[杉浦大介コラム第46回]復活を遂げたポール・ジョージ「すべてを振り返ってみて、僕はより強い人間、プレイヤーになれたと思う」

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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2014年8月の悪夢の右足骨折から約15か月———。驚くべきことに、インディアナ・ペイサーズのポール・ジョージがキャリア最高級のプレーを展開している。

昨年4月5日にわずか8か月という驚くべき速さで復帰を果たすと、今季は開幕から先発出場。11月18日のフィラデルフィア・76ers戦まで自己最長の8試合連続26得点以上、記録が途切れた翌戦の24日のワシントン・ウィザーズ戦でも40得点をマークするなど高い得点力を発揮し、ペイサーズを9勝5敗という予想以上の好スタートに導いている。

スモールフォワード(SF)、パワーフォワード(PF)のどちらでもハイレベルにこなせる守備力も健在。リーグ有数の“2ウェイプレイヤー”(攻守両面に優れた選手)の完全復活は、今季序盤戦のリーグ全体で最も喜ばしいニュースの1つだったと言っていい。

25歳のジョージは、記者の取材対応も辛抱強くこなす好漢。いつもながらのオールラウンドゲームで魅せた76ers戦後、リハビリ期間中に学んだこと、先輩スーパースターからの貴重なアドバイス、そして今季のペイサーズの可能性についてじっくりと語ってくれた。

――今季これだけ安定してハイレベルで活躍できている理由は?

しっかりした準備を積んでいるからだ。事前にやれることをやってゲームに臨んでいるからだと思うよ。(結果が出ているから)気分は良い。コート上での練習はもちろん、フィルムもよく見ている。自分のプレイはどうか、足が動けているか、相手チームはどうやってガードしてくるか、どんな形でシュート機会を得ているかなど、しっかり確認もしているんだ。

――8試合連続26得点以上を続けたけど、ショットもこれだけ好調ならばゴールも大きく見えるんじゃないかな。

今季はやれるという自信が増しているのは事実だ。ただ、その背景にはこれまで数多くのシュートを練習でも打ち続けてきたという裏付けがある。そして、そのショットが実戦でも決まり始め、自信も増し、より集中できるようになって、という風に好循環が生まれてきているんだ。

――大ケガからのカムバックはすでに過去の話になりつつあるけど、今振り返ってみて、復帰の過程で最も難しかったことは?

昨季にコートに戻ったときは、まずはコート上で自分を信じることが大切だった。急ぎすぎないように、徐々に感覚を取り戻すように。去年の終盤に実戦の舞台に立てたことで、精神的に落ち着けた。健康に戻ること、100%の体調を目指すといった段階までは昨季で手応えを掴めていた。おかげで今季はケガから立ち直ることより、かつてのように良いプレイをすることのほうに集中できるようになった。 今季に関してはもうそれほど難しいことはなかったよ。

――誰かにアドバイスを求めたことは?

コービー(ブライアント)には話を聞いたよ。「ゲーム中にゴールにアタックするように、リハビリ中もアタックしなければいけない。ゲームに準備するときと同じように、リハビリに向けてもしっかり準備しなければいけない」と言われた。それらの言葉を頭に置いて、リハビリにも熱心に取り組んだ。

――コービーらしいアドバイスだね。

これまでとは違う考え方で、実際にそういう風に臨むようにした。今こうしてすべてを振り返ってみて、(故障からの復帰過程を通じて)僕はより強い人間、プレイヤーになれたと思う。

――まだ序盤とはいえ今季の君のスタッツの多くがキャリアハイだけど、故障よりもより良い選手になっていると感じる?

いくつかの部分に関しては、そうだね。まだ過去のレベルに達していないと感じるところもある。その一方で、ケガする前よりもベターになったと感じるところもある。足りないところがあるとするなら、爆発力、足の耐久力といった箇所だ。ただ、全体的にはレベルアップしていると感じられるかな。

――もともとスターだった君がさらに次のレベルに進むために、加えなければいけないと感じる要素があるとすれば?

フィジカルの意味では、さっき言った通りに爆発力を取り戻すこと。あとは新しい役割を学び続けること。チームリーダーとして、ゴートゥガイとして、成長を続けなければいけない。新しくなったチームの中でリーダーとして確立できたとき、僕のキャリアは次のステージに進むのだろう。これから先に何があろうと、自分を待ち受けているものが今は楽しみに感じられるんだ。

――(11月18日の)76ers戦では君が34得点、8リバウンド、5アシスト、4スティールとオールラウンドに活躍しただけでなく、チーム内で7選手が7得点以上をあげ、アシスト数でも28-14と相手に差をつけるというバランスの良いゲームだった。

積極的に攻め、チームメイトのためにクリエイトし続けることができたという意味では今季のベストゲームだった。テンポとペースは自分たちが目指した通りのもの。ビッグラインナップ、スモールラインナップのどちらでもプレイができるのが今季のチームの長所であり、それが見せられたと思う。

――ロイ・ヒバート、デイビッド・ウェスト、ルイス・スコラらが不在となり、今季のペイサーズはこれまでほどサイズに恵まれたチームではなくなった。それでも平均失点リーグ4位と守備の良さは変わらず、1試合平均の相手のターンオーバーはリーグ2位と多くのミスを誘発しているね(数字は24日の試合前時点)。

それが僕たちのあるべき姿で、守備力のおかげで接戦を拾うこともできている。守備からイージーバスケットを生み出し、今年のチームはよりハイペースで攻めることもできる。僕、モンテ(エリス)、C.J.・マイルズといったようにスキルに恵まれ、フットワークに優れ、ディフェンス時の手の使い方も巧みな選手が揃っている。チームディフェンスが僕たちの基盤であることはこれまでと変わらない。

――ペイサーズは悪くないスタートを切ったけど、かなりハイペースでプレイしているようにも見える。まだ序盤だけど、君は疲れを感じていない?

いや、疲れはないよ。さっき言った通り、しっかりとした準備を積んでいるからだろう。それに、楽しんで日々を過ごせているからかな。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。