【NBAダンサーへの挑戦 Vol.4】大西真菜美インタビュー「人生は一度きり、自分の感情に従えば道は開ける」

YOKO B

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大西真菜美

2021-22シーズンはNBAダンサーとして活躍する日本人女性が過去最多の5人となった。ベテランの平田恵衣(オクラホマシティ・サンダー)と寺田智美(クリーブランド・キャバリアーズ)に加え、今シーズンからは新たに、小笠原礼子(デトロイト・ピストンズ)、渡辺あんず(デンバー・ナゲッツ)、大西真菜美(アトランタ・ホークス)の3人がアメリカに渡り、夢の舞台に立っている。
 
夢を叶えた日本人NBAダンサーに焦点を当て、彼女たちのNBAへの挑戦について話を聞くシリーズの第4弾は、今シーズンからアトランタ・ホークス・ダンサーズの一員として活動する大西真菜美(以下、マナミ)の挑戦を紹介する。
 
子供の頃からバレエやジャズダンスを習っていたマナミは、高校でチアリーディングの強豪校に進学。日本一を獲り続ける名門校でキャプテンを務め、追われるプレッシャーと戦いながら全国優勝を果たす。さらに大学ではチアリーディングの日本代表メンバーにキャプテンとして抜擢されて世界大会で優勝。チアリーディングのエリートコースを歩んできた。

そんな彼女がアメリカ挑戦を意識し始めたのは、社会人になって応援チアという新しい世界に飛び込み、勉強のためにアメリカのチアリーダーをチェックしたときだという。ずっとアメリカンフットボールに親しんでいたこともあり、自然とNFLのチアリーダーへの挑戦を決意する。

2020年、NFLのチームに初挑戦したが、新型コロナウイルスの影響もあって思うような結果にならず。翌年、別のNFLのチームに挑戦するも不合格。ファイナリストから先へ進めなかった彼女はその後、不思議な縁でアトランタ・ホークス・ダンサーズの一員となった。

チアリーディングの世界からNBAダンサーになるまでの間、彼女は出会った相手のエナジーから感じる自分の気持ちを大切にし、進む道を『人』で決めてきた。念願だったアメリカの舞台に立つ彼女に、アメリカ挑戦のきっかけや苦労、NBAダンサーになって感じていることやこれから夢に挑戦する人へのメッセージなどを聞いた。

自信を取り戻すために応援チアに飛び込んだのが始まり

──アメリカに挑戦しようと思ったきっかけを教えてください。

チアリーディングで力を出し切ったと感じて大学卒業と同時に引退したんですが、社会人1年目のときにチアリーディングがなくなった私はなんだか私じゃないみたいだと感じ始めてたんですね。

私がチアリーディングをやっている間、ずっと勉強してきていた人たちが周りにいて、その人たちを見て、私は今まで何をしてきたんだろうって思い始めて…。そんな自分が嫌になって、『チアをやってて良かった』ってもう一度自信を持って言えるようになるためにはチアの世界に戻るしかないと思って、ガンバ大阪(Jリーグ)の応援チアのチームに入りました。

でも、チアリーディングと応援チアは、踊り方や身体の作り方とかが全然違うんです。だから、チアリーダーや応援チアのことをもっと勉強しないといけないと思って、インスタグラムなどで本場アメリカのチアリーダーをチェックしたら、日本ではマイナーなチアリーダーが、スポーツの規模が大きいアメリカでは全く違うものみたいですごくかっこよかったんですね。

憧れの先輩から話を聞いた翌日には会社を辞めると決めた

ちょうどその頃に、元NFLチアリーダーだったガンバ大阪の先輩とお会いできて、なかなか口にできなかったアメリカ挑戦のことを話したら「お金が貯まったらとか英語力がついたらとか考えずに、思い立ったらすぐ行動すべき」って後押ししてくれたんです。

彼女のいたチーム(NFLのインディアナポリス・コルツ)についてもいろいろ教えていただいたんですが、彼女の性格もすべて好きだったので、その人間性を形成したチームはきっと良いチームなんだろうなって思ったんです。それで、コルツを受けようって決めて、彼女から話を聞いた翌日には会社に辞めるって言いました。

──決断と実行が早いですね。

そうなんです。その日の夜には両親にもアメリカ挑戦のプレゼンテーションをして、OKをもらいました。実は過去にも1度プレゼンをしているんですが、そのときは考えが甘くて話にならなかったので、そのときは、資金面、就労ビザ取得のプロセス、オーディションやシーズンのスケジュールなども全部準備して臨みましたね。

クラウドファンディング実施でアメリカ挑戦がサポーターとの約束に

──オーディションや渡米の準備で特に苦労したことはありますか?

