復帰が近づくウォリアーズのクレイ・トンプソンへの期待

大西玲央 Reo Onishi

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長期離脱しているゴールデンステイト・ウォリアーズのクレイ・トンプソンの復帰が、いよいよ間近となってきた。すでに先週から5on5の練習は再開しており、11月23日(日本時間24日)には初めてフルに練習に参加した。

トンプソンは2019年のNBAファイナル第6戦に左ひざ前十字靭帯(ACL)を断裂し、さらに2020年11月には右アキレス腱を断裂し、2年半近く実戦から遠ざかっていた状態が続いていた。

ウォリアーズのスティーブ・カー・ヘッドコーチは「復帰目標日はまだ定めていない」と話しているものの、「できる限りスクリメージをやって持久力を取り戻させてから決める」と話しており、シーズン前に予想されていたクリスマス近辺での復帰の現実味が高まってきた。

本人は「中途半端な状態では復帰したくない。最後にプレイしていた時、世界のベストプレイヤーのひとりだった頃の状態で復帰したい」と話している。

ではクレイは一体どんな選手だったのか、少し振り返ってみよう。


リーグ史上屈指の3ポイントシューター

2011-12シーズンにデビューしたトンプソンは、合計615試合に出場しており、平均19.5得点、3.5リバウンド、2.3アシストを記録している。そして何よりも特筆すべきなのが、そのシュート力だ。3ポイント成功率は8シーズンで一度も4割を切ったことがなく、3P試投数平均7.0本に対して、成功数が2.9本、キャリア成功率41.9%を誇る。

復帰後いきなりこの数字を残すとは思えないものの、ウォリアーズが今季リーグで最もキャッチ&シュートの3Pを打っているチームであることが、彼の復帰の助けとなるだろう。

今季1試合平均28.6本の3Pショットを成功率37.3%で打っているウォリアーズだが、この数字はトンプソンが最後にプレイした2018-19シーズンの24.2本(成功率24.2%)から4.4本も増えている。

トンプソンは2018-19シーズンに平均6.1本のキャッチ&シュートからの3Pショットを、成功率40.5%で打っている。もちろん復帰すればほかの選手のプレイタイムに食い込むため、単純にこの6.1本がそのまま加算されるわけではないが、効率は今よりもさらに上昇することが期待される。

ドリブルを必要としない選手

Klay Thompson

ACLやアキレス腱の断裂から復帰する選手で、最も懸念されるのが、以前のような身体能力を発揮できるかどうかだ。ブルックリン・ネッツのケビン・デュラントは、昨季見事な復帰を見せ、今季はMVP級の活躍を見せているが、かなり稀有なケースでもある。

だからこそ、ウォリアーズはトンプソンの復帰にかなり慎重になっている。しかし、トンプソンはほとんどボールを持たずにチームに良い効果を与えることができるため、ドライブや爆発力を強みとしてる選手よりも、早めに結果を出せるかもしれない。

前述の通りキャッチ&シュートが多いトンプソンだが、その能力がどれだけ突出しているのかが一番わかるのが、2016年12月の自身のキャリア最多となる60得点を獲得したインディアナ・ペイサーズ戦での活躍だ。

29分3秒の60得点していること自体が驚きなのだが、さらに凄いのが、この試合でトンプソンがボールを持っていたのはわずか90秒で、11回しかドリブルしていないことだ。

この2016-17シーズンはシーズンを通してみても、トンプソンが放った全フィールドゴールのうち、打つまでに1回までしかドリブルをしなかったものが78.8%を占める。ドリブルからの鋭い切り返しなどを必要しないことは、有利に働きそうだ。

もちろん打てる体勢に入れるまでの動きを含めてこそがトンプソンの凄さなので、その面でどれだけ動けるかの心配はある。しかしウォリアーズのこのキャッチ&シュートの多さは、トンプソンの復帰を見越した上でチームの戦術に組み込まれているものであり、全く違うシステムに組み込まれるよりもスムーズに復帰ができるだろう。


この夏には、ソーシャルメディア上でトンプソンがワークアウト中にコーナースリーを10本連続で決める動画が出回っていた。

これを見て、彼の復帰が待ち遠しくなったファンも多いだろう。いよいよ、これを試合で見る日が近づいてきた。

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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。