サンダーのギディーはバスケットボール最古の武器を巧みに操るNBAのバウンスパス王

Stephen Noh

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オクラホマシティ・サンダーのジョシュ・ギディーは、表面上かなり優秀なパサーである。あなたが彼のプレイをあまり見ていなかったとしても、彼のスタッツを見ればわかるだろう。彼はNBAの最初の2年間で1試合平均およそ6アシストを記録し、その期間中はアシストでリーグのトップ20前後につけているのだ。

しかし、その数字の裏にはまだまだたくさんのことが隠されている。

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ギディーが繰り出すパスは、一般的なアシストとは似て非なるものだ。彼は、4次元を使って3次元の脳には存在しない角度を見つけ、時間を操ってほんの数秒先に現れてすぐに消え去る好機を作り出す。

彼はそれを、バウンスパスという、最も遅く、最もオーソドックスな武器で実現するのだ。

1月25日(日本時間26日)までのギディーの242のアシストをすべて手作業で追跡してみた。そのうちの53のアシスト、つまり約22%が、バウンドパスによって生み出されたものだった。ちなみに、『Indy Cornrows』のケイトリン・クーパー記者は昨年、タイリース・ハリバートンのジャンプパスについて同様の(しかしはるかに厳密な)手作業による追跡分析を行い、彼のパス全体の約16%がジャンプパスによるものだったと判断している。

ギディーのバウンスパスには2つの目的がある。まず、ボールが曲がりくねるように通過すると足元がおぼつかなくなるビッグマンのタイミングを狂わせること。もう1つは、チームメイトが空いている場所に走り込むまでボールの到着を遅らせることだ。

ギディーが特に得意なのは、インバウンズプレイで審判がボールを保持している時間を利用してコートを分析し、好機を見出すのにバウンスパスを使うことである。試しに、自分に問いかけてみてほしい。この状態で、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーにボールを渡せる角度はあるだろうか?

Josh Giddey about to throw an inbound to Shai Gilgeous-Alexander, who is heavily guarded

一般的なガードであれば答えはノーだ。しかし、ギディーには、プレイが始まる前にギルジャス・アレクサンダーに対する守備のカバーが見えている。

ディアロン・フォックスが3ポイントライン寄りでシェイを守ったことでバスケットに向けてカットできる空間が生まれる。その時点で、ギディーは次に何が起こるかすでに想像がついている。あとは、キングスの守備全体を縫って、ボールを放てばいいのだ。

バウンスパスにおけるギディー独自の工夫は、より良い角度を生み出すために片手投げをすることである。彼の頭の中では、ディフェンダーのウィングスパンが合わせて14フィート(約4.26メートル)で、ギディーがボールを投げ入れたい場所からギルジャス・アレクサンダーが18フィート(約5.5メートル)離れていれば、それがオープンなダンクを生み出す障害になることはほとんどない。

ギディーはまた、ディフェンダーの背後からパスを出す名手でもある。彼はどんな状況でも物怖じしない。1点差の試合で残り1分を切っているときでも、彼はこの作戦でブルック・ロペス(ミルウォーキー・バックス)の背後にボールを投げ入れている。

ギディーはあの右からのバウンスパスが大好きで、その動きには様々なバリエーションがある。彼は、より良いパスを作り出すために腕の角度を変更するNBAのクォーターバックに匹敵する。

7フィート5インチ(約226cm)のウィングスパンを持つクリント・カペラ(アトランタ・ホークス)の足元にボーリングの球を転がすようなバウンスパスを出すことも、もちろん、ギディーには可能だ。

ギディーは、バウンスパスをお祭りのゲームのように扱う。そこではミリ単位の正確さが賞品を獲得する唯一の方法だと考えられている。

彼がバウンスバスを使うのは、主にインバウンズプレイとピック&ロール、そしてレイアップのためにバスケットに向かってカットする選手へのパスの際だが、彼はそれ以外のすべてのパスもできる。野球のピッチャーが速球を放つようにオーバーハンドで弾丸パスを出したり、片手で軽々とクロスコートパスを通したり、移動しながらオーバーヘッドでふんわりとしたロブを投げたりするのも、彼の得意技だ。

これらのパスが機能しているのは—そしてサンダーの再建が予定より早く進んでいるのは—ギディーと彼のチームメイトが信じられないほど高度な感覚でプレイしているからである。

『ESPN』のザック・ロウは、ポッドキャスト『The Lowe Post』の最近のエピソードで、ジェイレン・ウィリアムズとギディーの知能を絶賛している。

特別なタイプの選手でなければギディーのようにコートを見ることはできない。

ほかの選手がボールが通る直線しか見ていないのに対して、彼は、立体を通り抜ける対角線や鈍角、ワームホール(離れた2点間を結びつけるトンネルのような時空構造)を見ているのである。

次にサンダーの試合を見るときは、表面下に隠れたもっと奥に目を向けてみてほしい。そこには、次に繰り出すパスを考えているギディーがいるはずだ。

原文:Josh Giddey is NBA's bounce pass king: How Thunder guard expertly uses one of basketball's oldest weapons
翻訳:YOKO B Twitter:@yoko_okc

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Stephen Noh

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.