最初のNFL挑戦のときは、合格することと就労ビザ取得のことしか考えていなくて、後のことはなんとかなると思っていたので、ダンススキルや身体づくりのことばかり追求していました。でも、後で周りから話を聞いてみたら、インタビューのためにはもっと英語力が必要だし、資金面の準備も必要だと思い直したんです。

英語はオンラインレッスンを毎日受けるようにしましたが、資金面はかなり悩みました。結局、そのときの私にベストの選択肢だと思って、クラウドファンディングを始めることにしたんですが、それが私にとってはかなりの挑戦ではありましたね。

クラウドファンディングでは、いろんな方からサポートしていただいて、そのリターンもしないといけないので、それがちゃんと間に合うかとか、「絶対に合格します」って宣言しているのに中途半端な結果に終わったらどうしようかとか、すごく心配になりました。

アメリカへの挑戦が自分だけのものではなくて、サポートしてくださる方との約束にもなるので、そういう意味でも私にとって勇気が要る決断でしたね。でも結果的には成功しましたし、良かったと思います。

チーム選びの決め手は『人』

──最初の挑戦では夢が叶いませんでしが、次の挑戦まではどうしていましたか?

仕事も辞めていたのでどうしようかと思ったんですが、ご縁があってワークショップへの参加の声をかけていただいた滋賀レイクスターズ(Bリーグ)のダンスチームに入りました。

そこに決めたのは、ディレクターの方の性格がかっこよくて惚れた部分があったのと、その方も元NBAダンサーなので、直接レッスンを受けられたらダンススキルが鍛えられると思ったのが大きいですね。

翌年の春には今度はNFLのカンザスシティ・チーフスを受けることにしたんですが、そこに決めたのも、チーフスのディレクターの人柄に惚れ込んだからでした。オンラインでチームの話をしている彼女が本当に熱意の塊みたいな人で、『この人のもとで踊りたい』って思ったんです。

チーフス一筋だったので、ファイナルまで行って不合格の通知をもらったときは本当に悲しくて号泣しましたし、ほかのチームに行ってもずっと引きずるから、また来年チーフスを受けるんだってちょっと頑なに思っていたところがあって。

そしたら、ほかのNFLチアリーダーの方に「今まで頑張ってきたんだから、ここで諦めて日本に帰らずにほかのチームも受けてみたら?」って言われて、もう少し残ってやってみようと思いました。

大西真菜美 アトランタ・ホークス・ダンサーズ/Manami Onishi Atlanta Hawks Dancers
Scott Cunningham

NBAダンサーではなく、ホークス・ダンサーになりたかった

──最終的にはNBAダンサーになりましたが、NFLからNBAに切り替えたのには理由があったんですか?

実はNBAダンサーになったのは巡り合わせというか、本当に偶然なんですよ。

チーフスに不合格になってから日本に帰国するときの経由地がアトランタだったんですね。そこでちょうど受けたいと思ったワークショップがあって、NFLのアトランタ・ファルコンズのオーディションのプレップクラスにも参加できるタイミングだったのでアトランタに滞在することにしたんです。

その2回目のプレップクラスのときにファルコンズの最終オーディションに参加できる権利をもらえたので、もっとダンススキルを磨きたくて、NFLチアリーダーやNBAダンサーが通うダンススタジオに行き始めたんですが、そのダンススタジオが現役ホークスダンサーから直接ダンスを学べるところだったんですね。

そのスタジオでみんなと一緒にダンスを学んでいるうちに、『自分にとって先生でもあり、憧れでもある人とチームメイトになれたら楽しいだろうな。この人たちと同じチームで踊りたいな』って思うようになりました。

