富永啓生のNBAドラフトスカウティングリポート:ネブラスカ大学最終シーズンでどのように評価を上げたのか

Stephen Noh

大西玲央 Reo Onishi

富永啓生のNBAドラフトスカウティングリポート:ネブラスカ大学最終シーズンでどのように評価を上げたのか image

昨年ネブラスカ大学で平均13.1得点と活躍した富永啓生は、オフシーズンにNBAチームのワークアウトに参加するなどドラフトへの興味を示してはいたものの、最終的には大学に残り最終年を過ごすことを決めた。

そしてその選択肢は正解だったようだ。コーンハスカーズ(ネブラスカ大学の愛称)は富永のリーダーシップと成長によって、チームとして大幅に強化されたのだ。富永は平均14.6得点まで数字を伸ばし、自身の弱みとされていたような箇所も強化していった。

オール・ビッグテン・セカンドチームに選出されるなど、すでに大学生として素晴らしい選手であることを証明済だ。その活躍は次のレベルに繋げることができるだろうか?

ここでは富永のNBAプロスペクトとしての評価をチェックしてみよう。

関連記事: 富永啓生の関連記事一覧

富永啓生の強み

昨年のネブラスカ大学での3ポイント成功率40.0%から今年は37.1%と少し数字が落ちているものの、『和製ステフィン・カリー』と呼ばれる富永のシュート力を疑うものは誰もいない。

彼は明らかに自身のショットに強大な自信を持っている。ハーフコートを過ぎてからはいつショットを放ってもおかしくない。

さらに富永は試投数も向上させており、ネブラスカ大学オフェンスの中心人物として、これまでよりも難しいショットを放つことも増えている。ただのシューターにとどまらず、よりその役割を増加させているのだ。

「昨年から最も成長したのは、リングに向かってのアタックとカッティングだと思います。オンボールでのプレイも昨年より増えました」と、富永自身も3月に記者たちに語っている

富永はリム周りでのフィニッシュも58.0%と良い数字を残している。ドライブからのタッチの良さを試合中に何度も見せている。

ネブラスカ大学はフレッド・ホイバーグ・ヘッドコーチの下でNBAスタイルのオフェンスを起用するチームだ。ホイバーグHC自身もNBAでのコーチ経験、選手経験がある。そのシステムを通して、富永は数々のスクリーンを利用したショットや、コートを広げてからのリムアタック、ピック&ロールからの優れた判断などを見せている。

ホイバーグHCも富永の自己評価に同意している。

「啓生が一番成長したところは、リングまで持ち込めるようになったことだ」と彼は『Huskers Radio Network』に語っている。

さらに富永のスクリーンやカッティングもネブラスカ大学の成功に大きく貢献していることをホイバーグHCは指摘している。

富永啓生の弱み

富永が強化することのできなかった弱みは、彼の188cmという身長だ。今季のNBAで100分以上出場した443選手の中で、188cm以下なのは42選手しかいない。

その身長から、ディフェンス面で狙われる対象になるのは間違いないだろう。身長を伸ばすことはできないが、力はつけることができている。

「彼はネブラスカに来た当初、明らかに適応を必要とする時期があり、フィジカルの強さに苦しむような試合もあった」とホイバーグHCは『Huskers Radio Network』に話している。

「私が彼を高く評価しているのは、自分よりも大きくて強い相手とやりあえる強さを手に入れた上に、多くの対戦相手にフェイスガードされながらもショットを決める能力を身につけたことだ」

23歳の富永は、まだここから筋力アップを図ることができる。リーグでやっていくためのオフェンス能力はすでに持っているだけに、ディフェンスで穴にならないことを証明する必要がある。

ドラフト候補としての富永啓生

昨シーズンを終えた時点、富永は2巡目で指名されるかどうかという評価だった。それは今も変わっていない。『ESPN』や『The Ringer』など多くの主要メディアが作成するモックドラフトに彼の名前はない。

だからと言って、彼がNBAチームによって指名、または契約できないわけではない。NCAAトーナメントや5月のNBAドラフトコンバインで良い活躍を見せれば、彼の評価は一気に上昇する。ラスベガスで開催されるサマーリーグにも間違いなく出場することになるだろうから、そこで注目されれば、指名されなくてもチームとの契約までこぎつけることができる。

NBAチームのフロント役員としての経験もあるホイバーグHCは、ドラフト候補としての富永を信じている人物の1人だ。『On3』への取材でも、ホイバーグHCは富永を評価するコメントを寄せている。

「必死にプレイする競争者を見過ごしてはいけない。ショットをあれだけ決められる選手を見過ごしてはいけない。啓生はそれを持ち合わせている」

Stephen Noh

Stephen Noh Photo

Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。