ポール・ジョージとギルジャス・アレクサンダーのトレードはクリッパーズとサンダーに何をもたらしたのか?当時のトレードの内容とその行方

YOKO B

Shaun Powell, NBA.com

ポール・ジョージとギルジャス・アレクサンダーのトレードはクリッパーズとサンダーに何をもたらしたのか?当時のトレードの内容とその行方 image

あれは2019年夏、NBAを、主にロサンゼルス・クリッパーズを震撼させたトレードだった。

そのトレードとは、ポール・ジョージがクリッパーズに行き、その引き換えにシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、ダニーロ・ガリナーリ、1巡目指名権5つとスワップ権2つがオクラホマシティ・サンダーに行くというものだった。

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背景を補足しておくと、ジョージがクリッパーズに移籍したのは、2019年にトロント・ラプターズで優勝を決めたばかりのフリーエージェントで、市場で大きな影響力を持つカワイ・レナードのリクエストがあったからだ。レナードは実質上、2018-19シーズンのMVP投票で3位に入ったジョージを獲得するか、自分がロサンゼルス・レイカーズと契約するのを眺めるか、どちらかを選べとクリッパーズに迫ったのだ。

その頃のギルジャス・アレクサンダーは将来を嘱望される才能の持ち主だったが、今のような得点力のあるスター選手ではなかった。徐々にサンダーを驚かせるほどに成長した彼は、ジョージより8歳年下の25歳だ。

12月21日(日本時間22日)のクリッパーズとサンダーの対戦を前に、この2チームのトレードを振り返って検証してみよう。勝敗の行方は……今のところサンダーに間違いないだろうが、変わる可能性もある。

サンダーはまだ指名権すべてを使い切っていないが、仮にその指名権が消えたとしても、単にジョージとギルジャス・アレクサンダーの交換でもこのトレードはサンダーに有利に見える。しかし、ジョージとレナードを擁するクリッパーズがタイトルを獲得するのであれば、あのトレードの価値は十分にあるのではないだろうか?


2019年のクリッパーズとサンダーのトレード内容

クリッパーズ獲得

  • ポール・ジョージ

サンダー獲得

  • シェイ・ギルジャス・アレクサンダー
  • ダニーロ・ガリナーリ
  • 2021年1巡目指名権・プロテクトなし(マイアミ・ヒート経由/18位でトレイ・マンを獲得)
  • 2022年1巡目指名権・プロテクトなし(12位でジェイレン・ウィリアムズを獲得)
  • 2023年1巡目指名権スワップ権(行使せず)
  • 2024年1巡目指名権・プロテクトなし
  • 2025年1巡目指名権(1~14位プロテクト、2026年はプロテクト/ヒート経由)
  • 2025年1巡目指名権スワップ権
  • 2026年1巡目指名権・プロテクトなし

サンダーは実質的にこのトレードで、現時点での2人のスターターを獲得した。その2選手は今季、両者合わせて1試合平均47.8得点を記録している。

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このトレードがクリッパーズにもたらしたもの

トレードを正当化し続けるクリッパーズは、予測不可能ではあるもののリーグ有数のチームであることに変わりはない。先月ジェームズ・ハーデンを加えて以来、彼らは不安定な出だしから方向転換できている。

トレード以降

結論から言えば、クリッパーズはトレードの成果としてウェスタン・カンファレンス・ファイナルに1度出場したものの、現実的には期待外れな結果だ。トレードに踏み切ったそもそもの理由は、少なくとも現時点でタイトルを獲得していることだったからだ。

しかし、もちろん問題はそれだけではない。ジョージとレナードは、ケガのためにレギュラーシーズンもポストシーズンも全うできていない。最初の4シーズンで、彼らがともにプレイしたのはプレイオフを含めて142試合で、96勝46敗の成績を残した。

2020-21シーズンは彼らにとって最大のチャンスだったが、レナードはウェスタン・カンファレンス・セミファイナル第4戦でひざを負傷し、残りのプレイオフと翌シーズンを全休。結局クリッパーズは2021年のウェスタン・カンファレンス・ファイナルでフェニックス・サンズに敗れている。