結局、ファルコンズが不合格に終わって、オーディション当日は身体的にも精神的にも疲れていましたが、ホークスのオーディションのためのダンス動画提出期限もその日で、迷った挙句、やっぱり彼女たちと踊りたいと思って、そこからダンスを必死で覚えて動画を提出したんです。

そしたら二次も通過して、最終的にホークス・ダンサーになることができました。だから私の場合は、NBAダンサーになりたかったのではなくて、ホークス・ダンサーになりたかったというほうが正しいのかもしれません。

確かに最初はNFLチアリーダーになりたかったんです。でも、アトランタで現役ホークス・ダンサーからダンスを学んで、一緒に踊りたくなったのが大きいです。このときも、私にとって決め手になっているのは、やっぱり『人』なんだなって思いますね。

自分のスタイルを知り、自分に合うチームを探すことが大事

ひとつ追加しておきたいのは、NFLチアリーダーに受からなかったのにNBAダンサーに受かるってことは、NFLチアリーダーのほうがレベルが上なんじゃないかって言われることがありますが、私はNFLチアリーダーとNBAダンサーは全く別のものだと思うんですね。NBAダンサーは、チアリーダーではなくて完全にダンサーなんです。

NFLとNBAの両方のオーディションを受けて私が感じたのは、 NFLチアリーダーに求められるのは、ジャズを含むバレエ要素や、自分を綺麗に見せるアピアランス要素なんです。たとえば、横顔の見せ方の美しさ、ひとつひとつの動きのエレガンスさなどが評価に繋がると思います。

でも、私の場合はパワフルさとか力強いスタイルを強みにしていたので、NBAのほうが伸びしろがあるというか、強みを生かしやすいと思うんです。自分のキャラや踊り方、体型などを考えたら、私にはNBAダンサーのほうが合ってたんですよね。

NBAではダンスのジャンルが幅広くていろいろなダンスが踊れますし、特にホークス・ダンサーズの場合は、毎試合ダンスの振り付けが違うのでたくさんの経験ができます。毎回違うダンスを覚えるのは大変ですが、別の言い方をすれば学ぶことも多い。私はこのスタイルがすごく好きなんですね。

だから、自分のスタイルを知って、そこに合うチームを探すことって大事だなと思います。私はNFLとNBAの両方の経験ができて良かったと思うし、ホークスのチームに出会えて良かったなと思っています。

──就労ビザの問題で渡米が遅れてシーズン開幕には間に合わなかったと思うのですが、その間はどんな気持ちでしたか?

早く行きたいのに、このままシーズンが終わったらどうしようってかなり焦っていましたね。ビザのプロセスも書類に不備があって却下されたら申請料を払ってやり直しだし、そしたらさらに遅れてしまう可能性もあって、不安でしかなかったです。

でも、救いだったのは週2回のチームの練習をオンラインで受けられたことです。どうしても受けたいってチーム側に伝えたら、受けさせてもらえたんですね。オンラインでダンスを学んだり、今ルームシェアしている一番仲の良い同じルーキーの子とやり取りしたりできたのは良かったですね。

夢の舞台で大好きな人たちと一緒に踊れた最高の瞬間

──ホークス・ダンサーズの一員としてデビューしたときの気持ちを覚えていますか?

12月5日の試合だったんですが、『ついに来た!』っていう感じでしたね。ずっとインスタグラムとかのSNSで見ていたあの景色が自分の目の前に広がっていて、リハーサル中から夢のようで、本当に感極まりました。しかも大好きな人たちと一緒に踊れるっていうのがもう本当に最高の瞬間でしたね。

渡米直後に練習に参加したときにも、チームメイトからハグしてもらって「おかえり!」って言ってもらえた瞬間もすごく嬉しくかったです。しかも、渡米前にビデオメッセージももらっていて、会いたい気持ちが高まっていたところだったのでなおさらでした。

そのときの練習でみんなで合わせたダンスを、私のデビューの試合でみんなでパフォーマンスしたので、やっと一緒に踊れたことがもう最高に嬉しかったですね。

──マナミさんの今シーズンのホークス・ダンサーとしての仕事を教えてください。

ホークス・ダンサーの仕事としては、試合中のパフォーマンスとコミュニティーアピアランス(地域貢献活動)です。

ただ、今はコロナの影響で全員がすべての試合に出れるわけではなくて、チームが4グループに分けられてローテーションで試合に参加するので、パフォーマンスの機会は思ったより少ないですね。試合自体に行かないので収入もその分減ってしまうのと、何より私自身の経験という意味で機会が減っているのが残念です。

