なぜエンビードのパスは向上? ナースHCの手腕が見える76ersのプレイを分析

Scott Rafferty

坂東実藍 Miran Bando

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最近のジョエル・エンビードは、彼にしては非常に珍しいことをしている。

フィラデルフィア・76ersがロサンゼルス・レイカーズに勝利した11月29日(日本時間30日)の試合で、エンビードは通算6回目となるトリプルダブルを達成した。普段のように30得点、11リバウンドを記録したのに加え、試合最多の11アシストもマークしたのだ。エンビードにとってはNBAで自身2番目に多いアシスト数となった。

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最初から最後まで支配的なパフォーマンスを見せたエンビードだが、いくつかの理由から特に目立ったのが第3クォーターの一連の流れだ。

🎥 プレイ

✏️ 分析

相手のショットが決まらず、リバウンドを拾ったエンビードは、自らボールをフロントコートに運ぶ。

この時、コートにいたチームメイトは、タイリース・マクシー、ディアンソニー・メルトン、ニコラ・バトゥーム、トバイアス・ハリス。優れた3ポイントシューターたちだ。この4人はすぐに3ポイントラインに走り、エンビードのためにフロアを広げてスペースをつくる。

Joel Embiid No. 1
(NBA.com)

エンビードは1on1からのスコアラーとして卓越している。『NBA.com』によると、昨季のアイソレーションからの得点は、ルカ・ドンチッチとシェイ・ギルジャス・アレクサンダーに続く3位だった。そしてエンビードは非常に効果的だった。

アンソニー・デイビスはNBA有数のディフェンダーだ。だが、サイズではエンビードが上回る。この特殊な試合において、エンビードはデイビスを苦しめた。トラッキングデータによれば、デイビスが守った時のエンビードは、フィールドゴール12本中8本成功で30得点中22得点をあげている。

レイカーズはデイビスを助けようと、トーリアン・プリンスとディアンジェロ・ラッセルがエルボーにつけていた。

Joel Embiid No. 2
(NBA.com)

だが、片側でマクシーとハリスがまだポジションを取ろうとしていた一方で、逆サイドではメルトンがワイドオープンになる。

エンビードはメルトンにシンプルなパスを出す。そして、通算3ポイントショット成功率37.3%のメルトンはショットを沈めた。

Joel Embiid No. 3
(NBA.com)

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🤔 重要性

76ersは次のポゼッションでもまったく同じことをした。この時もメルトンのディフェンダーがエンビードの対応に向かい、再びエンビードがオープンな3Pをお膳立てしている。

壊れていないなら、直す必要はない。

76ersは3回連続で同じプレイを狙った。唯一違ったのは、レイカーズがあえてメルトンのマークを外さずにヘルプをしなかったことだ。その結果、エンビードにはデイビスに1on1を仕掛けるスペースが生まれた。

そして結局、エンビードはアシストを記録する。ボールウォッチャーとなったプリンスの裏を突いたのだ。

76ersはさらにこのプレイを続け、エンビードがフリースローを獲得している。

手の込んだことをしたわけではない。だが、ニック・ナース・ヘッドコーチが就任してから植えつけてきた小さな変更の一部、エンビードに対する影響がうかがえる場面だった。

ジェームズ・ハーデンが退団し、76ersはエンビードを通じた攻撃を増やしている。支配的なスコアラーであることは変わりないが、今季のエンビードはパスが自己最多だ。アシストは昨季の4.2から6.6に増えた。

出場時にチームメイトのFGをアシストした割合を示すアシスト率で、エンビードはレブロン・ジェームズ、ギルジャス・アレクサンダー、ハーデンといった選手たちを上回っている。

ダニュエル・ハウスJr.は、エンビードについて「これまでの彼も喜んでパスを出してきたけど、今季は本当にその役割に積極的だ」と話した。

ただ、エンビードの向上はその積極性だけが理由ではない。

まず、エンビードはペリメーターでボールを持つことが増えた。すべてのパスが紹介してきたプレイのようにシンプルなわけではない。だが、こういった状況では、ポストでのプレイより、ダブルチームを読むのが簡単になる(『The Ringer』のマイケル・ピーニャ記者が報じたように、エンビードはポストでダブルチームされると、パスではなく得点を狙いにいく傾向にある。そして結果は素晴らしいもkのではなかった)。

そして、現在の76ersはオフボールではるかにアクティブになった。NBA.comによれば、ナースHCになり、ハンドオフの回数が2倍以上に増えている。カッティングも昨季より増えた。そうして動きが増え、突っ立っていることが減り、現ロスターの強みとなっているのだ。

そういったパスを出すには、大きな信頼が必要となる。だが、長期的にエンビードが恩恵を受けるのは明白だ。非常に支配的なスコアラーだけに、ボールをコントロールしていると、常に複数のディフェンダーの注意を引きつける。

以前は、ダブルチームやトリプルチームでエンビードからボールを奪おうとするのがマシだった。だが、エンビードが正しく状況を読むことに相手チームが気をつけなければいけなくなれば、エンビードは自分が得意とすることをやりやすくなるはずだ。

マクシーは「彼には得点をあげる助けとなる味方が必要だ」と話している。

「彼にはスペースをつくってくれる選手が必要なんだよ。そして彼がみんなを信頼しているから、より多くのチャンスにつながるだろう」

原文:Joel Embiid's improved passing in one play: How Nick Nurse has turned 76ers star into triple-double threat(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Scott Rafferty is an experienced NBA journalist who first started writing for The Sporting News in 2017. There are few things he appreciates more than a Nikola Jokic no-look pass, Klay Thompson heat check or Giannis Antetokounmpo eurostep. He's a member of the NBA Global team.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。