NBAのプレシーズンマッチは大げさな反応をするのに最適な時期だ。
各チームはレギュラーシーズン中の実際のローテーションからほど遠いメンバーで調整する。ロスターの最後の枠を競う選手たちがいれば、調子を取り戻そうとする選手たちもいる。オフシーズンのトレーニングを実際の試合のスピードに調整する選手もいれば、慎重にプレイする選手、あるいはまったくプレイしない選手たちもいる。
だが、ロスターの入れ替わりが多かったチームがいかに適応しているか、各チームのスターティングラインナップ候補、ブレイクしそうな選手たちなど、プレシーズンマッチで分かることもある。
以下、今プレシーズンマッチで分かった5つの発見を見ていこう。
ネッツはカイリー・アービングの代役にブルース・ブラウンを起用
プレシーズンの大きな話題のひとつだったカイリー・アービングについて、ブルックリン・ネッツは先日、パートタイムとなることは認めないと発表した。スターティングラインナップに埋めるべき穴ができたということだ。その状況にどう取り組むか、スティーブ・ナッシュ・ヘッドコーチの考えがプレシーズンから分かる。
フルメンバーで臨んだプレシーズンマッチの2試合で、ナッシュHCはスターティングラインナップにジェームズ・ハーデン、ジョー・ハリス、ケビン・デュラント、ブレイク・グリフィン、そしてブルース・ブラウンを起用した。オフシーズンに獲得したパティ・ミルズの先発も予想されたが、ナッシュHCは引き続きハーデンをポイントガードとして起用するつもりのようだ。
それでも、ミルズは非常に貴重なベンチメンバーとなり、シックスマン賞の候補でもある。だが、先発に名を連ねるのはブラウンとなりそうだ。
昨季のブラウンはネッツで何でも屋だった。ポイントガードからスモールボールのセンターまで、すべてのポジションで起用されたのだ。守備での多才ぶりが代名詞のブラウンだが、ネッツの成功にとって重要な存在となるのは、勝負どころでの頑張りやハッスルぶり。ずば抜けたアベレージにはならないだろうが、スターぞろいのネッツを団結させる接着剤のような選手として、あらゆる小さなことに取り組んでいくだろう。
ベン・シモンズに代わる先発の座を争うシェイク・ミルトンとタイリース・マクシー
プレシーズンを通じて大きな話題となった穴埋めが必要なオールスター選手といえば、フィラデルフィア・76ersのベン・シモンズもいる。
フィラデルフィアに戻ってきたと報じられたシモンズだが、チームの練習施設に姿を見せたという以上の情報はない。実際に復帰するのがいつなのかが分からないなかで、ドック・リバースHCはスターティングラインナップを決めることになる。
手の内を明かしていないのか、最終的な決断を下していないのかは分からないが、リバースHCはセス・カリー、ダニー・グリーン、トバイアス・ハリス、ジョエル・エンビードと一緒に、シェイク・ミルトンとタイリース・マクシーのどちらかを選ぶだろう。
ミルトンは2019-20シーズン、シモンズが不在のたびに代役を務め、24試合で先発出場した。だが、マクシーはルーキーシーズンの昨季、ミルトンの4試合に対して8試合で先発出場と台頭。シモンズに代わるスターターとしての役割を引き継いだように思われる。
役割にかかわらず、20歳のマクシーは2年目の今季でブレイクする準備ができているはずだ。だが、彼がそのポテンシャルを最大限に生かすために必要なのが、スターターとしての出場時間の増加だろう。昨季は先発出場した8試合で平均18.6得点、4.3リバウンド、3.9アシストを記録している。ただ、ミルトンも昨季は平均13.0得点、3.1アシストと貴重なベンチメンバーとして活躍した。その経験から、2年目のマクシーを上回るかもしれない。
開幕戦が近づくなかで要注目だ。
レイカーズのロールプレイヤーに課題
プレシーズンで0勝6敗だったロサンゼルス・レイカーズは、高齢化しすぎで、レブロン・ジェームズ、ラッセル・ウェストブルック、アンソニー・デイビスを組ませる実験は失敗する――のだろうか?