アピアランスは結構あると思います。 私自身はまだ2回くらいしか経験がないのですが、それはまだ私がルーキーだからかもしれません。学校でダンスを教えるイベントがあったり、表彰式に参加したり、マラソンイベントに行ったりしていますね。

お客様とのコミュニケーションは嬉しいと同時に大変でもある

──やりがいや喜びを感じるのはどんなときですか。

日本人の方が会場に来てくださって、声をかけてもらえるとやっぱり嬉しいですね。

この前の私のレギュラーシーズン最後の試合で日本人の方がたまたま通りがかって、声をかけていただいたんです。その方は別に私が目的で来ていたわけではないですが、でも、ホークスの試合に日本人のファンがいること自体が嬉しいです。

ほかにも、アジア系のお客様が、アジア系の私に写真撮ってくれますかとか声をかけてくださることが結構あって、それがすごく嬉しいですね。ホークス・ダンサーでアジア系は私1人ですし、私がいる意味があるんだと感じる瞬間だったりします。

──NBAダンサーとして活動していて大変だと感じることは?

今は、英語でお客様とコミュニケーションを取ることが大変だと感じますね。

チームメイトとだったら、言語の壁があることや私の性格もある程度わかってもらえているので、私がよくわからないことを言ったとしても、こういうことを言いたいんだろうなって汲んでもらえますが、でも、お客様の場合はそうはいかないですよね。

たとえば、タイムアウト中にお客様と一緒にダンスを踊るときに質問されたりすると、どうしようって思いますし、誕生日の方にプレゼントを渡したり、なにかの賞を渡したりするときなどには、「おめでとう!」の次の言葉が出てこないことはよくあります。

英語自体は、聞くほうは良くなっている気がするんですが、話すほうはまだ混乱することがあるので、引き続きオンライン英会話を頑張ろうと思っています。あとは、もっと英語圏のコミュニティーの中に入っていきたいと思ってるところです。

大西真菜美 アトランタ・ホークス・ダンサーズ/Manami Onishi Atlanta Hawks Dancers
Chenise Johnson

英語のコミュニケーションでも自然体でいることを忘れてはいけない

──これまでの経験を通して学んだことは?

ひとつには、英語はやっぱりコミュニケーションのツールだってことですね。

最初は、英語が話せないから勇気が出なくて、モジモジしちゃってたところがあったんですね。みんなの会話に入れずに、ひたすら聞き役になっていて、そこにいるのにいない存在みたいな状態で、様子をうかがいすぎて、性格が変わってしまったと感じたくらいでした。

それでちょっと精神的に病んでしまって、私のことをよく理解してくれている日本の友達に「アメリカ合わへんのかも。もう、今シーズンで終わりにして帰るかもしれへん」って電話したことがあるんです。

でも、そのときに思っていることを思いっきり吐き出したら自分の中で何かがすっきりして、次の日には『人生は冒険なんだから、自分のやりたいようにやろう』って気持ちを切り替えられたんです。

それ以降、私が伝えたいように物事を伝えるようにしたら、チームメイトからの反応が思ったよりもっとオープンに返ってきて、それからはもう誰とでも楽に話せるというか、前とはもっと違う関係ができた感じで居心地が良くなりましたね。

前はたぶん、私がいろいろ気にし過ぎてお互いに様子見している状態で、私がどんな人か全然伝わってなかったんだと思います。それを、いつも通りの自然体のままで、私から明るく接するように変えたら、向こうからも話しかけてくれるようになって。コミュニケーションにおいては英語はあくまでもツールで、それ以上に自分らしく自然体でいることが大切だと学びました。

アメリカ人の堂々とした姿や積極性に驚いた

もうひとつ、アメリカのチアリーダーやダンサーの人たちを見て私が驚いたのは、彼女たちの積極的なところです。

日本人のダンサーは、パフォーマンスではスイッチが入って少し変わりはしますが、それでもやっぱり、アメリカ人に比べたら性格的にシャイだと思うんですよ。たとえば、オーディションの前に何か質問があるか聞かれても、みんなの前で質問せずに後でこっそり聞きに行ったりしますよね。

でも、アメリカ人は堂々と手を挙げてわからないことをはっきり言うし、自分の思うがままに発言する。それは見ていてすごいなと思うし、そうでありたいなって思うところでもあります。私も今では何かわからないことがあれば堂々と聞けるようになってきました。

──今シーズン、NBAダンサーとして日本人女性が5人活躍していることについてはどう思いますか?

