認めるのはフェアな行為ではあるが、その代償がないわけではない。

『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者が14日(現地13日)に報じたところによると、ニックスはこの敗戦に対して抗議を申し立てているという。

NBAで抗議が出されたのは、ここ1か月で2試合目。1月にはポートランド・トレイルブレイザーズがオクラホマシティ・サンダーへの敗戦を抗議した。

なぜニックスはロケッツへの敗戦に抗議?

問題になっているのは試合終盤のレフリーによるミスコールだ。

103-103の同点、ブロックからのルースボールをロケッツのガードであるアーロン・ホリデーが3ポイントラインの後ろで確保。時計が0秒に向かう中、ホリデーは終了ブザー直前に最後のショットを放った。

ショットは決まらなかったものの、コンテストに行ったブランソンのファウルが吹かれたのだ。

しかしリプレイを確認すると、接触はホリデーがショットを放ったあとで、最小限にとどまっていたことがわかる。通常ならばニックスのトム・シボドー・ヘッドコーチはチャレンジを要求していただろうが、ニックスはすでにコーチチャレンジを消化している状態だった。

結果、笛はそのまま適用され、試合残り0.3秒でホリデーが3本のフリースローを与えられた。最初の2本を決め、時間を経過させるために意図的に3本目を外し、ロケッツが105-103で勝利となった。

試合終了のブザー後、シボドーHCとリック・ブランソン・アシスタントコーチが共にレフリーに歩み寄り、制止されるシーンが見られた。

ファウルコールだけでも物議を醸すのに十分だったが、さらに燃料投下となったのが、試合後の代表記者取材(プールリポート)だ。クルーチーフのエド・マロイがファウルコールの間違いを認め、ホリデーにフリースローが与えられるべきではなかったと話したのだ。

マロイはこのように発言している:

試合後のレビューで確認したところ、オフェンス選手は問題なくプレイイングポジションに戻ることができている。接触はボールがリリースされたあとに起きたもので、試投に対する影響は最小限であり、ファウルは吹かれるべきではなかった。

プールリポート全文はこちらで確認できる。

シボドーもブランソンも、試合後はコールへの苛立ちを胸の内に秘める形を取った。ブランソンは記者会見にて同コールに対して3度質問されたものの「素晴らしいコールだった。次の質問」と毎回答えていた。

レフリーについて質問されたシボドーHCは「素晴らしかった」とだけまず答えたが、その後に言及している。

シボドーHCは「基本的に、私は試合がどれだけタイトにコールされようが気にしないというスタンスを持っている」と話す。

「タイトにコールしようが、ルースにコールしようが構わない。ただ一貫性はあって欲しい」

「彼らには仕事がある。試合をコントロールし、マネージすること。それが彼らの第一の責任であり、自らの判断でやらなければならない。それはリスペクトしている。今夜は我々の思い通りにはならなかった」

NBAにおける抗議って何?

NBAにおける抗議とは、不正確な笛や、ルールの適用ミスなどを理由に、チームが試合の一部分の再試合を求めることだ。抗議を申し立てるチームは1万ドルを支払う必要があるが、異議申し立てが成功すれば、その金額は返還される。

チームは抗議を提出するのに試合終了から48時間、さらに証拠を添付するのに5日間の猶予がある。その後、リーグの運営部門代表とその部署が確認し、NBAコミッショナーが最終的な決定権を持つ。

抗議が成功すれば、抗議の対象となった試合の一部が再びプレイされることとなる。第4クォーターの数分間などであることがほとんどだ。

これまでに成功したNBAでの抗議は?

NBA Hoops Online』によると、これまでに成功した抗議は8回ある。しかし、1982年以降は一度しか成功していない。

2007年に、マイアミ・ヒートはシャキール・オニールが6ファウルで退場となった試合に対して抗議している。実際は5ファウルしかしておらず、試合に残ることができたはずだったのだ。

2007年12月19日に行われた試合のオーバータイム残り51.3秒が、2008年3月8日に再びプレイされることとなった。しかし、その時点でオニールはすでにヒートからフェニックス・サンズにトレードされていた。元の試合でヒートは111-114で敗れたのだが、再試合後も同スコアで敗れる形となった。

抗議の結果、勝敗が変わったのはこれまで3回しかない。

日程 リプレイ対象 元スコア 最終スコア
1952年
11月28日
最後の数分 ホークス 78
ウォリアーズ 77
ウォリアーズ 72
ホークス 69
1969年
11月6日
オーバータイム ホークス 124
ブルズ 122
ホークス 142
ブルズ 137
1971年
12月3日
4秒 ブレーブス 91
キャバリアーズ 90
ブレーブス 91
キャバリアーズ 90
1973年
1月14日
60秒 ペイサーズ 84
スパーズ 83
スパーズ 95
ペイサーズ 90
1976年
1月7日
3分 スクワイアズ 112
ネッツ 89
スクワイアズ 107
ネッツ 100
1978年
11月8日
第3Q5分50秒
第4Q全て
76ers 137
ネッツ 133
76ers 123
ネッツ 117
1982年
11月30日
3秒 レイカーズ 137
スパーズ 132
スパーズ 117
レイカーズ 114
2007年
12月19日
51.3秒 ホークス 114
ヒート 111
ホークス 114
ヒート 111

原文:Knicks protest: Why New York is disputing controversial loss to Rockets after Jalen Brunson's incorrect foul by Bryan Murphy
翻訳:大西玲央

Bryan Murphy

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Bryan Murphy joined The Sporting News in 2022 as the NHL/Canada content producer. Previously he worked for NBC Sports on their national news desk reporting on breaking news for the NFL, MLB, NBA and NHL, in addition to covering the 2020 and 2022 Olympic Games. A graduate of Quinnipiac University, he spent time in college as a beat reporter covering the men’s ice hockey team.

大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。