【独占インタビュー】NBAとGリーグを視察中のフリオ・ラマスHCが日本のバスケットボールについて語る

Leandro Fernández

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男子バスケットボール日本代表のフリオ・ラマス・ヘッドコーチは、八村塁(ワシントン・ウィザーズ)、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ/メンフィス・ハッスル)、馬場雄大(テキサス・レジェンズ)といった、NBAとNBA Gリーグで現在プレイしている代表の主力選手たちのプレイを見るために、現在3週間ほどアメリカに滞在している真っ只中だ。『NBA.com Argentina』に対して、ラマスHCはミネソタ・ティンバーウルブズでアシスタントコーチとして活躍している同じアルゼンチン人のパブロ・プリジオーニや、3人の日本人選手について語っている。

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アルゼンチン人の誇り、パブロ・プリジオーニ

Pablo Prigioni

ーーパブロ・プリジオーニのようなアルゼンチン人がNBAのコーチングスタッフとして頑張っていることの重要性を教えてください。

パブロがチームの重要な役割を担っており、NBAの世界で頑張っているのを見られてとても嬉しいです。彼は多くのチームからリスペクトされているプロフェッショナルです。これまでアルゼンチン人のコーチができなかったことを彼は成し遂げているので、それはとても誇らしいし、嬉しいし、敬意を抱きますね。今NBAでヘッドコーチを務められる可能性を持っているアルゼンチン人は、彼しかいないと思います。

ーー海外出身コーチがNBAで成功する可能性は? まだその扉はあまり開かれていないように感じます。

そうですね、FIBA出身の選手がプレイするという意味では大きく変わりましたが、FIBAのコーチが成功するというのが最後の残されたステップだと思います。初めてコーチとしてこのリーグにやってくる場合、しっかりとプロセスを踏む必要があります。外の世界からやってきて、全てをコントロールするということはできません。時間をかけて、NBAの世界、マネージメント、ビジネス、エンターテインメントといった要素をしっかりと理解していくプロセスを踏んでいくのです。2011、2012年頃にルイス・スコラが、いずれFIBAのコーチがNBAで指導する可能性があると言っていましたが、当時の私はそう感じていませんでした。1999年以来、何度もNBAを観に来ていますが、FIBA出身の選手は活躍できても、コーチは難しいという見解でした。今はそれが見えてきており、スコラは正しかったのだなと思います。

ーーいつかNBAのコーチングスタッフ入りをするといった目標はありますか?

今の私の英語スキルでは、現実的な目標にはならないですね。

 

八村塁、そして日本バスケットボールの成長

Rui Hachimura

ーーシーズン序盤の八村塁について

塁は才能に溢れており、可能性をまだまだ秘めています。ポテンシャルは凄まじく、彼のNBA選手としてのキャリア、そして日本代表としてのキャリアの成功を信じています。彼は高い身体能力と素質を兼ね備えており、プレイを自然とこなし、恐れを知らない。それでもまだ可能性をたくさん秘めているのです。まだ21歳なので、成長できる箇所がまだ多くありますが、とても前途有望な選手です。今は初めて経験していることが多く、このシーズンを通してNBAの世界、プロの世界に慣れてゆき、どんどんレベルを上げていくでしょう。

ーー八村が日本に与えたインパクト

とても大きいです。2019年9月に、日本中が彼の名前を知ることとなりました。彼と大坂なおみ(女子テニス)は一大ブームとなりました。アメリカのエンターテインメントを好むファン層がしっかりとおり、スポンサーも多くついたことで、ちょっとした革命が起きました。それに加え、代表チームがワールドカップに出場し、オリンピックも近いということで、メディアとファンには大きな影響を与えることとなりました。さいたまスーパーアリーナでは3試合の親善試合を行なったのですが、合計5万5000人が観に来ました。21歳という若さながらも、一大現象を巻き起こしました。

ーー八村はどれくらいの選手になれる?

次の数年で、彼は日本史上最高の選手になり、NBAでも良い選手になれるでしょう。まずはこの段階に達さなければ、次のステージについて話すことはできません。NBAで良い選手にはなれるはずです。そうなったとき、チームの勝利に貢献できるようになったとき、さらに素晴らしい選手になっていけます。しかし、まずは良い選手になる必要があります。今はまだポテンシャルのある、可能性を秘めた選手という状態なので、まずは良いNBA選手になることが大切です。

ーー渡邊雄太と馬場雄大の置かれている状況

渡邊はGリーグではすでにリーダーとして立場を確立しており、NBAでも何試合か出場しています。今はNBAでの立ち位置を確立したいという状況です。彼はチームプレイヤーで、2~3番(シューティングガードとスモールフォワード)として良いサイズを持っている。NBAのなかで何かのスキルが突出しているわけではないが、多くのことを上手くできるため、良いチームプレイヤーになれる。彼のスタイルはまさにそれです。チームプレイヤーであるということです。馬場雄大はGリーグのテキサス・レジェンズでローテーションに入り込もうと頑張っています。彼はまだ新人なので、環境に慣れようとしている段階ですね。

