驚異的なスタッツを残し続けるケビン・デュラントとステフィン・カリー

大西玲央 Reo Onishi

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NBA 2021-22シーズンが開幕してから1か月、ふたりの選手が突出した活躍を見せている。ブルックリン・ネッツのケビン・デュラントと、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーだ。

ファウルの基準変更によりいつもと違う笛の吹かれた方に苦戦する選手や、今季から公式ボールがウイルソン社になったことでシュートタッチに悩む選手たちが例年よりも数字を落としているなか、このふたりはまるでその影響を感じさせていない。

高効率のケビン・デュラント

まずはデュラントのスタッツを見てみよう。ここまで15試合に出場し、平均28.9得点(リーグ1位)、8.1リバウンド、5.0アシストを記録している。そして注目はその成功率だ。フィールドゴール試投数が自身のキャリア最多の10.7本であるのに対して、FG成功率もキャリア最高の56.7%を記録しているのだ。

先日のウォリアーズ戦で今季の自身ワーストとなるFG19本中6本成功の31.6%を記録したことで、FG成功率は58.6%から56.7%まで下がってしまったが、それでも十分に高い。今季のワーストゲームが19得点という事実がそもそも凄まじい。

得点をするのが難しくなったとされている今季であるのにもかかわらず、デュラントにはまるで穴がないのだ。下記はデュラントの今季のショットチャートだが、コートのどこから打ってもリーグの平均以上を記録しているのがわかる。

Kevin Durant shotchart
※赤がリーグ平均以上、青がリーグ平均以下

唯一の「弱点」が、3本しか打っていない左コーナーという恐ろしさだ。

打つ場合は高い効率で決めることが要求されるミドルレンジからのジャンプショットでさえも、彼は89本中53本成功の59.6%を記録している。

デュラントはキャッチ&シュートではなく、プルアップジャンパー(ドリブルした状態からのジャンプショット)主体の選手であることも、その強さの大きな要因だ。彼が今季放ったFGのうち55.9%がプルアップなのだが、2ポイントショットは54.1%、3ポイントショットは42.9%の成功率で決めている。

さらに、リーグの多くの選手のフリースロー試投数が低下しているなか、デュラントは昨季の平均6.8本に対して今季も6.7本と、ほぼ変わっていない。

ただたくさんシュートをすることで得点を重ねているのではなく、高い効率で多くのシュートを決めているのがデュラントの凄さなのだ。

3ポイント王、ステフィン・カリー

平均28.7得点(リーグ2位)、6.3リバウンド、6.6アシストのカリーはFG成功率45.4%、3P40.6%と、効率に関してはデュラントに劣る。しかし、今季もまた得意の3Pショットでリーグを席巻しているのだ。

現在カリーは平均3P試投数がキャリア最多の13.4本で、NBA記録となる402本の3Pショットを決めた2015-16シーズンの11.2本を大きく上回っている。このペースで行くと、カリーは今季445本もの3Pショットを決め、新記録を打ち立てることとなる。

1シーズンでカリーの次に多く決めているのはジェームズ・ハーデンの378本で、400本の壁を超えているのはカリーしかいない。それをさらに40本以上の差で更新しようとしているのだ。さらに言えば、シーズン300本以上を決めたことがあるのは、歴代でカリー(4回)とハーデン(1回)のふたりしかおらず、カリーがどれだけずば抜けているのかがわかる。

カリーの凄いところは、1試合で何本も3Pショットを決めてくることだ。今季ここまで平均5.4本の3Pショットを決めているカリーだが、6本以上決めた試合がすでに6回もある。そのうち3試合は9本も決めている。

StatMuseによると、9本以上の3Pショット成功を10試合以上記録している選手は歴代でカリーしかいない。しかも彼はそれを37回もやっているのだ。

さらに、カリーの場合はディフェンダーに守られていようと、関係なく決めてくる恐ろしさがある。NBAではシューターに対してディフェンダーが4フィート以内にいる状態が「守られている」ものとして集計されるのだが、カリーはその状態でも今季45本中26本の成功率57.8%で3Pショットを決めているのだ。

そして距離も、もはや3Pラインを気にせず打ち始めている。NBAの3Pラインは23フィート9インチ(7.24m)だが、今季のカリーは30フィート(9.1m)以上離れた場所から21本中9本(42.9%)決めている。通常の選手なら遠すぎるショットが、カリーにとっては打って良いレンジなのだ。


ここまでのMVPレースは間違いなくこのふたりがリードしている状況だ。1か月経って、パフォーマンスが落ちる様子もなく、今後どういった記録的な活躍を見せてくれるのか注目だ。

大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。