[杉浦大介コラム第68回]グレン・ロビンソン三世 インタビュー「自信が増している」

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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2017年オールスターウィークエンドの華、スラムダンクコンテストを制したのは伏兵グレン・ロビンソン三世インディアナ・ペイサーズ)だった。

同僚ポール・ジョージの助けも借りたロビンソンは、予選ラウンドから“飛び越え”をテーマとした大技を連発。決勝ラウンドで最後はジョージ、チームマスコット、チアリーダーを飛び越えてのダンクを成功させ、文句のない形で初優勝を決めた。

これまでは“元オールスターのグレン・ロビンソンの息子”として認識されてきた感があった。2014年のドラフト2巡目指名でNBA入り後も、地味な存在に甘んじてきた。しかし、予想を覆してダンクコンテストを制し、22歳にして自らの名前を確立し始めたと言っていい。

3月14日、ニューヨーク・ニックス戦のために“ビッグアップル”を訪れた際、そのロビンソンにダンクコンテストの思い出を振り返ってもらった。常に謙虚さを忘れない成熟した好漢で、気遣いに溢れる語り口はこれまと変わらず。その一方で、大舞台で自身の存在感をアピールしたことからくる自信が確実に感じられた。

※注:インタビューは左足の故障発生前に収録したもの。ロビンソンは3月24日に左足ふくらはぎを痛めたことが発覚し、この日から少なくとも約2週間の離脱が発表された。現地4月17日のクリーブランド・キャバリアーズとのプレイオフ1回戦第2戦で復帰した。


アドレナリンがほとばしるのを自分でも感じた

――ダンクコンテストで優勝後の周囲の反応はどう? Twitterのフォロワーが急増したといった話は聴いているけど。

みんな凄く喜んでくれた。例えば(インディアナポリスの)ダウンタウンに食事に行っても、多くの人が僕の存在に気づいてくれるようになった。「ダンクコンテストを見たよ!」「オールスターウィークエンドは凄かったね!」なんて声をかけてくれる。コンテストを制したことは、僕という選手がブランドになっていくのを間違いなく助けてくれる。大舞台で力を出せるという自信がついたことはプレイの助けにもなる。

――4本のダンクを決めた中で、自身で最も気に入っているのは?

うーん、選ぶとすればたぶん1本目だな。

――ゴール下に立った2人を飛び越え、肩車された一人からボールを受け取ってそのままリバースダンクを決めたやつだね。

そう、あの技を決めた選手はこれまでのNBAのダンクコンテストにはいなかったはずだ。リプレイを見たけど、リムの上から豪快に叩き込むことができていた。1本目としては質が良く、良い感じで勢いをつけられたと思う。

――ポール・ジョージ、チームマスコット、チームのチアリーダーを立たせ、3人を飛び越えて決めたダンクもインパクトは大きかった。最後を飾った一発は誰のアイデアだったのかな?

もともと僕のアイデアで、最初はポールだけを飛び越えるつもりだった。それが結局はマスコットとチアリーダーも加えようということになった。「もっとエキサイティングなものにしようぜ」と、ポールもいろいろとアドバイスをくれた。ポール自身もコンテストに2度出場した経験があるから、準備の段階からいろいろと助けてくれたんだ。

Glenn Robinson III Pacers

――ダンクコンテストでは多くのダンクを準備しておかなければならないもの。君はあといくつくらい準備していた?

あと2~3は考えておいたよ。思った通りにいかなかったときや、何らかの不測の事態に対して備えておいたんだ。

――それらもどんな技だったのか聞きたいな。でも、来年に2連覇を狙うときのために秘密にしておきたいんだろうね。

ハハハハ、まあそんなところだ(笑)。

――NBA のスケジュールは厳しいから、「いったいいつダンクの練習をするんだろう」といつも思う。時間をみつけるのは容易ではないのでは?

ああ、それは簡単ではなかった。NBAではレギュラーシーズンに82試合もあって、連戦も多いからね。合間を縫って準備を進めなければいけない。ここで打ち明けると、実はポールと一緒に練習できた時間は全部で5分程度だったんだ。だから急いで打ち合わせをしなければいけなかった。

――2006年のダンクコンテストで準優勝したアンドレ・イグダーラ(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が、「コンテストに出るのは一度だけでいい。身体にもの凄い負担がかかるんだ」なんて話してくれたことがあった。君の疲労はどうだった?

(イグダーラが)言っていることはよくわかる。ダンクコンテストの後に何日間か休みがあったから、僕の場合はしっかりと休養を取れたのが良かった。その間はなるべくリラックスして、後半戦に疲れを残さないように心がけた。しかし、疲労感はかなりあったよ。普段はまずないほどの負荷を身体にかけるわけだから。

――それでも来年に2連覇を目指す?

まあそのときが来たら考えるよ。今はまず残りのシーズンに集中しなければいけないから、そこまで熟考しているわけではない。ただ、来季のオールスターはロサンゼルスという大都市で開催だから、(連覇を目指す)可能性は高いかもね。

――子供の頃のフェイバリットダンカーは?

ビンス・カーターだ。

――それでは、最も記憶に残っているダンクコンテストは、やっぱりビンスが優勝したあの伝説的な2000年かな?

ビンスのコンテストももちろん印象的だけど、実は僕はザック・ラビーン(ミネソタ・ティンバーウルブズ)ととても仲が良いんだ。「おまえと同じようなダンクは俺だってできるよ」なんて軽口を叩きながら、彼とはよく一緒に練習をしたものだった。しかし、彼がコンテストでやり遂げたダンクは僕から見てもクレイジーと思えるほどにとてつもなかった。だから彼が優勝した2度のコンテストは印象深いね。

――今年のコンテストの前、2年連続王者のラビーンからもアドバイスを受けた?

「ダンクコンテストの間はアドレナリンが自然と湧き出てくるから、それに身を任せて楽しめばいい。おまえが普段やっている通りにやればいい」と言われた。実際にその通りだったから、彼の言葉は助けになった。当日はアドレナリンがほとばしるのを自分でも感じたからね。

――ダンクから少し離れるけど、開幕直後に君は「“3−Dプレイヤー”(3ポイントショットとディフェンスに長けた選手)として自身を確立させたい」と話していた。その方向に進んでいけていると感じる?

自分ではそう思っている。ディフェンスとロングジャンパーの精度を高めることは、チームが僕に望んでいることでもある。まだまだ今季は残っているから、自分のプレイを少しでも向上させたい。そしてチームを可能な限り助けていきたい。

Glenn Robinson III Pacers

――3月5日の敵地でのアトランタ・ホークス戦では、終了間際に決勝ジャンパーを決めてチームを勝利に導いた。最近は実際に、より自信を持ってプレイできているように見える。

ダンクコンテストや、ここまでの経験から、自信が増しているのは確かだ。(コンテストの優勝は)僕の勲章であり続けるし、おかげで次の段階に進んでいける。みんながこれまで以上に僕の名前を知ってくれるようになったことも嬉しく思う。これからもアグレッシブに、自信を持ってプレイを続けていきたい。

――君は能力はあるのだから、もっとアグレッシブにプレイして欲しいとジョージが語っていたことがある。より積極的に、というのが今後の課題になるのかな?

そうだね。きっとそうすべきときが来るのだろう。今はコーチも僕のためにプレイをデザインしたりはしないし、僕自身もまだそういった選手ではないという思いもある。ただ、もっとアグレッシブに挑むべきときは、そういったメンタリティでプレイしていくつもりだよ。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

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杉浦大介 Daisuke Sugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。