ワシントン・ウィザーズの新人・八村塁と、彼を擁する日本代表にとって、この夏のFIBAワールドカップ2019は、大舞台で成長するための大きなチャンスだった。出場国の中で最下位となる世界ランク48位の日本は、厳しい結果に終わっている。だが、日本の魂や国をあげての応援が増していく様子は明らかだった。
中国での5試合で、日本は1勝もできなかった(八村が出場したのは最初の3試合のみ)。だが、6月に日本人として初めてNBAドラフトで1巡目指名を受け、歴史を作った男の才能は、世界が知ることになった。
ゴンザガ大学出身の八村は、ワールドカップで1試合平均13.3得点、5.7リバウンド、2.3アシストを記録。1次ラウンドのチェコ戦では、フィールドゴール12本中8本成功の21得点、6リバウンドをマークしている。
アメリカ代表のアシスタントコーチで、ゴールデンステイト・ウォリアーズのヘッドコーチでもあるスティーブ・カーは、八村について「見事な運動能力だ」と述べた。
「天性の能力がすごい。あとはスキルを伸ばしていくことだ。彼の成長を見るのが楽しみだね。彼には明るい未来がある」。
野球が人気を博す日本は、ここ10年でバスケットボールが大きく進歩した。ワールドカップ出場は2006年以来で、今回がまだ5回目だ。八村とジョージ・ワシントン大学出身の渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)が方向転換を進め、日本はホスト国として2020年の東京オリンピックに出場する。1976年以来の出場だ。
ゴンザガ大での八村の成功とNBA挑戦に日本は沸いており、ワールドカップでもコートの外で日本代表の人気を独力で盛り立ててきた。ただ、コートでは、若い八村がNBAでの1年目に向けて準備するうえで、ワールドカップは重要なテストとなったようだ。
日本のスターとして、八村は絶えず相手チームの守備に注目された。ダブルチームをされることもしばしば。ただ、3試合で20本のフリースローを放つなど、ファウルを誘ったり、オープンなチームメイトを見つけることで、八村はそれを見事に生かしていった。
オールスター選手であるブラッドリー・ビールや、その他のウィザーズのチームメイトたちとプレイすることで、攻撃時に相手チームの集中は八村から離れるだろうが、注目の的となったことは、成長を続けるうえで貴重な経験となるはずだ。
日本のロスターで最年少ながら、大会を通じてリーダーであることを証明した八村。厳しい結果に終わったが、彼はまったく言い訳をしていない。日本が2020年の東京オリンピックに向けて準備するうえで、改善を目指さなければいけないことをすぐに指摘している。
八村は、「来年はオリンピックがありますし、アメリカみたいな強いチームとどんどん戦っていくと思うので、世界のレベルを感じられたのはよかったです」と述べた。
「アジアのほかのどの国も、(1次ラウンドで)落ちてしまったので、今のアジアのバスケは世界に通用しない、ほかと比べても弱い地域になっていると思います。僕らもこれから、日本も含めて、アジアでバスケを盛り上げていけたらと思います」。
NBAでのシーズンに向け、八村はこの経験を生かして成長したいと望んでいる。その若さにもかかわらず、控えめで成熟している八村は、トレーニングキャンプに向けて再び自分がバスケットボールを学ぶ生徒になる必要性を理解しているのだ。どんなことが待ち受けているにしても、八村は挑戦に向けて十分に準備ができている。
八村は「(NBAの)シーズンを楽しみにしている」と、アメリカ戦の後に語った。
「しっかり準備して、チームがどういうバスケをするかわからないですけど、できるだけ力になりたいと思います」。
原文: Hachimura impresses at World Cup, turns focus to NBA rookie season by Chris Gehring/Wizards.com(抄訳)