今、選手として成長する方法
オールスター選出5回、優勝1回という実績を持つケビン・ラブは、クリーブランド・キャバリアーズのリーダーのひとりだ。彼は今、今後数か月にわたる期間、キャブズ(と、そのほか7チーム)をどう導けばいいのかわからず困っている。
JB・ビッカースタッフ新ヘッドコーチ就任後、キャブズは上昇気流に乗りかけていた。その矢先の3月11日(日本時間12日)、NBAはシーズン中断を決断した。今季は7月末からオーランドで再開される予定だが、全30チームではなく22チームで争うフォーマットになり、前例のない形でのプレイオフに向けた準備を進める。しかし、22チームから外れたキャブズを含む8チームは、公式戦のない日々をしばらく送ることになってしまう。
「チームとして、団結する方法を見出さないといけない。残りの7チームと夏か秋に試合をする道も模索しないといけないし、個人個人のレベルアップも必要になる」と、ラブは話す。
「これが、この時期に選手として成長する唯一の方法だね」。
「プレイオフのように、レベルの高いバスケットボールを見るのもレベルアップに繋がる方法のひとつ。チームのみんなには、ちゃんとプレイオフレベルの試合を見て、どういう雰囲気かを感じ取ってもらいたい」。
チームメイトと同様に、ラブも新型コロナウイルスの影響でシーズンが中断される前に好調を維持していた。キャリア12年目の彼は、中断前の9試合で平均18.4得点、10.8リバウンド、4試合で20得点超え、4試合でダブルダブルを記録していた。
これだけのキャリアを積んだ今も、ラブはリーグを代表するパワーフォワードのひとりだ。長くプレイできない影響はあると話すラブは、選手がキャリアのどの段階にいるかによって、影響の度合いも変わると言う。
「あらゆる角度から今回のことを考えているんだ。たとえば、大学時代に4試合しか出場していなくて、プロに入って60試合程度しか経験していないダリアス・ガーランドのような選手の場合、まだ新人の壁を打ち破れていない上に、リーグトップレベルのポイントガードとの対戦も少ないから、どう対応していいのかわからないと思う」。
「中堅クラスのラリー(ナンスJr.)や、トリスタン(トンプソン)のような選手だってチームにはいる。ラリーは今季成長していたし、3ポイントショットも取り入れる努力を続けていた。トリスタンは今季終了後に契約を満了する選手で、今季も素晴らしいプレイをしていたし、声でチームを引っ張ってくれていた。選手個々によって状況は異なるけれど、受け入れるのが大変だと思う。それでもリーグの考えも理解できる。安全性を確保して、この難局を乗り越えないといけない。その点は理解できる」。
忘れられない2016年の優勝
2008年のドラフト全体5位でメンフィス・グリズリーズから指名されたラブは、ドラフト当日に成立したO.J.・メイヨとのトレードで移籍したミネソタ・ティンバーウルブズでキャリア6年目までプレイし、当時は殿堂入りレベルのスタッツを残していた。
ところが、ドラフト全体1位指名を受けたアンドリュー・ウィギンズとアンソニー・ベネットを含む大型トレードでキャブズに移籍し、レブロン・ジェームズ、カイリー・アービングとビッグ3を結成してからは個人成績の数字が落ち込んだ。
キャブズ移籍後はけがとの戦いもあった。それでも、コンディションが整っていれば上々のスタッツを残している。
ラブは現在までにキャブズで349試合に出場し、平均17.2得点、10.0リバウンド、180試合でダブルダブルを記録。プレイオフでは63試合に出場し、平均15.3得点、9.7リバウンド、27試合でダブルダブルをマークしている。
球団初優勝を成し遂げた2016年のNBAファイナルでは、優勝を決めた第7戦の終盤にゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーを抑え込んだ。当時のチームメイトとは、今でも定期的に連絡を取り合っているという。
「シーズンが中断された後、テレビで週末に第7戦を再放送していたね。あの当時を思い出したよ。あのチームの絆は絶対に壊れない。1勝3敗から逆転しないといけない状況で、(クリーブランドのメジャースポーツチームにとって)52年ぶりの優勝を成し遂げたわけだけれど、感覚的にはそこまで昔の話とも思っていない。これからも真っ先に思い出すことのひとつだし、忘れることのない記憶だよ」。
ラブが取り組むメンタルヘルス
コート上でも安定した成績を残しているラブは、近年NBAでも問題として取り上げられているメンタルヘルスに関する議論においても先頭に立っている。
元チームメイトのジェームズに対する表現と同じだが、ラブも“More than an athlete”(ひとりのアスリート以上の存在)だ。勇気、思いやり、寛大な心を行動で表す選手で、シーズン中断により金銭的な影響を受けるロケットモートゲージ・フィールドハウスのスタッフのために10万ドル(約1070万円)を寄付した。
この行動、そしてメンタルヘルスに対する意識を高める活動が評価され、ラブは『ESPN』のモハメド・アリ・スポーツ友愛賞の最終候補に選出された。
「誰かのために自分を犠牲にすることで、不安や憂鬱な感情をなくせることを学んだ。これからも、周りの人の意見を目にしたり、サポートしたり、話を聞くことで、コロナウイルスの問題でも、精神的な病の問題でも、人種に関する不当な問題でも乗り越えられると思う。楽しみながら取り組めていることで、これが自分の進化というか、成長に繋がった要因のひとつだ」。
「(メンタルヘルスに関して)コミュニティの意識が高まって、理解してもらえるようになったおかげで、ありのままの自分でいられるようになった。これからも増え続ける問題だけれど、取り組む価値はある」。
ラブとキャブズは、長期のシーズンオフの過ごし方を模索する。ほかのバスケットボール中毒者のように7月末からのシーズン再開を楽しみにしている彼だが、もし中断せずにシーズンを送れていたら、レギュラーシーズン最後の17試合でどういう結果を残せていたかを考えてしまうという。
「JBがHCに就任してから5勝6敗という戦績を残せていたし、噛み合う気がしていた。仲間が健康な状態なら、大半のチームと競い合える気がしていた。これから前に進むためには、あのときのようなエネルギーが必要になる」。
「ただ、はっきりしたシーズンではなかったし、シーズン終盤にどういう結果を残せていたかもわからないから、どういう風に今季を総括すればいいかわからない。どういう結果になるか楽しみにしていたんだけれどね」。
原文:Forward Thinking by JOE GABRIELE/Cavaliers.com(抄訳)