今シーズン

レナードは1試合も欠場していないし、ジョージも1試合しか欠場していない。これは祝福すべきことだ。

2020年のバブルのプレイオフで、ルカ・ドンチッチ率いるダラス・マーベリックスに危うく敗れそうになったときを除けば、2人がコートに一緒にいる時間が問題になったことはない。この2人のスターはほぼ連携が取れていて、2人のスタイルはうまくかみ合い、補完し合っている。

それは、2023-24シーズンのここまででも見て取れる。レナードは今月、1試合平均29.3得点(フィールドゴール成功率62.3%)を記録している。ジョージはオフェンス面では安定しないが、ペリメーター・ディフェンスではいつも通り堅実だ。

今後

状況は良くなる。ハーデンとのトレードは報われ始めているのだ。ハーデンが加入したとき、クリッパーズは突然、彼のスキルをレナードやジョージと融合させる方法を見つけなければならず、またラッセル・ウェストブルックをどうするか考えなければならなかった。

ウェストブルックはスターターからベンチスタートになった。レナードとジョージに譲り過ぎたハーデンはその後、リラックスして自分の役割とリズムを掴んだ。レナードとジョージからのメッセージは、『自分らしく』だった。その結果、クリッパーズはウェスタン・カンファレンスで6位となり、今も上昇傾向にある。


このトレードがサンダーにもたらしたもの

サンダーは万事順調でウェスタン・カンファレンス2位につけており、このまま2位をキープする気満々だ。その好調の理由は明らかに、オールNBAファーストチームに選出された2022-23シーズンをさらに上回る活躍を見せるギルジャス・アレクサンダーの存在だ。

トレード以降

サンダーは2019年にラッセル・ウェストブルックとジョージをトレードした後、再建に大きく舵を切っている。デイミアン・リラード(当時ポートランド・トレイルブレーザーズ)が2019年のプレイオフ1回戦で文字通り手を降って別れを告げるまで、ウェストブルックとジョージはOKCのバスケットボールを復活させた強力なタンデムだったが、その年の7月、両者は1週間も空けずに大量の指名権と引き換えにトレードされた。

今シーズン

サンダーは、昨シーズンのサクラメント・キングスに驚くほど似ている。キングスはついに若手選手の活躍を実現させ、ウェスタン・カンファレンス3位に躍進し、ファンを熱狂させたのだ。

ギルジャス・アレクサンダーはディアロン・フォックスであり、チェット・ホルムグレンはドマンタス・サボニスである。これこそまさにサンダーが望んでいたことであり、リーグのほかのチームは警戒を強めている。

ギルジャス・アレクサンダーの話に戻ろう。彼のオフェンス面でのスター性は疑う余地がない。ミドルレンジとフリースローを得点源とするが、そのどちらもキャリア成功率34.6%の3ポイントショットを補うものだ。さらに、昨シーズンの平均31.4得点に続き、今シーズンも平均30.7得点をマークしており、2年連続で平均30得点以上を記録する勢いだ。

ジョージが平均30得点を記録したシーズンはキャリアで一度もなく、サンダーでの最終シーズンにマークした平均28得点が最高記録である。

今後

サンダーはNBAのほとんどのチームよりも全面的に万全の状態にあると言える。サンダーには、ギルジャス・アレクサンダーというスター選手と若手のコア選手がいて、現在しっかり争えているチームだ。そして、選手の年俸は低く、将来のドラフト指名権を多く抱えている。これらの条件をすべて満たしているチームがどれだけあるだろうか?

サム・プレスティGM(ゼネラル・マネジャー)には選択肢がある。このまま現在のコア選手たちを維持して来年のプレイオフでどういう結果を出すのかを見ることができる。もちろん、それはサンダーがプレイオフに進出し、不振や大きなケガに見舞われることがないという前提のもとで、だ。

あるいは、2月のトレード期限に複数のチームに取引を持ちかけ、実績のある選手、たとえば不満のあるベテラン選手や、現在のチームから契約を望まれていない選手を獲得することもできる。

しかし、クリッパーズからの負債ももうすぐ底をつく。来年の夏と2026年にはクリッパーズから受け取ったプロテクトなしの1巡目指名権があるが、それらはロッタリーにはなりそうもない。2025年のスワップ権も同様だ。

原文:How the Paul George, Shai Gilgeous-Alexander trade looks now for Clippers, Thunder
翻訳:YOKO B

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。

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