ハーデンとウェストブルックはうまくいく? クリッパーズのコンビが機能する(しない)理由

Gilbert McGregor

坂東実藍 Miran Bando

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ロサンゼルス・クリッパーズが「三度目の正直」を信じているなら、ジェームズ・ハーデンとラッセル・ウェストブルックの新たなバックコートコンビを心強く思っているはずだ。

元MVPの両選手は、地元で再会する前に、オクラホマシティ・サンダーで3シーズンをともに過ごし、直近では2019-2020シーズンにヒューストン・ロケッツでチームメイトだった。一緒に戦ったレギュラーシーズンでの成績は196勝106敗。4シーズンいずれもプレイオフに進出し、2012年にはサンダーでNBAファイナルにも勝ち進んだ。

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お互いによく知っている彼らだが、今回はこれまでと大きく異なる。ハーデンは現在34歳。ウェストブルックはもうすぐ35歳になる。そしてポール・ジョージ、カワイ・レナードというクリッパーズのスター選手たちの後塵を拝することになるはずだ。

クリッパーズの中心となる4人は全員、ボールを持った時が最も攻撃で影響力を発揮する選手たちだ。それを踏まえると、攻撃において彼らがうまくいくかどうか、非常に当然の疑問が生じる。

ジェームズ・ハーデンとラッセル・ウェストブルックのコンビはうまくいくのか

ハーデンは11月6日(日本時間7日)のニューヨーク・ニックス戦でクリッパーズでのデビューを飾る予定だ。試合を前に、ハーデンとタロン・ルー・ヘッドコーチはニューヨークで報道陣に対応した。両者の会見から、チームがどのような計画でいるかをうかがえる。

両ガードの役割を問われると、ルーHCはコートに両選手がいる時は、ウェストブルックがポイントガードを務め、ハーデンはオフ・ザ・ボールでプレイすると話した。昨季アシスト王に輝くなど、近年のハーデンがNBA最高のポイントガードのひとりだったことを考えれば、これは注目の展開だ。

うまくいく理由

ハーデンにボールを持たせずに始めるという決断は、常識にそぐわないかもしれない。だが、ルーHCはある程度明確な論理的根拠を示している。

The Athletic』のロウ・マリー記者によると、ルーHCはウェストブルックをポイントガードにすることで、彼のマークに仕事をさせ続けられると話した。ウェストブルックの長所と弱みを考えれば、理にかなっている決定だ。

昨季、クリッパーズに加入して以降、ウェストブルックはキャッチ&シュートの3ポイントショットが69本中23本成功(33.3%)だった。ボールを持たずにプレイすれば、相手はヘルプを多用し、フロアを狭めてくるだろう。ジョージ、ハーデン、レナードにとってはより難しくなる。

フィラデルフィア・76ersでプレイしていた昨季、ハーデンは同じキャッチ&シュートの3Pで成功率41.5%を記録している。1試合平均1.8本と数は多くないが、相手を苦しめられる。

ウェストブルックをポイントガードにして始めるといっても、彼がそのポジションを独占するわけではない。ハーデンにスコアラーやアイソレーションからの配給役として強みを発揮する機会がないという意味でもない。そのあたりをうまくやるための道はある。ただ、簡単にはいかないだろう。

ハーデンとウェストブルックがそれぞれ歴代でも有数の選手であり、初のNBA優勝を目指しているという点は、彼らに有利に働くはずだ。優勝を追い求めているからこそ犠牲を払うのを厭わないということは少なくない。

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うまくいかない理由

両選手について懐疑的な意見として、匿名のあるスカウトは、The Athleticでこう述べている。

正直、(ハーデンは)どこで、どのチームでフィットできるのか分からない。クリッパーズに負傷者が出て、(レナードの)代役として起用すればうまくいくかもしれないね。だが私は、ここ数年(のハーデン)を見てきて、フィニッシュの力が以前と同じだとは思わない。うまくショットを打てていないんだ。ドライブの力も以前と違う。同じ選手じゃなくなっているんだ。そして彼が喜んで『配給役になるよ』と言うとは思わない。その点で彼はとても優れている。だが、喜んでその役割を担おうとするとは思わない。

クリッパーズのスターティングラインナップでウェストブルックがポイントガードになれば、ハーデンが完全に配給役の役割となるのは難しいだろう。スコアラーやドライバーとしてハーデンが下り坂にあるという意見からも、ボールがないところから活躍するのは難しい。

ハーデンとウェストブルックにとって、お互いにうまく調整するのは簡単ではないはずだ。だが、ジョージにレナードという、NBA最高のタレントたちとも一緒にやるために調整しなければいけないことを考えれば、もっと大変だ。彼らは4人ともユーセージ率が高い選手たちだからである。

2022-2023シーズンのユーセージ率
選手 ユーセージ率
ポール・ジョージ 29.4
カワイ・レナード 26.7
ジェームズ・ハーデン 24.7
ラッセル・ウェストブルック(クリッパーズ加入後) 24.2

このグループはトレーニングキャンプやプレシーズン戦でお互いに一緒にプレイする方法を学ぶことができなかった。レギュラーシーズン開幕から1週間が経ってからのトレードだったことで、やりながら学んでいくことになるのだ。

どれだけ起用できる状態でいられるかも重要となるだろう。主力選手が不在の際、ハーデンやウェストブルックがより大きな役割を担うことは十分可能だ。だが、ケミストリーを築いていく上では不利となる。

ウェスタン・カンファレンスは非常に競争が厳しい。その中で、クリッパーズはポストシーズンに向けて準備すべく、実質的に5か月で様々なことを解決していかなければならない。それは簡単なことではないだろう。

原文:Why Clippers' James Harden-Russell Westbrook backcourt experiment will — and won't — work(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Gilbert McGregor

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Gilbert McGregor first joined The Sporting News in 2018 as a content producer for Global editions of NBA.com. Before covering the game, McGregor played basketball collegiately at Wake Forest, graduating with a Communication degree in 2016. McGregor began covering the NBA during the 2017-18 season and has been on hand for a number of league events.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。