レブロン・ジェームズは仰天するような出来だった。クリーブランド・キャバリアーズの彼のチームメイトたちは、愚かだった。聞いたことのある言い回しだろう。ジェームズの素晴らしさに対し、キャバリアーズの選手たちの無益さに困惑したのは、このポストシーズンで一度ではない。
5月31日(日本時間6月1日)のNBAファイナル第1戦で、ジェームズはフィールドゴール32本中19本成功の51得点という見事なパフォーマンスを披露したが、キャバリアーズは試合を落とした。チームメイトたちの、フィジカルよりもメンタル面での過失のために。
第1戦はオーバータイムの末に124-114とゴールデンステイト・ウォリアーズが制した。二桁点差での勝利は、ウォリアーズが明らかに勝るという大半の予想に沿ったものだ。だが、この試合のポイントはそこではない。この試合は、キャバリアーズが手中に収め、キャバリアーズが勝つべき一戦だったのだ。チームメイトたちの頭がぐちゃぐちゃにならず、いくつかの不運に見舞われずに、第4クォーター終盤の疑わしい判定見直しがなければ――。
この試合の映像として残るのは、残り32.1秒でキャバリアーズに106-104とリードをもたらしたジェームズのレイアップではない。コート中央の近くに立ち、JR・スミスにショットを打つように怒鳴って咎めるジェームズの姿となるだろう。
スミスはスコアが分からなくなってしまった。少なくとも、確かにそう見えた。タロン・ルー・ヘッドコーチも試合後に「彼は試合が終わったと思ったんだ」と認めている。
「彼は我々が1点リードしていると思っていた」。
だが、スミスはスコアを把握していたと主張しており、「KDがすぐそこにいたのは明らかだった」と、すぐにショットを打たなかったのは、リーチのあるケビン・デュラントが近くにいたからだと述べた。
「ショットを打てるようにもっとスペースをつくろうとしたんだ。それからレブロンを見たら、タイムアウトを望んでいたみたいだった。だから僕は止まって…そして試合が終わったんだ。同点なのは分かっていた」。
振り返ってみよう。残り4.7秒、クレイ・トンプソンのファウルでジョージ・ヒルがフリースローラインに立った。この時点でキャバリアーズは1点ビハインド。ヒルは1本目のFTを決め、107-107とタイスコアになった。だが、ヒルは2本目のFTを外してしまう。
スミスはバスケットから7フィート(約2.1メートル)の距離でオフェンシブリバウンドを手にしたが、ショットに向かうのではなく、3ポイントラインの外へと逃げる。デュラントはスミスに決勝点となり得る良い位置からのショットを阻もうと考え、激しく追いかけたが、スミスはボールをヒルへと渡し、ヒルのショットはブロックされた。
The play that decided Game 1. pic.twitter.com/e1UeOv57Rn
— ESPN (@espn) 2018年6月1日
間近でプレイを見ていたウォリアーズのスティーブ・カーHCも、「最初にリバウンドを取れなかったことでがっかりしたが、それから知ってのとおり我々が幸運に恵まれた」と、スミスはキャバリアーズがリードしていたと勘違いしていたのではないかと推測している。
「彼はショットを打つことができた。でも、ドリブルで外に向かった。彼はリードしていると思ったんじゃないかな」。
スミスがリバウンドを取ってからのジェームズに、タイムアウトを求めていた素振りは見受けられない。ジェームズはスミスからのパスに準備して手を上げ、そのパスが来ないとみるや、バスケットを激しく指さしている。
ウォリアーズのドレイモンド・グリーンは「自分でもレブロンを探したんじゃないかな」と述べており、スミスがジェームズへのパスを狙ったと考えているようだ。
デュラントは「バスケットボールのコートで、僕らはみんなこういうことをしてきた」と、もっと如才ないコメントを残している。
「彼について僕が話すことはできない。ああいう状況で、僕だってバカなことをしている。JRの頭を何がよぎったのかは知らない。でも、彼は素晴らしいリバウンドをし、キャバリアーズに勝つチャンスを与えた」。
ただ、そのチャンスとは、スミスがショットを打つことが条件となっていた。だが、あらゆることが、NBAファイナル第1戦の残り4.7秒、しかも同点という状況で、スミスがスコアを把握しておらず、ドリブルで逃げ切ろうと考えたことを示している。
もちろん、それだけではない。トリスタン・トンプソンは残り2秒でショーン・リビングストンに軽率なファウルをし、審判トニー・ブラザーズの過剰反応と思えるフレイグラントファウル2の宣告で退場となった。
Tristan Thompson Flagrant 2 Play - ESPN pic.twitter.com/4pUhqYNzmT
— The Render (@TheRenderNBA) 2018年6月1日
ルールでは、トンプソンは適時にコートを離れなければいけなかった。だが、彼はすぐにそれをせずにグリーンから愚弄され、その顔にボールをぶつけてしまっている。
試合後、グリーンは笑顔で「あのとおりさ」と述べた。
「人生は続く。彼はフレイグラントファウル2を宣告された。僕らは前進し、次の試合に備える」。
Draymond trolling Tristan Thompson, TT mushes the ball in his face pic.twitter.com/kjikNQ10Fc
— Born Salty (@cjzero) 2018年6月1日
キャバリアーズは不運にも見舞われた。残り36.4秒、ドライブしたデュラントが制限エリアのすぐ外でジェームズと衝突し、オフェンスファウルを宣告される。だが、衝突の際にジェームズは足をスライドさせたようで、ケン・マウアー審判は映像の見直しを求めた。
キャバリアーズは、ジェームズが制限エリア内にいた可能性に基づき(いなかったのは明白)、マウアーが検証を求めたことにこだわった。だが、試合後のマウアーの説明によると、審判たちはジェームズが「ルールで認められた守備位置にいなかった」と結論付け、判定は覆される。デュラントが2本のFTを決め、ウォリアーズは104-104と同点に追いついた。
bballsociety_: Block or charge? ABC NBA Playoff: Game 1: Cleveland Cavaliers at Golden State Warriors https://t.co/SgCQIUgfRU pic.twitter.com/HdaDy4UeGE
— FanSportsClips (@FanSportsClips) 2018年6月1日
ルーHCは報道陣に対し、「ひどいね」と怒りを露わにしている。
「制限エリアの外にいて、その中に倒れこんだと分かっているのに、判定を覆すなんて、これまでなかったことだ。バスケットボールの歴史において、まったくなかったことだよ。それが今夜、ファイナルという最大の舞台で、我々のチームが良いプレイをしていたときにこの判定だ。正しくない」。
ただ、最終的に正しくなかったのは、ジェームズが懸命に汗をかき、力強さを発揮して、今季のポストシーズンで8回目となる40点超えを記録したにもかかわらず、チームメイトたちが引き続き失望させているということだ。
キャバリアーズには、このシリーズで驚きの番狂わせを演じられるチャンスがあった。おそらく、そのチャンスはまだ残っているが、今ではより小さなものとなっている。それでも、チャンスはあった。
しかし、キャバリアーズはスコアを覚えておくことも、冷静を保つこともできなかった。
ルーHCは「これがレブロン・ジェームズだ」と述べている。
「だからこそ、彼は世界最高の選手なんだ。シーズンを通じて彼は我々のためにそれをやってきた。今夜の彼があれだけやって、それで結果を奪われてしまうのは正しくない」。
原文: Cavs' mental mistakes overshadow LeBron James' brilliance in series-altering Game 1 loss by Sporting News(抄訳)