夏を通じて誰もが話題にしていたトレードがようやく決まった。
複数の報道によると、ミルウォーキー・バックス、フェニックス・サンズ、ポートランド・トレイルブレイザーズの予想外の三角トレードで、デイミアン・リラードがバックスに加わるという。
生え抜きのスター選手を手放す見返りとして、ブレイザーズは妥当な価値を手に入れたのか。バックスはイースタン・カンファレンスで断トツの優勝候補となるのか。そして、サンズにとって価値のあるトレードだったのか。
ここでは、各チームの観点でトレードを評価する。
バックスとサンズとブレイザーズの三角トレード
バックス獲得
- デイミアン・リラード
ブレイザーズ獲得
- ドリュー・ホリデー
- ディアンドレ・エイトン
- トゥマニ・カマラ
- 2029年ドラフト1巡目指名権(プロテクトなし)
- 2028年と2030年のバックスのドラフト指名交換権
サンズ獲得
- ユスフ・ヌルキッチ
- グレイソン・アレン
- ナシール・リトル
- キーオン・ジョンソン
バックスの評価
ヤニス・アデトクンボは、バックスが再び優勝を目指すことに全力を注がなければ、ミルウォーキーを離れる可能性もあることを示唆していた。そしてバックスは彼を落ち着かせるために、リラード獲得という大きな一手でやれるだけのことをした。
ホリデーを失うのは痛手だろう。キャリアを通じて有数のペリメーターディフェンダーだった選手だ。だが、その守備を支えるのに、バックスにはまだアデトクンボとブルック・ロペスがいる。
バックスにとってもっと問題だったのは、安定した攻撃をつくり出すことにあった。昨季のオフェンシブレーティングはリーグ15位だ。リラードはその点で大きな違いをつくる存在となるだろう。昨季は自己最多の平均32.2得点をあげたばかりだ。3ポイントショット成功率は37.1%だった。
リラードは推定プラスマイナスやDARKOといった指標では、攻撃でニコラ・ヨキッチすら上回るリーグ最高プレイヤーとされている選手だ。そのインパクトは、深い位置からの3Pを決めるショット力、最もアグレッシブな守備をも脅かすドライブ力、評価以上に味方のために好機をつくり出す創造力(平均アシストは定期的にリーグトップ10)によるものだ。
また、リラードの加入でバックスは昨季リーグ23位だったフリースロー試投も増やすことができるだろう。昨季はリラードが平均9.6本試投でリーグ5位、アデトクンボが12.3本で1位だった。その2人がコンビを組めば、クォーターの早い段階でボーナスに入り、さらに効率的な攻撃を生み出すことにつながるはずだ。
今回のトレードで、バックスは東地区で抜きんでた候補となるだろう。
評価:A
ブレイザーズの評価
ブレイザーズにはリラードのトレードをうまく実現させるための大きな影響力がなかった。選手がヒートにしか行きたくないと公然と主張していたからだ。
リラードの契約内容も懸念要素だった。現時点ではまだ驚異的な選手だが、36歳となる2026-2027シーズンに6320万ドル(約94億8000万円/1ドル=150円換算)のプレイヤーオプションというのは、特に優勝を目指すわけではないチームにとってあまりにも払い過ぎだろう。
それらの不利な要素にもかかわらず、ブレイザーズはできるだけ良い取引を実現するために、直近の勝利を目指すチームを見つけた。これによってブレイザーズはいくつかの良い資産を手に入れ、ドラフト全体3位で指名したスクート・ヘンダーソンが力を発揮できるようにしたかたちだ。
プロテクトなしのドラフト1巡目指名権が1つというのは、一見すると素晴らしいことではないように思える。だが、バックスは直近の勝利に全力を注ぐことで、2029年までにロッタリーチームになる可能性も十分なのだ。2028年と2030年の1巡目指名交換権も、同じ理由でとても貴重になるかもしれない。
ホリデーはこのチームであまり意味をなさないが、そのうちもっと多くの指名権とトレードされるだろう。
年齢面からもスキルの点からも、エイトンは確実にヌルキッチからのアップグレードとなる。環境の変化を必要としていた才能あるセンターをお買い得に手に入れる良い機会となった。エイトンはよりモチベーションを感じ、ブレイザーズにとって非常に良い補強となるかもしれない。
評価:B+
サンズの評価
サンズはブラッドリー・ビール、デビン・ブッカー、ケビン・デュラントの周囲をかためる層の厚さを強く必要としていた。エイトンは最も論理的な放出候補だったし、引き換えに複数のローテーションプレイヤーを手に入れるのは、良いアイディアだった。しかし、これがベストだったのだろうか。彼らにはもう手札が残っていない。良くも悪くも、これが彼らのチームとなる。
ヌルキッチがエイトンからのダウングレードとなるのは確実だ。優れたリムプロテクターだが、スペースでうまく動けず、チームに可能な守備のかたちを限定する。ただ、ビッグスリーのスターたちの脇をかためる存在としては良いだろう。ブレイザーズでは急速な衰えの始まりを見せたが、トレードで再び活気づくかもしれない。
アレンは素晴らしい3Pシューターで、サンズのスター選手たちとうまく合うはずだ。守備には難があるが、プレイオフでローテーションの一角として出場時間を得られるほどではある。また、リトルとジョンソンはサンズに若さをもたらすだろう。
評価:B-