すごく心強く感じています。 『あの人も頑張ってるから私ももっと頑張らないと』って思うので、良い意味で後押ししてもらっているというか、励みになっています。 

でも、その分負けられないっていう気持ちもありますね。ベテランのお二人は別ですが、ほかの3人は同じタイミングで渡米したので、自分の色を出していかないと埋もれてしまう気がするんですね。私の経験を通して日本の方々にメッセージをお伝えするうえで、みんなと同じではダメだなと感じています。

自分の色をどう出すかはまだ模索中ですが、私の性格的には元気いっぱいなのが自分らしいと思うので、かしこまった発信よりも、明るく元気な雰囲気をSNSでも出していけたらいいかなとは思ってはいます。

自分を成長させてくれたチアリーディングの世界に恩返しがしたい

──マナミさんが伝えたいメッセージは具体的にはどんなことですか?

チアリーディングをやっている人の励みになりたいというのがまず一番ですね。

私はチアリーディングからダンサーにシフトチェンジしましたが、 この2つはダンススタイルも身体づくりも全然違うんです。チアリーディングでは私はずっと下で支える役割だったので身体を鍛えていて体格が良かったんですね。それを、ダンサーになるためにちょっとずつ変えていったんですが、当時は『私には無理』って私も思っていました。

大学までチアリーディングで一生懸命頑張ってきて、社会人になった途端にプツンって切れてしまう人もすごく多くて、でもやっぱり、ほとんどの人がチアリーディングから応援チアダンスに行くのは無理だと思って、何もせず諦めてしまうんですよね。

そういう人たちに、シフトチェンジは可能だって伝えたいんです。私の挑戦を通して『私もやってみたらできたから、大丈夫、あなたもできるよ』ってメッセージを送って、彼女たちの励みになれたらと思っています。

チアリーディングをしている人たちの中には、私と同じように、ダンスが大好きだったり得意だったりする子がたくさんいます。だから、ここまでたどり着いた私が、その子たちのための今後の道を作っていきたい。それは最初からずっと思っていることです。

チアリーディングの世界は、考え方を含めてすべてにおいて私を成長させてくれたので、そこにはなんらかの形で恩返ししたいですし、良い影響を与えていきたいですね。

リスクだけじゃなく自分の感情についても思いを巡らせて

そのほかの方々に対しては、私の経験を通してワクワク感が伝わって、それがモチベーションにつながればいいなと思います。

何かにチャレンジしようとするときって、リスクを考えて行動できなくなることがあると思うんです。でも、人生は一度きり。そこで挑戦しなかったら、死ぬ直前に『あのときに挑戦していたらどうなっていたかな』って考えてしまうかもしれない。

だから、チャレンジするときには、リスクだけじゃなく、その後の自分の感情についても思いを巡らせてほしいですね。怖いとは思うんですが、恐れずチャレンジしてもらいたいなって思います。

アメリカに対して憧れを抱いてる人も多いと思うんですけど、憧れを憧れだけで終わらせずに行動に移せるように、そういう方たちに向けてもワクワク感を発信できたらと思います。

たとえば、私は過去に旅行会社に勤めていたこともあって観光系が好きなので、気軽にアメリカに行けない今だからこそ、行った気分になれるような、観光とスポーツを合わせたようなものをYouTubeなどで発信していけたらとも思っています。

ポジティブなエナジーを発信できる存在になりたい

──確かにマナミさんは、YouTubeなどのSNSで積極的に発信していますね。発信する内容で意識していることはあるんですか?