ーー3人の選手がNBAやGリーグでプレイしていることの意味

日本のバスケットボール界にとってとても大きな進歩です。彼らはまだ21歳、24歳、25歳という若さで、これからの日本を支えていく主力となります。さらに、競争力を増しているBリーグの選手や、代表のチームメイトのモチベーションにもつながるでしょう。彼らが日本バスケ界に新たなチャレンジ、スタイル、トレーニングを紹介してくれることで、中期的な成長が見られるはずです。

最近の代表の流れは2017年から始まっているのですが、2023年にはFIBAバスケットボール・ワールドカップが日本で行なわれます(フィリピン、日本、インドネシアの共催)。2023年には、Bリーグも日本代表も成長しているはずです。48位から始まったFIBAランキングも、今では38位まで上昇し、国際大会にも再び出場できるレベルまでやってきました。2023年のワールドカップでは3人とも、さらなる経験を加えキャリアの全盛期を迎えているはずです。とりあえず、当面の目標は、オリンピックで試合に勝つことです。

ーーワールドカップの結果を受けて、2020年の東京オリンピックにはどういったことを期待している?

まずは、オフェンス面でもディフェンス面でも、ワールドカップからしっかりと成長したいです。どちらも成長できると思っていますが、とにかく自分たちのベストを引き出す必要があります。あの大会を経験したことで、国際大会が初めてではないということをアドバンテージにする必要があります。中国では、ヨーロッパからの2チーム(トルコとチェコ)、アメリカ、ニュージーランドと試合をし、まだこのレベルに達していない、勝つためにはもっと強くならなければならないということを見せつけられました。その経験をしたということは、大きな力になるはずです。

 

日本での経験

Japan National Team

ーーここまでの日本での活動はどう評価していますか?

最終評価はオリンピックが終わらなければできません。現段階では、アジア・オセアニア地域の第3レベルから第2レベルに上がるという大きなステップを踏むことができました。トップレベルはオーストラリアのみです。第2レベルは中国、韓国、フィリピン、ニュージーランド、イランといったところでしょうか。当初はその下にいましたが、様々な変化をもたらしたことで、上のレベルに上がることができました。チームとしてはすでにFIBAスタイルのトレーニングなども行なっています。これまで日本が築いてきたシステムや、ものごとのやり方があるので、それを考慮しながらチームとしてひとつになってきました。

ーー個人的な経験は?

遠い、何も知らない国でのチャレンジを私は受け入れました。コーチとして、アルゼンチン代表の経験が最大で、レアル・マドリードも特別なものでした。しかし全く異なる文化で、日本におけるバスケットボールや文化を理解しながら、そのなかでチームを指導していくという意味で、私のキャリアのなかで最大のチャレンジとなっています。オリンピックで結果を出すことが目標ではありますが、私とエルマン(マンドーレ・アシスタントコーチ)にとってはプロコーチとしても、人間としても大きく成長する機会になっています。日本では何かをするのに時間がかかることが多いのですが、プロスポーツの世界では時間があまりないので、素早く対応する必要があります。多大な努力を要する状況ではありますが、成長の余地はとても大きいです。

ーーそのチャレンジングな経験のなかで、これまで何か印象的なことはありましたか?

いくつかあります。日本におけるマネージメントの観点で言うと、JBA(日本バスケットボール協会)とBリーグはとてもうまく連携しており、すでにとても大きな力をつけ始めています。リソース(資産)や能力はすでに高いなかで、日本の仕事の仕方を理解しながら指導していく必要があります。日本での時間厳守の決まりや、細部へのこだわりはとても印象的です。

ーー私生活では?

しばらく東京に住んでいて感じたことは、東京は人で溢れているわりにとても静かなことです。大きな建物と自然がうまく融合されており、さらに日本の技術力で、エレベーター、電車、自動車などもとても静かに動くのです。「どうした、誰かボリュームを下げたのか?」とつぶやいてしまうほどです。さらに年寄りを敬い、お互いを気にかけ、街の清潔を大切にする社会です。世界中を見ても、日本の美しさは一番だと思います。本当に素晴らしい。これまで敬遠していたようなことも日本で学ぶことができ、人間としても日本に来たことで成長できています。

原文:Entrevista a Julio Lamas: un viaje para respirar NBA y el crecimiento de Japón dentro de un desafío especial by Leandro Fernández/NBA.com Argentina(抄訳)

Leandro Fernández

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Editor en Jefe de las ediciones en español de The Sporting News. 15 años de experiencia en el mundo del periodismo deportivo, con pasos previos por Clarín, Olé, e incluyendo más de 3 años construyendo y desarrollando los sitios oficiales de NBA.com en Argentina, España y México. Ahora parte de TSN. Si existe un Fantasy de NBA, seguramente él lo ganó.