【NBAトレード評価】76ersとクリッパーズによるハーデンのトレードをどう見るか

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

【NBAトレード評価】76ersとクリッパーズによるハーデンのトレードをどう見るか image

誰もが待っていたトレードが実現した。

ジェームズ・ハーデンがようやく望んでいたチーム、ロサンゼルス・クリッパーズに向かうことになったのだ。『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者が10月31日に枠組みを報道。『The Athletic』のシャムズ・シャラニア記者によると、オクラホマシティ・サンダーのドラフト指名権も組み込まれたという。

[AD] NBAがWOWOWに帰ってきた!毎週7試合ライブ配信、注目の5試合を実況・解説付きで生中継!

ここでは、それぞれのチームに関して今回のトレードを評価する。

ジェームズ・ハーデンのトレード内容

76ers獲得

  • マーカス・モリス
  • ニコラ・バトゥーム
  • ロバート・コビントン
  • ケニオン・マーティンJr.
  • 2026年のクリッパーズのドラフト1巡目指名権(サンダー経由)
  • 2028年のクリッパーズのドラフト1巡目指名権(保護条件なし)
  • 2029年のドラフト1巡目指名権交換権
  • 2024年と2029年のドラフト2巡目指名権

クリッパーズ獲得

  • ジェームズ・ハーデン
  • PJ・タッカー
  • フィリップ・ペトゥルシェフ

サンダー獲得

  • 2027年のクリッパーズとのドラフト指名権交換権

76ersの評価

ハーデンの市場は完全に枯渇していたため、76ersは厳しい立場にあった。クリッパーズ以外にほとんどハーデンに関心を抱く球団はなかったのだ。テレンス・マンという狙っていた選手を獲得するには至らなかったが、今回のトレードは76ersが前進する助けとなる。

まず何よりも、76ersにとってこれは失うことで得をする取引だ。要求したトレードの実現が長引いた際にこれまでハーデンがやってきたような、集中を欠くリスクがなくなる。そしてハーデン不在の中、タイリース・マクシーは開幕3試合で平均30.3得点、6.7リバウンド、6.3アシストと爆発した。

ハーデン放出でマクシーは新たな役割で活躍を続けられる。そして76ersはニック・ナース・ヘッドコーチの下、もっと平等でより速いプレイを続けることができるのだ。

また、76ersは今季のチームの助けとなり、その後キャップスペースを空ける選手たちも獲得した。バトゥーム、モリス、コビントンはいずれもショット力でフロアを広げることができ、プレイオフの経験も積んでいるベテランたちだ。

3人の中ではコビントンがベストかもしれない。バスケットボール運営部代表のダリル・モーリーは、彼に親近感を抱いているようだ。モーリーが11年のキャリアでコビントンを獲得するのは、これが3回目となる。

76ersが獲得した選手の中で最も興味深いのがマーティンだ。来年の夏には制限つきフリーエージェントになる。ヒューストン・ロケッツ時代には、攻守両面で一定のポテンシャルを持った身体能力のあるウィングとして、本当に有望なところを見せていた。ウィークサイドのブロックができ、父親同様に素晴らしいプレイのフィニッシャーでもある。3ポイントショット成功率は33.8%と優れたシューターではないものの、キャリア初期の成功率はもっと高かった。

ドラフト指名権も悪くない。スター選手たちの年齢を考えれば、2026年と2028年のクリッパーズの指名権は、非常に良いチャンスとなるかもしれない。同じ理由で指名権交換権も本当に貴重だ。

ドラフト指名権や来年夏にキャップスペースを空けられる可能性も含め、76ersが獲得した資産は、今後さらなる動きを可能にするものだ。どちらかといえば、今回のトレードは次に続けていくための取引と思われる。

評価:B+

James Harden and Paul George
(Getty Images)

[AD] 楽天モバイル『最強プラン』なら追加料金なしでNBA全試合見放題!

クリッパーズの評価

ハーデンがチームにフィットするかどうかは少し分からないところがある。すぐに浮かぶ疑問は、ラッセル・ウェストブルックとどうなるかだ。ウェストブルックは昨季、大幅減俸に応じてチームに残り、良いプレイを見せた。だが、ハーデンとウェストブルックはすでに一緒にプレイした過去があり、どのようになるかを少し想像できる。

ハーデンとウェストブルックはいずれもボールを持つ必要がある選手だ。このことは、ロサンゼルス・レイカーズで不振だったウェストブルックの復活につながった良いフィット感を奪うことになる。引き続き主なボールハンドラーでいられるように、彼をベンチメンバーとするのが理にかなっているかもしれない。

ただ、これはうまく機能する可能性がある。ハーデンがファンタスティックなパサーであることは変わらない。昨季のアシスト王だ。クリッパーズはポール・ジョージとカワイ・レナードのアイソレーションへの依存度があまりに高い、ラフなスタイルのバスケットボールをしていた。両選手とも極めて才能あるスコアラーだが、全体としてはうまく生かされていない。

76ersでジョエル・エンビードに対してそうだったように、ハーデンはより優れた選手のために身を引くことを示してきた。クリッパーズでファシリエイターとしての役割を担い、味方がそれぞれ好むスポットでボールを持てるようにできる。そして76ers時代より周囲のショット力が優れているだけに、ハーデンはより危険なパサーとなるはずだ。

近年かなり衰えたものの、タッカーも役に立つだろう。守備はかつてのようではないが、まだ平均を上回る。オフェンシブリバウンドと3Pに優れ、ここ2シーズンの3P成功率は40.5%だ。ただ、その3Pをあまりに打とうとしないことが、相手チームにあえてガードしない策を取らせている。

今回のトレードはクリッパーズにとって、多くの選手がエゴを出すようになり、思いどおりにいかなくなる可能性もまずまずという取引だ。そして2027年から2029年にかけてうまくいかなければ、極めて大きな代償を払うことになるかもしれない。だが、いずれにしても、このチームはどこにも向かっていなかった。このトレードにより、これまでよりも優勝の可能性は増す。

評価:C+

サンダーの評価

サンダーはクリッパーズが2026年と2027年にロッタリーチームとなることに賭けている。それまでにレナード、ジョージ、ウェストブルック、ハーデンが全員いなくなるかもしれないだけに、悪くない勝負だ。たとえ彼らが残留しても、キャリアの終盤で現状のレベルにはないだろう。そしてクリッパーズにはそれらの間に再建するだけの資産はほとんどない。リーグ下位となる可能性は十分だ。

2026年のクリッパーズの指名権に保護条件をつけたことで、サンダーには大きな利点がある。上位指名権ならばそれを生かすだろう。そしてクリッパーズが下り坂なのに対してサンダーが上り坂にあるだろうことを考えれば、2027年の指名権交換権は別のロッタリーピックとなる可能性が高い。

見返りがあるかはしばらく分からない。まったく何にもならない可能性もある。だが、サンダーにとって、ドラフト上位指名権2つを得られるかもしれないという利点がある取引だ。

評価:A-

原文:James Harden trade grades: 76ers unleash Tyrese Maxey; Clippers take big risk for more championship equity(抄訳)
翻訳:坂東実藍

[AD] NBAがWOWOWに帰ってきた!毎週7試合ライブ配信、注目の5試合を実況・解説付きで生中継!

Stephen Noh

Stephen Noh Photo

Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

坂東実藍 Miran Bando

坂東実藍 Miran Bando Photo

フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。