クリーブランド・キャバリアーズのトリスタン・トンプソンが2015年、総額8200万ドル(約93億3000万円)の5年契約にサインしたとき、彼が大型契約を結べたのはレブロン・ジェームズとエージェントが同じであり、キャバリアーズにおいてジェームズは「法」だからと考えたNBAファンは多い。だが、彼らはトンプソンがキャバリアーズにもたらした本質的な価値を見ていない。
コートにおけるトンプソンの効果を数値化するのは難しいときもある。彼はジェームズのようなスタッツを残すわけでも、カイリー・アービングのように得点を積み重ねるわけでもないからだ。だが、トンプソンの努力とバスケットボールIQがあるからこそ、ジェームズやアービングがハイライトで取り上げられるようなプレイを続けられるのである。
キャバリアーズに加入してからの6シーズン、トンプソンは常に平均で3オフェンシブリバウンド以上を記録している。今季のレギュラーシーズンでは、1試合平均で3.7とディアンドレ・ジョーダンと並ぶリーグ5位タイの数字だ。『NBA.com stats』によれば、オフェンシブリバウンド率13.5%は、平均20分以上プレイした選手の中で8位。プレイオフでの8試合では平均4.9オフェンシブリバウンドと、ポストシーズンで勝ち残っているチームの選手の中で最多の数字だ。
トンプソンは6フィート9インチ(約206センチ)と7フィート(約213センチ)に至らないが、ワイドスパンは7フィート1インチ(約216センチ)。サイズに見合わない横の動きの速さもあり、2度目のジャンプは見事だ。
ただ、オフェンシブリバウンドにおける彼の最大の武器は、ボールを読む力にある。5月10日(日本時間11日)の練習で、トンプソンは「ボールと、選手がどこからショットを打つかを見るだけさ」と述べた。
「コーナーからのショットなら、外れた場合の70%は反対側に落ちる。30%はリングの前に当たるんだ。だから、試合を通じて確率とかチームメートのショットを研究するんだよ」。
「例えば、チャニング(フライ)なら、ショットが外れるときの弧が長い。JR(スミス)のショットはチャニングのような弧を描くことはないから、外れるならもう少しロングのリバウンドになる。チームメートたちを理解するだけさ。ただ、僕はすべてのショットが決まることを願っている。でも、決まらないなら、みんなに『心配するな。僕がオフェンシブリバウンドを取るチャンスがある』と言うのさ」。
キャバリアーズのタロン・ルー・ヘッドコーチも、トンプソンが「すべてのショットが外れるつもりで構えている」と賛辞を寄せる。
ルーHCは『Cleveland.com』で、「カイル・コーバーがショットを打つときでも、フリースローを打つときでも(トンプソンはオフェンシブリバウンドに備えている)」と述べた。
「彼はすべてのショットでリバウンドを取りに行くんだ。彼のエンジンはとてつもないよ。ペリメーターからでもリバウンドに向かい、さらに守備に戻ることができるのさ」。
トンプソンは彼のポジションにおいてエリートプレイヤーとみなされていないかもしれない。だが、オフェンシブリバウンドでの貢献や、守備における柔軟性を考えれば、彼がエリートプレイヤーでないことを議論しないのはおかしいだろう。彼は、自らの力であれだけ稼いだのだ。
原文: Cavs' Tristan Thompson breaks down the science of being an elite offensive rebounder by Sporting News(抄訳)