デイミアン・リラードの「デイム・タイム」でヤニス・アデトクンボがNBA最高のクラッチプレイヤーになれない?

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

デイミアン・リラードの「デイム・タイム」でヤニス・アデトクンボがNBA最高のクラッチプレイヤーになれない? image

デイミアン・リラードといえば、リーグ有数のクラッチプレイヤーとして鳴らしてきた。数え切れないほど決勝点をあげてきた「デイム・タイム」の意味を知らないNBAファンはいない。

しかし、そんなリラードの「デイム・タイム」が終わる時が近づいているのかもしれない。

じつは、リラードにとって今季は、クラッチタイムの出来が最も悪いシーズンのひとつとなっている。一方で、その時間帯に活躍しているのがヤニス・アデトクンボだ。クラッチゲームでミルウォーキー・バックスを18勝10敗という成績に導いている。

バックスがそういった試合ですべて勝つチャンスを最大限にするには、終盤にボールを持つべきはリラードではなくアデトクンボだと認識することだ。

デイミアン・リラードのクラッチタイムが月並み

クラッチタイムのリラードのパフォーマンスを巡る数字は驚きかもしれない。バックス加入当初はビッグショットをいくつか決め、クラッチタイムでの強さを続けていた。

11月上旬のニューヨーク・ニックス戦で逆転勝利を収めた時も、リラードの2本のショットがあった。1月のサクラメント・キングス戦でも、オーバータイムにブザービーターの3ポイントショットを沈めて勝利に貢献している。 

このショットは、バックスの今季のハイライトのひとつとなるかもしれない。だが、よくあることではなく例外的だ。3点差以内で迎えた残り30秒間のリラードのショットは、6本中1本成功にとどまっている。いくつかのショットひどい失敗だった。

NBAは5点差以内で残り5分を迎えた試合を「クラッチ」と定義している。そのクラッチタイムにおいて、バックスで最もユーセージ率(チームのポゼッションを完了した割合)が高いのはリラードだ。3分の1の割合でボールはリラードに渡る。だが、フィールドゴール成功率41.4%、3P成功率29.0%にとどまっているのだ。チームで4番目の数字である。

クラッチタイムのバックス選手のスタッツ(NBA.com
選手 ユーセージ率 FG成功率 3P成功率
デイミアン・リラード 33.5% 41.4% 29.0%
ヤニス・アデトクンボ 27.1% 55.8% 50.0%
クリス・ミドルトン 16.7% 53.8% 40.0%
ブルック・ロペス 13.1% 45.5% 42.9%

これらの数字にもかかわらず、クラッチタイムのバックスの攻撃は、変わることなくまずリラードを通じて行われている。

リラードが決勝点をあげたキングス戦の試合後、アデトクンボは『The Athletic』のエリック・ネーム記者に「彼にできることは知っている」と話した。

「だからこそ、終盤に僕らはみんな彼を探すんだ。すべてのハンドオフ、ピック&ロールは、デイム(リラード)から始まる。それが彼だからだ。終盤で彼は卓越した選手だ。終盤に活躍するんだよ。今夜はそれをやってみせたのさ」

このリラードに対する揺るぎない信頼は、同じキングス戦のオーバータイム残り1分を切ってからリラードが3Pを2本失敗し、勝つためにあのブザービーターショットが必要になったという事実を無視している。

同じオーバータイムでアデトクンボが放ったショットは1本だけだ。ショットクロック残り5秒になってボールを手にし、うまく守備を整えていたキングス選手たちに対してミッドレンジから放ったショットだった。

 

ヤニス・アデトクンボはデイミアン・リラードよりクラッチタイムにボールを持つべき

これらの試合終盤の状況において、アデトクンボが2番手なのは明白だ。そしてそれはあまり理にかなっていない。アデトクンボはMVP投票で6年連続トップ4入りすると見られる選手だ。バックス最高の選手であることは確かだろう。彼の突破は止めることができない。そしてフロアが広がった状態でリラードに通すことができるだけの優れたパサーでもある。

ではなぜ、もっとアデトクンボを経由しないのだろうか?

機会を得た時のアデトクンボは、終盤にインパクトを残すための方法を見つけようとしている。ある指標では、圧倒的にリーグ最高のクラッチプレイヤーだ。リラードよりもずっと良い成績にバックスを導いている。

終盤にアデトクンボがボールを持つのは珍しく、それも狙ったものというよりは偶然だった。

11月下旬のポートランド・トレイルブレイザーズ戦でも、終盤に命運を託されたのはリラードだった。102-102のタイスコアで迎えた残り24秒、リラードはプルアップの3Pを放つがリングに嫌われ、自らリバウンドを拾ったが、ボールが手からこぼれ落ちる。最終的に拾ったボビー・ポーティスのショットがエアボールとなったところを、アデトクンボが押し込んで決勝点としたのである。

また、アデトクンボは今季のリーグ全体を通じ、ピック&ロールのボールハンドラーとして最も効率的なスコアラーだ(150ポゼッション超)。タイリース・ハリバートンやシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、ルカ・ドンチッチなど、上位の他のエリートガードたちをも大きく上回っている。

このランキングで19位のリラードも、そういったプレイで堅実だ。しかし、バックスはアデトクンボの3倍近くの頻度でリラードをその役割で用いている。

バックスのロスターにはタレントたちがいる。シーズンを通じて彼らは同じ波長にないようだった。その問題の解決に向けた重要な一歩は、試合を通じ、そして特にクラッチタイムで、アデトクンボを明確な中心に据えることだ。

原文:Dame Time is stopping Giannis Antetokounmpo from establishing himself as NBA's best clutch player(抄訳)
翻訳:坂東実藍

Stephen Noh

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。