ありますね。SNSを通してワクワク感をお伝えしたいので、日本にいる方にとっては非日常になるような内容を届けられたらと思っています。

ほかには、ポジティブなエナジーを発信していきたいと思っているので、まずは私自身がポジティブなエナジーを出す素晴らしい存在になりたいんですね。

まさに今のホークス・ダンサーズのメンバーがそうなんですが、みんなキラキラしていて、性格が本当に素晴らしくて、見ていて気持ちよくて。レスポンスの仕方や表情などもすべてにおいて尊敬できるので、そういうところを私ももっと吸収していきたいです。

そして、それを日本に持ち帰って、どういう形かはわからないですけど、チアリーダーやダンサーの人たちに伝えられたらいいなとも思っています。それまでは、アメリカからできるだけポジティブなエナジーを発信していこうと思うので、ぜひ私のSNSとYouTubeをチェックしていただけたら嬉しいですね。

感情のおもむくままに行動して、後から考えても大丈夫

──アメリカでチアリーダーやダンサーを目指す後輩へのアドバイスはありますか?

一番には、自分の感情に従ったほうがいいと伝えたいです。

諦めなくてはいけない理由を挙げるとなかなか挑戦できなくなると思うんですよ。だから、私みたいに感情のおもむくままに行動して、後から考えるのもありだと思うんです。私のやり方が正解とは言えないし、クリアすべきことを全部書き出して全部準備してから行くのも、それはそれで人それぞれで全然いいんですが。

ただ、自分がやろうと思っていることと同じような経験をしてきた人たちの意見を事前に聞いて、知識として持っておくことは必要かなと思います。私も、必要な情報はいろんな人から事前に教えてもらいました。

ネットで調べれば情報は出てきますが、ネットの情報って必ずしもチアリーダー向きではなかったり、ちょっと古かったり、確実ではなかったりするんですよね。でも、経験者の話は確実ですし、同じ状況を踏まえているので説得力もあります。

私がこの前、レイコさん(小笠原礼子|参照記事)とオンラインでの質疑応答会を企画したのも、経験者から情報を得たい人たちが聞きやすい環境を作りたかったのがひとつの理由なんですね。実際にその後、気楽に質問の連絡が来るようになりましたし。

だから、感情に従って行動してみて、やってみてわからないことが出てきたら自分で調べて、チャンスがあったら周りの経験者に聞くっていう、そういうやり方でもいいんじゃないかと思うんです。

目の前のことを深刻に考え過ぎずに視野を広く持って

もうひとつは、良いときも悪いときも、とにかく目の前のことだけにフォーカスし続けるのではなく、視野を広げて大きく捉えることが大事だと思います。

アメリカでの挑戦って良いときばかりではなくて、良いときの前にはあまり良くない流れが来ているときがあると思うんです。私がそういうときによく考えるようにしてたのが、『これは人生のほんの一部なんだ』ってことでした。

今目の前で起きていることばかりを考えてしまうとつらくなることもあると思いますが、でも、それは本当に人生の経験における一部でしかなくて、それも含めてすべてが良い経験なんだって捉えることが大事だと思うんです。

だから、これからオーディションを受けようと考えてる人や何かに挑戦したいと思っている人は、目の前のことを深刻に考え過ぎないようにとも伝えたいし、今起きていることが自分の人生のすべてではないってことを覚えておいてほしいですね。

私はこうしてNBAダンサーになることができましたが、でも、これだけが私の人生ではなくて、これ以降ももっと成長し続けたいですし、ここで満足はしたくないなって思っています。


大西真菜美(おおにし まなみ)プロフィール:

兵庫県出身。高校からチアリーディングを始め、チアリーディングの名門校に入学。キャプテンとして全国優勝を果たす。大学在学中にはチアリーディングの日本代表メンバーにキャプテンとして選抜され、世界大会にて世界一のタイトルを獲得。卒業後、Jリーグ ガンバ大阪チアダンスチームとして活動を開始。NFLインディアナポリス・コルツのチアリーダーのオーディションのために2020年に渡米するが、新型コロナウイルスの影響で帰国。オンラインでオーディションに参加し、ファイナリストになるが一歩及ばず。2020年Bリーグ 滋賀レイクスターズでレイクスチアリーダーズとして活動を開始。2021年に再度渡米し、3チームのオーディションでファイナリストに選ばれる。2021年NBAアトランタ・ホークス・ダンサーズに合格。現在はYouTuberやチアリーディングの振付師としても活動中。
Instagram: @manamii_n330

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。