ウェンバンヤマを抜いてホルムグレンが新人王有力候補に躍り出たのはなぜか?

Stephen Noh

YOKO B

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今シーズンはビクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)に大きな注目が集まっているが、ここまでの最高のルーキーはチェット・ホルムグレン(オクラホマシティ・サンダー)だ。

それもその差は特に近いわけでもない。

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ウェンバンヤマはホルムグレンをわずかに上回る得点とリバウンドを記録しているが、ホルムグレンはウェンバンヤマを効率面で圧倒している。2023年11月29日(日本時間30日)時点のルーキー2人のスタッツは以下の通りだ。

ホルムグレン 1試合平均 ウェンバンヤマ
17.9 得点 19.2
8.0 リバウンド 9.5
53.8 FG成功率% 43.0
43.1 3P成功率% 27.5
87.0 FT成功率% 82.4

ホルムグレンは、名誉ある50-40-90クラブ(フィールドゴール成功率、3ポイント成功率、フリースロー成功率で該当の数字を記録した選手のグループ)に入るNBA史上初のルーキーになるチャンスがある。一方のウェンバンヤマは得点はしているが、そのために大量のショットを放っている。

ホルムグレンには確かにウェンバンヤマよりも有利な点がいくつかある。年上であること、1年間ベンチでリーグを観察してきたこと、チームメイトがはるかに優れていることなどだ。しかし、いずれも今現在の彼がウェンバンヤマよりも良いシーズンを送っているという事実を否定するものではない。

では、ホルムグレンはなぜここまで成功したのか?そして、それは彼の将来にとって何を意味するのだろうか?

チェット・ホルムグレンはいかにしてビクター・ウェンバンヤマをかわして新人王有力候補に躍り出たのか?

チェット・ホルムグレンはすでにリーグ屈指のシューター

ホルムグレンはシューターとして素晴らしい。3P成功率43.1%という数字はステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)がルーキー時代に記録したものと同じで、リーグのトップ25に入る。ホルムグレンはボールスクリーンで3Pラインに飛び出すことでディフェンスにプレッシャーをかけ続け、チームメイトにスペースを与えている。

ホルムグレンはミドルレンジからのシュートも得意で、今シーズン48.3%の成功率を記録している。彼のリリースは非常に高いため、ほかのセンターが相手だとしても簡単にを決めることができる。

ホルムグレンのシュート力はドラフト前から周知の事実ではあったが、ゴンザガ大学1年のときの39.0%という数字をさらに上回っている。今のところ、ビッグマンとして最高のシューターだ。

チェット・ホルムグレンは単なるシューターではない

ホルムグレンの成長でさらに驚きなのは、ドリブルしながらバスケットにドライブするのがうまいことだ。

ボールさばきは彼がリーグ入りする際の懸念のひとつだった。ところが、むしろそれはかなりのプラス材料となっている。彼の得意技はスピンムーブで、アップ&アンダーと組み合わせることでディフェンダーを大きく引き離すことができる。

シューターとしてかなりの脅威となるため、 ホルムグレンは相手が強めのクローズアウトに来たところを攻め、ダウンヒルでショットを決めることができる。また、そのドライビング力を利用した強力なパスのセンスも見せる。サンダーが多用するカッターにパスを繰り出したり、ダンプオフパスを出して簡単なレイアップに繋げることが得意だ。

ホルムグレンはそれ以外の小さなこともすでによくやっている。スクリーンで自分の守備を引き離すために相手に強く身体を当てることもできる。フェイダウェイショットのためのフットワークも見事で、シカゴ・ブルズ戦ではニコラ・ブーチェビッチを翻弄させてワイドオープンのショットを成功させている。レイアップのタッチもよく、アクロバティックなフィニッシュもできる。小柄な選手を相手に力で押してフィニッシュすることもできる。

これらすべてが、極めて高い技術レベルを持つ選手であることを物語っている。彼は予想以上に優れたスコアラーなのだ。

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チェット・ホルムグレンはすでに優れたディフェンダー

何を参考にしているかにもよるが、ホルムグレンはディフェンダーとして良いか素晴らしいかのどちらかである。Estimated Plus-Minusのような高度な統計では、彼はリーグ全体で2番目の影響力のあるディフェンダーだ。

これらの早い段階での数字にはおそらく多少の誤差もあるだろうが、それでもその数字はホルムグレンがディフェンダーとして優れていることを反映している。

1試合平均2.2ブロックという、より基本のスタッツでは群を抜いている(リーグ5位タイ)。また『Crafted NBA』によると、選手がホルムグレンを相手にしてリム周りでショットを成功させる確率は11.5%も悪くなる(全選手の87パーセンタイル)。

ホルムグレンのブロックについて最も際立つのは、その見せ方ではない(彼はボールを観客席の3列目に向かって思いっきりパンチするのではなく、チップしてボールをキープすることが多い)。むしろ、ショットを阻止するためにとどまって何度も努力する能力が特別なのだ。

大学時代の輝かしい数字から、ホルムグレンが素晴らしいショットブロックをすることは期待されていた。それ以上に懸念されたのは、195ポンド(約88.5kg)の痩せた体格がリーグの巨大なセンターたちに耐えられるかということだった。

ルーキーが経験するこれぞNBAという瞬間は何度かあった(ブルズ戦でアンドレ・ドラモンドに2回連続でやられている)。しかし、サンダーは、たとえばジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)との対戦ではほかのビッグマンと一緒にプレイさせるなど、最もタフなマッチアップを彼に担当させないようにしている。

総合的に見て、ホルムグレンは良いプレイをしているし、主にセンターとして良いプレイをする必要がある状況だ。彼はオールディフェンシブチームに入るポテンシャルを持っている。その素晴らしいオフェンスも合わせれば、彼は素晴らしいドラフトクラスの中で最高のルーキーとなっている。

原文:Chet Holmgren has been the Rookie of the Year so far: How Thunder center emerged from Victor Wembanyama's shadow
翻訳:YOKO B

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。