ケビン・デュラントらアメリカ代表が勝利を望まないなら、なぜビーチにいないのか?

Mike DeCourcy

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米国東部標準時の午前1時15分だった。つまり、アメリカでは日が差すところがない時間だ。だが、ケビン・デュラントが立っている場所はある。それは、遠く離れた東京のバスケットボールのコートだ。NBA選手としてのキャリアで大金を稼ぎ、2007年にテキサス大学を離れて以降、多額のスポンサー契約を結んできた32歳の彼は、今、報酬なしでプレイしている。

前半から大差をつけ、120-66で大勝した東京オリンピック男子バスケットボール競技のグループA、イラン代表との試合で、デュラントはどんなことをしただろうか? さらに言えば、KD(デュラント)はこのオリンピックで何をしているだろうか?

オリンピック初出場ではない。引退するまでに経験したいと望んでいるわけではない。彼は2012年と2016年のオリンピックで金メダルを獲得した。そのどちらでも貢献したデュラントは、あと6得点でオリンピックにおけるアメリカ代表の歴代最多得点を記録する。

注目を集めるためでもない。USAバスケットボール(アメリカ代表)のジャージーを着た選手なら誰でも、努力が称賛されることはほとんどなく、敗北は選択肢に含まれておらず、金メダルを期待されることを理解している。

だがそれでも、彼はここにいる。NBAでの15年目のシーズンに備え、準備のために自宅のベッドで休んでいることもできた時期に、あるいはイビサ島のナイトクラブにでもいることができた時期に、だ。地球上のどこででも、長くバスケットボールの世界で輝いてきて得た富を楽しんでいることができた。アキレス腱断裂から戻り、平均26.9得点、5.6アシストを記録した2020-21シーズンを終え、休暇を楽しむことができた。それでも、彼はこの場所にいることを選んだのだ。

アメリカ代表の選手たちは、対戦相手の選手たちほど、国際舞台での活動を気にかけていない――トーク番組の出演者やツイッターの投稿でそんな声を次に見聞きしたら、そういったすべてを考えてみてほしい。

7月25日にオリンピック初戦でフランス代表に敗れ、2004年から続いていて大会における連勝が止まった理由はたくさんある。だが、出場しない理由もそろっていて、世界的なパンデミックが続いているまっただ中に、オリンピックに出場しているにもかかわらず、アスリートたちが適切な責任感を示していないなどと言うのは、まったく論理的な根拠がない。

ミルウォーキー・バックスでNBA優勝を飾ったドリュー・ホリデーとクリス・ミドルトンは、そのためにわずか60日間で23もの大変な試合をこなさなければならなかった。21日朝(現地時間)まで優勝を祝い、22日のランチタイム(同)にはミルウォーキーの街をパレード。そして23日(同)に東京行きのプライベートジェットに乗り込み、半日以上をかけてオリンピックのアメリカ代表に合流した。ファイナルで敗れはしたが、フェニックス・サンズのデビン・ブッカーも同じ行程だ。そして到着からほどなく、ホリデーは25日のフランス戦でコートに立ち、チーム最多の得点とアシストを記録した。

今週、デュラントは報道陣に「僕はいつもこの選手たちをリスペクトしてきた。どんなチームにいようと、どんな記録だろうとね」と話している。

「僕にとって、彼らがしたことは彼ら自身のようなものだ。ファイナルがどうなろうと、彼ら3人をとても尊敬してきた。でも、本当に何も文句を言わず、ここにいることを喜び、コートに立ってプレイするのを見て…彼らは素晴らしいよ。本当に、本当に、ゲームを愛しているんだ。彼らといられるのは素晴らしいことだよ」。

イラン戦でアメリカが66-30とリードしていたとき、デュラントは相手に力強く立ちはだかり、ショットを試みる相手に詰め、長い腕を伸ばしてボールがコートの外に出るのを防ぎ、相手に当ててアメリカのポゼッションとした。

100-57でリードしていた残り4分39秒、デュラントは20分間で10得点、5アシストを記録してから座っていたベンチから立ち上がり、タイムアウト中に喜ぶ仲間たちと「ダップアップ」をした。

残り9秒で118-66とリードしていたアメリカの選手たちは、ブッカーの2本のフリースロー後にフルコートプレスをしかけ、ブッカーがボールをスティールし、ダンクで最後の得点をあげた。

デュラントが代表の活動を気にかけていない? アメリカの選手たちが気にかけていない? イラン戦は圧勝したため、ソーシャルメディアでそういった声を見聞きすることは減るかもしれない。だが、インターネットは決して忘れない。今でも、ツイッターで「USA Basketball」「desire」と検索すると、そういった投稿が出てきて驚くことだろう。しかし、そういう人たちはアメリカ代表チームの選手たちを辱めようとして、実際には自分の知性を侮辱しているのだ。

原文: If Kevin Durant and USA teammates don't care about winning, why aren't they on a beach instead of dominating Iran? by MIKE DECOURCY/Sporting News.com(抄訳)


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Mike DeCourcy

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.