FIBAバスケットボールワールドカップ2023は9月10日、決勝でドイツがセルビアに83-77で勝利して初優勝を飾って幕を閉じた。
17日間にわたる大会は、過去最高の盛り上がりとなった。ルカ・ドンチッチが「ルカ・マジック」を披露し、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーはスーパースターであることを証明。デニス・シュルーダーは大会を通じてドイツの頼りになる存在で、大会MVPに選ばれた。
注目の場面が多かった今大会だが、その中でも特に注目に値するハイライトを以下にまとめた。
FIBAバスケットボールワールドカップのアウォード
ファーストチーム
- デニス・シュルーダー(トロント・ラプターズ/ドイツ)
- ボグダン・ボグダノビッチ(アトランタ・ホークス/セルビア)
- アンソニー・エドワーズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ/アメリカ)
- シェイ・ギルジャス・アレクサンダー(オクラホマシティ・サンダー/カナダ)
- ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス/スロベニア)
セカンドチーム
- シモーネ・フォンテッキオ(ユタ・ジャズ/イタリア)
- アルトゥルス・ザガース(ラトビア)
- ヨナス・バランチュナス(ニューオーリンズ・ペリカンズ/リトアニア)
- ニコラ・ミルティノフ(セルビア)
- フランツ・バグナー(オーランド・マジック/ドイツ)
最優秀守備選手賞
- ディロン・ブルックス(ヒューストン・ロケッツ/カナダ)
ライジングスター賞
- ジョシュ・ギディー(オクラホマシティ・サンダー/オーストラリア)
最優秀コーチ賞
- ルカ・バンキ(ラトビア)
ドイツが世界王者に
ボグダノビッチとセルビアは、銀メダル獲得を大いに祝うことができるはずだ。セルビアは大会を通じて見事なバスケットボールを披露し、その努力は称賛に値する。だが、決勝ではドイツが上回った。8戦全勝で大会を通じて最高のユニットだった。
国際大会はNBAと大きく異なる。ドイツはそういった難しさものぞかせながら、大会を通じて見事に戦った。全般的な経験豊富さや互いの親和性は、特に攻撃面で明白だった。
けん引したのはシュルーダーだったが、ドイツを抜きんでた存在としたのは、バグナー兄弟やアンドレアス・オブスト、ダニエル・タイスといったサポーティングキャストだ。
落胆のアメリカ
アメリカはワールドカップ2大会連続でメダルを逃した。
アメリカが大会で3敗を喫した理由は、ブランドン・イングラム、パオロ・バンケロ、ジャレン・ジャクソンJr.のアクシデントや、度重なる守備でのミス、フロントコートのサイズ不足などだ。
もちろん、初黒星を喫したリトアニア戦では、バランチュナスの支配的な活躍があった。111-113でドイツに敗れた準決勝では、オブストのクラッチショットがあった。カナダに118-127で屈した3位決定戦では、ディロン・ブルックスに39得点を許している。
アメリカのベストプレイヤーはエドワーズだった。オースティン・リーブスとミケル・ブリッジズも明るい材料だった。
だが、期待にそう結果を残せなかったことで、グラント・ヒルやスティーブ・カー・ヘッドコーチは今後への展望に刺激を感じているはずだ。アメリカは来年のパリオリンピック2024に向けてロスターを再構築するだろう。
南スーダンの躍進
南スーダンの物語は、シンプルに素晴らしいものだった。アフリカにおけるバスケットボールの成長とインパクトの証だ。国が独立してわずか12年で、大会前の世界ランクは62位。オリンピック出場権を獲得した国としては、ここ約20年で最も低いランクだった。
元NBAオールスター選手で現在ゼネラルマネージャーを務めるルオル・デンは、ヒューストン・ロケッツのアシスタントコーチであるロイヤル・アイビーを招へいするなど、フロントオフィスから南スーダンをけん引した。
昨季のNBA GリーグMVPを受賞したカーリク・ジョーンズは、南スーダンで平均20得点、10アシストを記録し、ギルジャス・アレクサンダーに次ぐ大会有数のポイントガードだった。
アフリカ勢でワールドカップ3勝を達成したのは南スーダンだけだ。最終成績は3勝2敗。アンゴラを101-78で下し、パリオリンピックへの切符を手に入れた。
有力国敗退の番狂わせ
オーストラリアとフランスはここ数十年にわたり、国際舞台の有力国だった。8月25日前の世界ランクはどちらも5位以内だった。
フランスは大会を通じてNBAのベテラン、ルディ・ゴベアとエバン・フォーニエが活躍。オーストラリアはパティ・ミルズとギディーが舵を取った。
しかし、NBAのタレントたちを擁する経験豊富なロスターというだけで、ワールドカップを勝ち上がることはできなかった。フランスとオーストラリアはともにトーナメントフェーズにたどり着けず。2019年大会でオーストラリアが2位だったことや、フランスの伝統を考えれば、驚くべき結果となった。
ワールドカップでは落胆に終わった両チームだが、どちらもパリオリンピック2024には出場する。
ロンデイ・ホリス・ジェファーソン
大会屈指の瞬間は、マニラのアリーナで大勢のファンが「コービー、コービー、コービー」とチャントした時だ。1次ラウンドのニュージーランド戦で、ヨルダンのホリス・ジェファーソンがフィールドゴール24本中12本成功の39得点と活躍した時のことである。
ホリス・ジェファーソンは大会を通じ、プレイスタイルや背番号まで故コービー・ブライアントに似せていた。
ヨルダンは1勝もあげることができなかったが、ホリス・ジェファーソン個人はマンバメンタリティーを発揮。平均24得点、8リバウンド、4アシストを記録している。
シモーネ・フォンテッキオの活躍
今大会で最も驚きだった躍進選手は、イタリアのフォンテッキオかもしれない。
NBAで2年目を迎えるフォンテッキオだが、NBA入りする前は他国で10年にわたりプロを経験してきた。
フォンテッキオは攻撃力やリーダーシップを発揮し、イタリアを準々決勝に導いた。平均18得点、6リバウンドと印象を残し、どこからでも得点できることを証明した。2023-2024シーズンのNBAでは、ジャズで彼の役割が大きくなっても驚きではない。
原文:Final thoughts on 2023 FIBA World Cup(抄訳)