優勝王手のバックス、ファンはファイサーブ・フォーラムと「Deer District」で熱狂

Steve Aschburner/NBA.com

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半世紀ぶりのNBA優勝まであと1勝となり、バックスのファンとミルウォーキーの住民は、彼らが愛するバスケットボールチームに対する畏敬の念を強めている。

一方で、チームも、ファンに対する畏敬の念を強めている。

NBAファイナル2021第3戦を終えたとき、バックスのボビー・ポーティスJr.は「ここの人たちは本当に僕たちを信じ、信頼してくれた」と話した。

「アリーナの外で2万、3万、4万人のファンが狂喜乱舞している。アリーナの中にも1万7000人だ。今はバックスの人間であることが素晴らしい時間なんだよ。ミルウォーキーの街にとって素晴らしい時間なんだ。あの外は、本当に多様さ。多くの人たちが一緒になって混ざり合っている。僕たちが勝ち、街にインパクトを与えたことで、街が団結したのだと思う」。

バックスの“あの外”は、ますます大きくなっている。4勝先制シリーズで3勝2敗とリードしたことで、ウィスコンシン州南東部のミシガン湖の隣に位置する勇気ある都市、ミルウォーキーのイメージと名前は世界中に広まった。

ただ、現時点で最も重要な“あの外”は、バックスが試合をするたびに2万人以上が集まり、応援している「Deer District」だ。プレイオフを通じ、ホームでもロードでも試合のたびに、ファイサーブ・フォーラムの東側と南側の広大なスぺースは、多くの人にとって一生に一度の経験を共有したいと願うファンで埋め尽くされてきた。

前回バックスがファイナルを戦ったのは、レジェンドのカリーム・アブドゥル・ジャバーとオスカー・ロバートソンがスター選手だったころだ。現在指揮を執るマイク・ブーデンホルザー・ヘッドコーチは、当時まだ4歳。一部の選手にとっては、両親がまだ生まれてもいないときのことだった。

当時を含め、バックスが1968年から88年まで使用したミルウォーキー・アリーナの収容人数は、1万938人だった。その後1988年から2018年までの30年間は、第7戦でアレン・アイバーソン擁するフィラデルフィア・76ersに敗れた2001年のイースタン・カンファレンス・ファイナル進出が、バックスの最高成績だ。この30年で本拠地としていたBMO ハリス・ブラッドリー・センターの収容人数は、1万8717人だった。

しかし、ブラッドリー・センターが解体され、東側に広場ができたおかげで、少なくともその倍の数のファンが、プレイオフの試合に集まれるようになった。チームが約1500マイル(約2400キロ)も離れたところで戦った、7月17日(日本時間18日)の今ファイナル第5戦でも、だ。

バックスのピーター・フェイギン社長は先週、『FOX Business News』で「本当に現象が作り出された」と話している。

「3年以上前、我々は本当にここが人々の目的地、るつぼとなるようにと、このアリーナを建設した。試合を見るために定期的に1万5000~2万人の人たちが集まり、アリーナ内の人たちを凌駕するほどになるとは、夢にも思わなかったよ」。

フェイギンが話したのは、バックスの今季のホームゲームについてだった。だが、フェニックスで戦うときも、ファイサーブ・フォーラムは照明がついていた。アリーナ外の「Deer District」とは異なる、アリーナ内での観戦パーティーが行なわれたのだ。

ファンが座って飲食をしながら応援する。アリーナ内はフェイギンが言う「ミルウォーキーのリビング」にふさわしいものとなった。あるファンは、今プレイオフの試合を観戦できたか問われ、「あのチケット価格では無理」と答えた。だが、「自分も参加するために」観戦パーティーを望んだという。

アリーナの外では、2万5000人のファンが、2つの大型スクリーンのひとつで観戦した。気温約21℃で快晴という理想的な天気に、たくさんのバーや出店があり、簡易トイレも設置された。観客の年齢層は、アリーナの中に比べて若めで、ブロックパーティーのような雰囲気とあり、試合への集中度はアリーナ内ほどではなかった。

「Deer District」での仕事は初めてというミルウォーキー市警勤続18年のベテラン警察官は、「行儀よく、今のところ事件はない」と話している。

タイトルに飢えるバックスのファンについて、あるファンは「我々にはこれが必要だ」と述べた。早ければ、20日(同21日)のファイサーブ・フォーラムでの第6戦で、そのタイトルが訪れるかもしれない。バックスは19日(同20日)、第6戦ではさらに3万5000人が集まれるように「Deer District」を拡張すると発表した。

1971年のバックスの優勝、1977年のマーケット大学のNCAA優勝を除けば、ミルウォーキーの栄光は120マイル(約190キロ)離れたグリーンベイ・パッカーズのNFL優勝に甘んじなければならなかった。それ以前では、1957年のミルウォーキー・ブレーブスのワールドシリーズ制覇だ。

つまり、かなり前のことである。

2019年のポストシーズンでは、優勝したトロント・ラプターズの本拠地スコシアバンク・アリーナの外に自然とファンが集まり、「ジュラシックパーク」ができた。「Deer District」は、その進化版だ。ファイサーブ・フォーラム周辺地区はずっと、住宅や小売店の発展をターゲットにされてきた。だが、バックスの活躍への反応から、球団や街は一年を通じて人々を惹きつける別の方法として、フェスティバルやコンサートの開催を検討している。

バックスが123-119でリードしていた第5戦の残り9.8秒、「Deer District」が大きく(そして性急に)勝利を祝う様子の映像が頭上で流れると、アリーナ内はその夜最高潮の盛り上がりとなった。

それからは、試合終了のホーンが鳴るまで、アリーナの中も外も「第6戦でバックス勝利!」の大合唱だ。それから20分としないうちに、広場の大半の人は去った。パーティーはミルウォーキーの近くの居酒屋やクラブへと舞台を移したのだ。

観戦した人の多くは願った。あと2回ではなくあと1回、「Deer District」の夜を味わいたい、と。

原文:'Deer District' brings Finals excitement to the masses in Milwaukee by Steve Aschburner/NBA.com(抄訳)


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