最高のジミー・バトラーが戻ってきたヒート 好調3Pもプレイオフで危険な武器に

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

最高のジミー・バトラーが戻ってきたヒート 好調3Pもプレイオフで危険な武器に image

NBAファイナルに進出したチームから、重要なスターターの2選手を失った。代わりとなったのは、
新人や見捨てられた選手たち。リーグのほかのチームなら、一歩後退になると見られるはずだ。

しかし、ここで取り上げるのはマイアミ・ヒートだ。彼らは常に道を見つける。

今季前半戦は、新たな人材とケガの問題に対して調整することになった。スターティングラインナップの組み合わせは31にのぼり、これは今季のボストン・セルティックスとミルウォーキー・バックスを合計した数字をも上回る。

しかし、その混乱の中でも、ヒートは昨季以上だった。35勝29敗という成績は、昨季同時期の33勝31敗を上回っている。そして彼らはこれまで、プレイオフでのシード順が自分たちにとって重要でないことを証明してきた。昨季のヒートは1999年以来となる第8シードからのNBAファイナル進出を果たしている。

今月はじめ、ジミー・バトラーは『Five Reasons Sports』のブレイディ・ホーク記者に、「第8シードだろうが、7だろうが、6でも、5、4、3、2、1でも気にしない。僕らは気にしないんだ」と話した。

現在、ヒートはイースタン・カンファレンスの8位。レギュラーシーズンが終わるまでに、最高で4位まで浮上するチャンスがある。1月31日(日本時間2月1日)以降の11勝6敗という成績や、残り日程が2番目に容易であることから、その可能性はあるだろう。

リーグのほかのチームにとってもっと脅威なのは、シーズン序盤はどこか静かだったバトラーに、再び火がつき始めていることだ。「プレイオフ・ジミー」は、リーグのどのチームにも恐怖を与えるだろう。34歳という年齢ながら、バトラーはリーグ最高の選手のひとりという地位を保っている。

 

ジミー・バトラーは攻撃でなお絶頂期

バトラーが3ポイントショットを主要な武器としたことはない。マーケット大学での1年目は、シーズンを通じて3P試投が1本だけだった(そして外している)。NBA入りしてからは、何シーズンかまずまずの出来だったが、今季を迎えるまでヒートでは3P成功率26.6%にとどまっていたのだ。

それを考えれば、今季の42.5%という数字は驚きだ。突然の向上ぶりについて、バトラーは報道陣にこう説明している。

「可能な3Pを全部打ちたければ、本当に良い確率で打てると思うよ。ただ僕は、ペイント内に走り込み、相手にぶつかっていき、どちらが先に倒れるかを見たいんだ」

そしてバトラーは肉体的なキレも保っている。1試合平均のフリースロー試投8.1本はリーグ5位。ドライブではリーグ13位の数字を記録している。自分の好きなスポットに押し込むことに関して、彼よりも優れた選手はおそらくいないだろう。バトラーは毎年、その能力を生かしてクラッチショットを打っている。シカゴ・ブルズ戦で決勝点となったステップバックジャンパーもそのひとつだ。

ジミー・バトラーとヒートは守備を強化

ヒートは守備で常に相手にとって厄介なチームだったが、今季は調子が悪いようだった。1月29日(同30日)のフェニックス・サンズ戦で118失点した際、バトラーは報道陣に「守れていない」と認めている。ヒートの守備はリーグ13位だ。

だがそれが、ヒートとバトラーにとってターニングポイントとなった。以降のヒートは守備でリーグ3位。大きなスキームや人材の変更があったわけではない。シンプルに、チームがより集中するようになった結果だ。ゾーンはよりシャープになったようだし、さらに頑張るようになった。エリック・スポールストラ・ヘッドコーチは様々な見せ方をする方法を常に見いだす。

また、バトラーは相手の攻撃の起点に対してプレッシャーをかける点でも良くなった。

これまでのキャリアで、バトラーはオールディフェンシブチームに5回選出されている。すべてのポゼッションでそれだけのことをすることは、もうできない。しかし、試合がタイトになった時、彼が強力なディフェンダーとなることは変わらないのだ。

ジミー・バトラーにかつてないほど周囲の助け

バトラーがプレイしてきた中で、今のヒートは最も才能のあるチームではない。だが、最もバランスのとれたチームかもしれない。

バトラーのユーセージ率は24.7%と、ヒートに加入してから最も低い数字だ。チームが行う様々なことの多くのエンジンであることは変わらない。だが、バム・アデバヨのハンドオフが増え、ハイメ・ハケスJr.がポストでもっと多くをつくり、シューターたちにボールが回っている。

ヒートには、1試合平均のフィールドゴール試投8本超の選手が8人いる。セルティックスとナゲッツは5人だけだ。ヒートほど多くの選手が貢献しているチームはないのである。

アイデンティティーを見いだすのに、ヒートは少し時間がかかった。だが今、何が機能するかを彼らは見いだしている。プレイオフでリーグにおいて最も危険なチームのひとつになるべく、学んだことを生かしていくだろう。

バトラーはことし、『Bleacher Report』のクリス・ヘインズ記者に「シーズンを通じて手にしているいくつかのことを保つんだ」と話している。

「今、相手にすべてを見せることはできない。常にみんなに推測させなければいけないんだ」

現在の順位にだまされてはいけない。ヒートはリーグ最高の指導者、バトラーというオールNBA級の選手、アデバヨという年間最優秀守備選手賞のダークホース候補を擁するチームだ。彼らを軽んじるのは間違いだと何度も示してきたチームである。今季もそれは変わらないだろう。

原文:Prime Jimmy Butler is back for the Heat, and he's added a killer 3-point shot to his dangerous playoff arsenal(抄訳)
翻訳:坂東実藍

Stephen Noh

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。