これこそ、エキシビションマッチに過剰に反応すべきではないという良い例だ。3人のスター選手が同時にコートに立ったのが1度だけならなおさらである。ただ、だからといって、レイカーズの醜いプレシーズンから得られることが何もないという意味ではない。
今季のレイカーズはオフシーズンにロスターをほぼ一新した。2020年の優勝メンバーからラジョン・ロンドとドワイト・ハワードが戻った一方で、新たにカーメロ・アンソニー、マリーク・モンク、トレバー・アリーザ、ケンドリック・ナン、ケント・ベイズモア、ディアンドレ・ジョーダン、ウェイン・エリントンが加わっている。
そして、新たに加わった選手たちの大半に称賛すべきところが多くなかった。
アンソニーは1試合平均約10本のフィールドゴール試投で成功率40.8%、ナンはFG成功率36.8%で3ポイントショット成功率27.8%。エリントンはFG成功率28.6%で3P成功率25.0%、ベイズモアはFG成功率37.5%だった。ジェームズとウェストブルックが本来の役割をこなせば、もっとオープンなショットが増えて楽になるだろうが、それでも序盤の不在材料であることは変わらない。
朗報は、モンクがFG成功率51.7%、3P成功率47.1%の平均12.7得点と堅実だったことだ。ロンド、ハワード、ジョーダンのベテラントリオも、何年も前から彼らが競ってきた役割で何かしらをもたらした。ドラフト指名外の新人オースティン・リーブスも、プレシーズンマッチ最終戦こそ8本中1本成功だったが、それまでは3P成功率40%超を記録しており、貢献できるかもしれない。
白星がゼロだから最悪と想定するのは容易だ。だが、レイカーズのプレシーズンにおけるパフォーマンスを評価する時は、悪いところと一緒に良いところも考慮しなければいけない。
ブルズはプレイオフの苦悩に終止符?
悪いパフォーマンスを過剰に分析してはいけないのと同様に、良いパフォーマンスに酔いしれてもいけない。
ブルズはプレシーズンマッチで平均21.5点差をつけて勝利してきた。クリーブランド・キャバリアーズとニューオーリンズ・ペリカンズをそれぞれ36点差で下し、キャバリアーズとの再戦でも1点差の接戦を制する力を見せた。ザック・ラビーン、ニコラ・ブーチェビッチ、デマー・デローザン、ロンゾ・ボールの4人はここまでシャープで、ブルズは本当にプレイメイクのオプションが豊富であることの恩恵を受けている。
Forget the coffee... watch this video!
— Chicago Bulls (@chicagobulls) October 6, 2021
Every single dunk from last night's W: pic.twitter.com/88uxB3Ix9H
アレックス・カルーソやアリゼー・ジョンソンといった新戦力も、それぞれの役割を力強くこなし、セカンドユニットに守備力や高い意識をもたらした。ディフェンシブレーティング(100ポゼッションあたりの平均失点)が91.3のブルズは、ここまで見事に、まるで機械のように機能した。
繰り返しになるが、プレシーズンのディフェンシブレーティングが完璧だからといって、浮かれてはいけない。控えラインナップとの対戦が大半だったからだ。
ただ、力強いオフシーズンを経て、誰もが予想したように、ブルズは5年ぶりのプレイオフ進出に向けて準備できているようだ。
ウォリアーズ、クレイ・トンプソンの代役にジョーダン・プール
強く期待されているクレイ・トンプソンの復帰は、クリスマスごろと見られている。彼にとっては2019年のNBAファイナル以来の公式戦の舞台だ。ウォリアーズは様々な理由から彼の不在に苦しんだ。優勝3回を経験しているトンプソンの復帰は、ウォリアーズがプレイオフに進出するために欠かせない。
だが、このプレシーズンで当面のトンプソンの代役となりそうな選手が現れた。3年目を迎えるジョーダン・プールが、力強くフィニッシュした昨季を経て、今季ブレイクしようとしている。
22歳のプールは平均21.8得点とNBAの今プレシーズンで6位の数字を残した。併せて、FG成功率50.6%、3P成功率36.4%、3.4リバウンド、3.0アシスト、1.0スティールをマークしている。
Jordan Poole through four games of preseason play:
— Golden State Warriors (@warriors) October 13, 2021
23.3 PPG
51.6 FG%
40.0 3FG%
3.5 RPG
3.5 APG
1.3 SPG pic.twitter.com/YepgIepWIn
プールはバックコートで相手守備にとってのもうひとりの脅威となり、ステフィン・カリーの負担を減らすことができる。彼はトンプソンが復帰するまでの先発シューティングガードの座を確保したかもしれない。彼がプレシーズンのプレイレベルをレギュラーシーズンでも続けられるか、注目だ。
原文:Five things we learned during the 2021 NBA preseason(抄訳)