[杉浦大介コラム第66回]ニコラ・ヨキッチ インタビュー「パスを回すのが本当に好き」

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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セルビア出身の若手センター、ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)が大きな飛躍を遂げている。2年目の今季は平均16.0得点、8.5リバウンド、4.2アシストという好成績をマーク。特に1月は11試合で23.9得点、11.1リバウンド、4.8アシストをあげ、一躍、リーグ有数のビッグマンと注目されるようになった。

柔らかさとオールラウンドなプレイが持ち味で、2月3日のミルウォーキー・バックス戦ではトリプルダブル(20得点、13リバウンド、11アシスト)を達成。アルビダス・サボニス、ブラデ・ディバッツといった欧州の先輩たちを彷彿させるパスセンスにも一見の価値がある。また、2月10日のニューヨーク・ニックス戦ではキャリアハイの40得点(フィールドゴール17/23)をあげてナゲッツを勝利に導き、ニューヨーカーの度肝を抜いた。

英語は母国語ではないながら、「パスは2人を幸せにする。得点をあげても1人だけしか幸せにならない」「(トリプルダブル達成後に)コーチに裸のままハグを求めた」など、ウィットの効いたユニークな発言も数多い。先週には『スポーツイラストレイテッド』電子版に特集記事が掲載されるなど、米国内での注目度も高まる一方だ。ドラフト2巡目指名での入団ながら、チーム内で“カーメロ・アンソニー以来のスーパースター候補”と目されるようにもなった。

そんな21歳のビッグマンに、ニックス戦当日午前中のシュートアラウンド(チーム練習)時に話を聴いた。コート上では成熟して見えるヨキッチだが、15歳も歳の離れたマイク・ミラーとかけ合う姿はまだ初々しさを感じさせる。先輩たちに可愛がられるスター候補は、リラックスした表情で質問に答えてくれた。


――今季は素晴らしいシーズンを過ごしているね。

良い感じで来ているね。チーム全体がより良いプレイをし始めている。ここまで接戦を惜しくも落としたゲームも多くて、本当だったらナゲッツはもっと勝てていても不思議はないはずだったんだ。終盤戦はより多くのゲームを勝つ自信はある。 

――個人としても2年目を迎え、1年目より遥かに快適そうにプレイしている。その原因はどこにあると思う?

NBAで1年間を過ごし、チームの人間、チームメイト、そしてリーグ全体をよく知ることができた。経験を積むというのはとても大事なことだと改めて思い知らされているよ。

――「パスは2人を幸せにする。得点をあげても1人だけしか幸せにならない」というコメントは現地メディアの間でも話題になり、君がパスを出すのが好きだというのはすでにNBAに知れ渡った。ビッグマンながら、あれほどのパス能力はどうやって身につけたの? ポイントガードとしてプレイした経験があるのも大きいのかな?

うーん、どうだろう。その答えは僕には分からないな。ただ1つ言えることは、僕はパスをまわすのが本当に好きだということ。その気持ちの部分が大きいのかなと思うことはある。コート上では他の選手たちがよく見えて、彼らが取りやすいようなパスを出すのが好きなんだ。そうとしか答えられないよ。

――子供の頃に好きだった選手は?

特別なフェイバリットプレイヤーがいたわけではない。いろいろな選手のプレイを見た。アキーム(オラジュワン)とか、ティム・ダンカンのプレイはよく見たかな。それからもちろんマイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソンとかね。

Nikola Jokic Nuggets

――様々なタイプの選手に満遍なく注目してきたことが、今の君の多才さに繋がっているのかもね。最近のプレイを見る限り、誰にもひけを取っていないように見えるけど、実際にマッチアップしてみて“これは凄いな”と思わされた選手は?

このリーグでは誰もが必ず秀でた部分を持っているもの。その中でも、デマーカス・カズンズ(サクラメント・キングス)、マルク・ガソル(メンフィス・グリズリーズ)、ラマーカス・オルドリッジ(サンアントニオ・スパーズ)といったビッグマンたちは良い選手だなと思った。さっきも言った通り、良い選手でなければここまでたどり着けないわけで、凄い選手を1人だけに限定するのは難しいけどね。

――2年目にしてスター候補と呼ばれるようになっている。“次の段階”に進むために、あとは何が必要だと感じている?

僕はまだバスケットボールプレイヤーとして総合的な力を向上させる必要があると思っている。1つの要素を“グレート”と呼ばれる地点まで伸ばすより、様々な面を“グッド”よりさらに上まで到達させたいんだ。だから、全体に気を配りながらトレーニングを積んでいるよ。

――シーズンを通じて、少し歳の離れた2人のお兄さんが常に君と一緒に行動していることも話題になってきた。彼らの存在は心強く感じる?

家族が周囲で支えてくれるというのは素晴らしいことだ。今の僕のように外国で暮らしているならなおさらだ。このリーグでプレイしていると、良いときもあれば、悪いときもある。彼らは上手くいかないときでも常に僕のそばにいてくれるからね。

――『The Players Tribune」に掲載された記事を読んだ。ナゲッツから2014年ドラフト2巡目41位で指名されたときには、君は眠っていて、お兄さんに知らされたけど、気にも留めなかったというくだりは面白かったな。

そう、兄たちはパーティーを開いて祝ったけど、僕は家で寝ていたんだ。なぜかというと、その日、僕はゲームが予定されていたんだよ。だから休む必要があったんだ。

――そもそもドラフトされたと信じなかった?

ああ、本当だとは思わなかったね(笑)

――以前は1日にコーラを3リットルも飲んでいたけど、NBA入り後はコンディション維持のために飲まなくなったというのは本当?

その通りだよ。

――体重が増えやすい体質で、低カロリーの食事を摂っていると聞いたけど、いったい何を食べているの?

なるべく外出しないで、家で料理してもらうようにしている。そのほうが身体にはより良いからね。魚、チキンとか、今でもいろいろなものを食べる。ただ、調理方法に気を配り、なるべくローファットにしてもらっているんだ。

――このまま成長すれば近未来にオールスター出場も有望に見えるけど、今後、このリーグで何を成し遂げていきたい?

何より、僕はチャンピオンリングが欲しい。優勝したい。あのリングを手に入れたいんだ。NBAにおいて僕の目標はそれだけだよ。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。