クリッパーズ優勝のためにジェームズ・ハーデンはどう自分のゲームを変化させているのか

Scott Rafferty

YOKO B

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ジェームズ・ハーデンのトレードは、ロサンゼルス・クリッパーズにとって幸先の良いスタートではなかったが、それはまるで遠い昔のことのように感じられる。

ハーデンのトレード後に6連敗を喫してから、クリッパーズはここ16試合で8連勝を含む13勝を記録。NBAで最も勢いのあるチームのひとつとなったクリッパーズは、ウェスタン・カンファレンスの13位から5位へと順位を上げている。

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再びスーパースターの風格を取り戻しつつあるカワイ・レナードが最近のクリッパーズの成功の原動力となっている一方で、ハーデンもまた本来の力を発揮している。クリッパーズのヘッドコーチのタロン・ルーが、ハーデンが「フィットしようとあれこれやり過ぎている」と話して以来、彼は1試合平均18.0得点(フィールドゴール成功率48.4%)、8.4アシストを記録している。

ハーデンのこの活躍につながった何か特別なきっかけがあるのだろうか。詳しく検証してみよう。

ジェームズ・ハーデンはクリッパーズの優勝の可能性をどう高めているのか

ハーデンは長い間、NBAで最もボールを支配する選手の1人だった。フィラデルフィア・76ers時代、彼がボールを持ち続けることはヒューストン・ロケッツの全盛期ほどではなかった。しかし、彼の使用率(usage rate)はクリッパーズで19.3%に急落し、キャリア最低を記録している。

その数字を後押ししている大きな変化は、ハーデンがオフボールでより多くのオフェンスを生み出していることだ。

ハーデンが自身のほぼすべてのオフェンスを自らクリエイトしていなかった時期を探そうとすると、ロケッツの初期まで遡らなければならなくなる。彼は今でもまだカッティングはあまり得意ではないが、今季は昨季よりもずっと実践している。

NBA.comによると、ハーデンはクリッパーズで1試合あたり2.4本のキャッチ&シュートの3ポイントショットを放っている。クレイ・トンプソンやステフィン・カリー、ポール・ジョージのような選手と比べるとまだ見劣りするが、 それは2015-16シーズン以来最も多い数字だ。彼はこのショットを得意とし、43.1%という驚異的な成功率を叩き出している。

クリッパーズに移籍した当初のハーデンは打てるチャンスを見送っていた。以降、彼はより積極的にショットを放つようになり、それがレナードやジョージの隣でのフィットを高めている。

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これはハーデンがオフボール・プレイヤーになったわけではない。なぜなら彼がそうではないことは明らかだからだ。

ハーデンほど頻繁にアイソレーションで得点する選手はリーグにまだあまりいない。ルカ・ドンチッチ、ザイオン・ウィリアムソン、ジェイソン・テイタム、そしてハーデンといったところだ。ピック&ロールもクリッパーズの誰よりも多用する。違うのは、76ersでやっていたほど1対1の得点に頼らず、ピック&ロールに傾倒していることだ。

ここでハーデンの今季の得点源と昨季の得点源を比較してみよう。

How James Harden generates his scoring
(NBA)

レナードとジョージがボールを持つ機会を犠牲にしてハーデンにピック&ロールをさせることは必ずしも悪いことではない。ハーデンはNBAでも優れたピック&ロールを用いたスコアラーの1人であり続けているし、その状況で優秀なパサーでもある。彼は常にリムに向かって走るセンターと一緒にプレイすることで成功しているため、彼とイビツァ・ズバッツが相手チームのディフェンスを破壊していることに驚きはない。

この2人は非常に良いケミストリーを築き上げている。

ジョージは常に3Pを量産してきたが、そこにレナードが3Pの試投数を増やしたことで、ハーデンとズバッツは相手チームのディフェンスがピック&ロールで崩れたときにボールを外にパスする相手ができた。

レナードは今季、キャッチ&シュートの3P成功率が49.3%で好調だ。

ちなみに、ハーデンのアイソレーションは最近酷評されがちだが、彼は今でも優秀だ。クリッパーズでは、アイソレーション1回につき平均1.49得点というとんでもない数字を叩き出しており、これは効率で98パーセンタイルにランクされる。12月18日(日本時間19日)のインディアナ・ペイサーズ戦では、13回のアイソレーションで今季最多の26得点をマークした。

もちろん、ハーデンにとってはこれはまだハネムーンの段階(良好な関係が保たれている期間)だ。昨季オールスター級のプレイを見せていたハーデンがオールスターに選ばれなかったとき、元76ersヘッドコーチのドック・リバースは即座に変化に気づいている。

「10〜20試合の間、我々はNBAで最高のチームだった。ジョエル(エンビード)、タイリース(マクシー)、トバイアス(ハリス)がいるのはもちろんだが、ジェームズ(ハーデン)がポイントガードを務めていたからだ」と、リバースHCは話している

「面白いもので、あるコーチが私に電話してきて『彼にあんなことをさせることができるとは思わなかった』と言ったんだ。短期間だったが、彼はそれをやっていた」

「彼にその役割に徹するようにさせ、スタッツや得点を追求する気持ちを抑えさせることができれば、素晴らしい選手を手に入れたことになるんだよ」

ハーデンにとって重要なのは、このプレイスタイルを残りのレギュラーシーズンと、最も重要となるプレイオフでも持続させることだろう。レナードとジョージが健康な限り、ハーデンにスポットライトが当たることはあまりないだろうが、クリッパーズ優勝のためには、彼はこれまでのように浮き沈みの激しいプレイはできない。

今のところ、ここ1か月で自分のゲームに変化をもたらしたハーデンは評価されてしかるべきだろう。それによって、彼は本来の調子を取り戻すことができ、スター選手たちがポテンシャルのすべてを発揮するために共通認識を持つ必要があるクリッパーズの最大限の力を引き出すことができているのだから。

原文:James Harden is helping Clippers reach championship potential with these surprising changes to his game
翻訳:YOKO B

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Scott Rafferty is an experienced NBA journalist who first started writing for The Sporting News in 2017. There are few things he appreciates more than a Nikola Jokic no-look pass, Klay Thompson heat check or Giannis Antetokounmpo eurostep. He's a member of the NBA Global team.

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。