[インタビュー]ドノバン・ミッチェル「みんなの知識や経験を全て吸収したい」(西尾瑞穂)

Mizuho Nishio

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11月3日(日本時間4日)のトロント・ラプターズ戦の開始前に、ユタ・ジャズのロッカールームに行くと、ノートパソコンを抱えたドノバン・ミッチェルが1人のアシスタントコーチの元に歩み寄った。ミッチェルは、パソコン画面に映るスカウティングビデオを指差しながら「コーチ、このプレイを説明してほしい」と助言を求めていた。

そのアシスタントコーチは彼の担当のコーチではなかったのだが、ミッチェルは一刻も早く自分の疑問を解決したくて身近にいたコーチに声をかけたのだろう。そういった向上心の甲斐あってか、シーズン開幕当初こそスコアリングに苦しんだものの、10月24日のロサンゼルス・クリッパーズ戦で19得点、同28日のロサンゼルス・レイカーズ戦で22得点、11月1日のポートランド・トレイルブレイザーズ戦で28得点、そしてこの日もチーム最多の25得点を記録し、非凡な得点力を証明しつつある(日付はすべて現地時間)。

そんなジャズの期待の新人に、開幕からここまでの手応えや今後の課題、リーグ内における交友関係などについて聞いた。


――先日のブレイザーズ戦ではデイミアン・リラードと激しい攻防を繰り広げました。同じアディダス契約選手として、以前からリラードとは面識があったようですね?

デイミアンとは兄弟のような関係だよ。彼はこのリーグで何年もプレイしているから、僕は彼のプレイをずっと見てきたし、彼のプレイが好きなんだ。彼のメンタリティにも凄く憧れている。

以前アドバイスを求めたとき、具体的な状況に例えて彼自身の経験を踏まえて丁寧に指導してくれたんだ。そのアドバイスはとても勉強になったし、僕がより良い選手になるための大きな助けになったよ。

――そのブレイザーズ戦であなたは28得点しましたが、あなたの魅力は得点力よりも闘争心の高さとディフェンスにあると思います。現時点におけるあなたの強みは何だと思いますか?

ディフェンシブなプレイスタイルが僕の信条だから、ディフェンスが強みだと思う。常にディフェンスに重点を置いてプレイしているし、全てのプレイが良いディフェンスに繋がるように常に意識している。

新人の今はプレイタイムが短いけれど、マッチアップ相手は大学時代とは比較にならないぐらい素晴らしい選手ばかりだ。だから、今はとにかく相手の前に立ちふさがって、時にはハードなファウルも辞さない気持ちで、全力でディフェンスしているよ。

――今シーズン中に改善していきたい課題は何ですか?

辛抱することを覚えないといけない。時にはペースを落として相手の隙を見つけたり、オープンになっている味方を見つけて的確なパスを出したり、そういったポイントガードとして試合の流れを作り出す役割をもっと勉強したい。

――クイン・スナイダーHCから、トレーニングキャンプが始まるまでにゴール近辺の決定力を上げておくように、という夏の宿題が出されていたそうですね。あなたはNCAAでもNBAサマーリーグでもゴールにアタックして得点できていたように思いますが、HCからこういう指示を受けたのは意外でしたか?

自分でもゴール近辺の決定力は改善すべきだと思っていたから意外ではなかったね。NBAの選手はみんな大きくて強くて早いから、僕のように体が大きくない選手は身体接触があっても確実にシュートを決められないといけないし、正しいプレイ選択をしないといけないし、より楽にフィニッシュできるように相手の動きを読まないといけない。それらは経験や知識を積み上げることで身につくものだから、今はチェンジオブペースを使って楽にフィニッシュできるように工夫しているよ。

Donovan Mitchell Jazz
ブレイザーズ戦では兄のように慕うデイミアン・リラードとマッチアップ

――あなたのNBAサマーリーグでの活躍を見て、私はあなたのことを新人王の有力候補だと思いました。あなた自身は今シーズンの新人王を獲得する自信を持っていますか?

今は新人王のことは全く考えていないよ。大学時代はNBAにドラフトされることを夢見てプレイしていたけれど、いざNBA選手になったら1シーズン82試合という長丁場になるから1試合1試合に集中しないといけない。だから、まだ8試合をプレイしたこの段階で新人王のことまで考えられないね。

とにかく今は試合に出て、自分のできることをやって勝利に貢献し、チームをプレイオフに導くこと、そして1試合でも多く勝つためにベストを尽くすこと、それだけを考えているよ。

――これまで対戦したNBA選手の中で最もインパクトがあった選手は誰ですか?

夏に一緒にワークアウトしたポール・ジョージ(オクラホマシティ・サンダー)、クリス・ポール(ヒューストン・ロケッツ)、カーメロ・アンソニー(サンダー)は、ルーキーシーズンを迎える僕にNBAでプレイためのいろいろな知識を与えてくれた。彼らが教えてくれたことはとてもインパクトがあったよ。もちろん、前の試合で対戦したデイミアン・リラードも凄いインパクトだった。

――チームメイトの中で一番アドバイスをくれるのは誰ですか?

タボ(セフォローシャ)とリッキー(ルビオ)かな。それから隣に座っている大男のルディ(ゴベア)もアドバイスをくれるよ。でも、この3人に限らずチームメイト全員が僕にアドバイスをくれる。

彼らは体のサイズやポジションやプレイスタイルが1人1人違うから、各人が特有の視点を持っている。だから、僕はチームメイト全員にアドバイスを求めて、みんなの知識や経験を全て吸収したいと思っているよ。

――3年後、アメリカ代表の一員として2020年の東京オリンピックでプレイしたいと思いますか?

もしアメリカ代表に選ばれるとしたら、それはとても幸せなことだよ。母国を代表してオリンピックでプレイするのは誰にとっても素晴らしいことだと思う。

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

ユタ・ジャズのドノバン・ミッチェルです。みなさんの応援に感謝します。僕たちのチームは今シーズンどんどん良くなっていくはずなので、ぜひジャズの試合を観てください!


この日の試合後、駐車場の外でファンが出待ちをしているのを見つけると、ミッチェルはわざわざ車を降りて、集まったファンのサインや写真撮影に応じていた。NBA選手は車の窓を開けてファンに対応するのが一般的だが、ミッチェルのように車を降りてまで対応する選手は初めて見た。

その場にいた地元ファンに聞くと、彼はいつもこうやってファンサービスしているという。なるほど、試合中に選手交代でミッチェルの名前がコールされるたびにファンが大声援を送るのは、彼が期待の新人だからというだけではなく、こういった丁寧な対応を通して彼の人柄や謙虚さがファンに伝わったからに違いない。

今夏、昨シーズンまでチームのエースだったゴードン・ヘイワード(ボストン・セルティックス)をフリーエージェントで失ったばかりのジャズだが、ファンは早くも彼に代わる将来のエース候補を見つけたようだ。

文:西尾瑞穂 Twitter: @jashin_mizuho Instagram: jashinmizuho

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