フィラデルフィア・76ersはオフシーズン中にドラマを経験したことがないわけではない。わずか1年前には、期待に反してチームはプレイオフの2回戦で敗退し、ベン・シモンズの将来について結論を出さなくてはいけない状況にあった。その状況は悪化し、76ersが最終的にシモンズをブルックリン・ネッツにトレードする2021-22シーズンまで引きずった。
今回は、76ersはむしろドラマのエキストラでいることに決め、NBAの多くのチームがケビン・デュラントの動向を見守る中で、バスケットボール運営部代表のダリル・モーリーが静かに優勝候補となるチームを作り上げていた。
チームが2年連続でプレイオフの2回戦敗退を経験した後、モーリーはシモンズとのトレードで獲得したジェームズ・ハーデンとチームをどうアップグレードできるか話をしていた。ハーデンは2022-23シーズンの4740万ドル(約63億9900万円:1ドル135円で換算、以下同様)のプレイヤーオプションを辞退することに同意し、その結果76ersは柔軟にほかのトレードを遂行できるようになった。
ハーデンは、「ダリルと話をして、僕らのチームが良くなる方法や特定の選手の市場価値についての説明を受けたんだ。僕はダリルに、ロスターを改善するために契約すべき人と契約した上で、残った金額を僕に提示してくれればいいと伝えたよ」 と『Yahoo Sports』のクリス・ヘインズに話している。
「僕はそのくらい勝ちたい。優勝のために戦いたいんだ」
「ここまで来たら重要なのはそれだけだ。チームを優勝できる状態にするためだったらもっと少ない額でもいいと思っている」
(より大きな契約が目前に迫っていることがわかった上で、ハーデンが短い契約を受け入れた可能性があることには注目すべきだ。それでも、残されたキャリアで優勝を狙える機会はあまり多くないことを認識したことは評価できる)
76ersは、フリーエージェントでPJ・タッカー(3年3300万ドル:約44億5500万円)とダニュエル・ハウスjr.(2年840万ドル:約11億3400万円)を獲得できた。メンフィス・グリズリーズとのトレードでディアンソニー・メルトンも獲得した。これらのトレードが完了したところで、モーリーはハーデンと新たに2年6860万ドル(約92億6100万円)の契約を結んだ。
76ersの選手層
ポジション | 先発 | 控え |
---|---|---|
ポイントガード | ジェームズ・ハーデン | シェイク・ミルトン |
シューティングガード | タイリース・マクシー | ディアンソニー・メルトン |
スモールフォワード | トバイアス・ハリス | マティース・サイブル |
パワーフォワード | PJ・タッカー | ジョージ・ニアン |
センター | ジョエル・エンビード | ポール・リード |
そのロスターは突如として、昨シーズンよりもずっと手ごわそうに見える。ハーデンとジョエル・エンビードの周りにさらに多くの3ポイントシューターがいて、ディフェンス面でもよりタフなチームになった。それこそ、エンビードがチームの弱点だとポストシーズンに指摘していたことだ。さらには、タッカーとハウスはロケッツでハーデンと一緒にプレイしたことがあるため、コートでもロッカールームでも十分なケミストリーはあるはずだ。
ハーデンはヘインズに「僕らのチームの層は厚くなったと思う」とも話している。
「それは僕らがなんとかしたかったことだ。今のチームを見てみると、(プレイオフで)もっと先に進める体制が整っている。ほかのトップチームと匹敵するチームになってきた感じが気に入っている」
もちろん、モーリーのことだから、今後数か月はまだまだ動きがあるだろう。彼は「5%ルール」に従う男だ。つまり、チームがタイトルを獲得する可能性が5%でもあれば、彼は全力で優勝を追い求めるのだ。
「こんなふうに(優勝に)近づいているときに自分たちの指名権を手放さない人たちのことが私には理解できない」
当時ロケッツにいたモーリーは2019-20シーズンのチームについてそう話している。
「どのチームのことなのかは調べればわかる。あと少しのところまで来ているなら(積極的にトレードに)動くべきで、私たちにとっては優勝できるチャンスが5%以上あればいいんだ」
76ersはそのローテーションを補強し、チームにとって良い契約で自分たちのトッププレイヤーの1人を確保し、イースタン・カンファレンスにおける優勝候補としての地位を固めた。
76ersはこのオフシーズンに最も派手な動きをしたわけではないが、成功したことは間違いない。
原文:James Harden's contract puts finishing touches on 76ers' quietly successful offseason(抄訳)
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