アイバーソンが愛用したプレイ『Iverson Ricky』で活躍を見せるケイトリン・クラーク

Stephen Noh

大西玲央 Reo Onishi

アイバーソンが愛用したプレイ『Iverson Ricky』で活躍を見せるケイトリン・クラーク image

ケイトリン・クラークとアレン・アイバーソンにはいくつか共通点がある。どちらも身長は183cm、どちらもガード、そしてどちらもどんな相手でも得点ができる。歴史的な記録でも繋がりがある。クラークは大学で30試合連続で20得点以上、5アシスト以上を達成し、アイバーソンが持っていた29試合連続という記録を破っているのだ。

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そう考えれば、クラークがアイバーソンが20年以上前に生み出したプレイを使って活躍しているのも不思議ではないのかもしれない。インディアナ・フィーバーの対戦相手が守るのに苦戦しているプレイを紹介しよう。

ケイトリン・クラークとアイバーソン・リッキー

プレーの説明

特に試合が止まったときなどに、フィーバーはクラークのために『Iverson Ricky(アイバーソン・リッキー)』というプレーを起用している。そこから生まれる得点も多く、チームの得意プレーのひとつとなっている。  

それでは"Iverson"と"Ricky"がそれぞれどういう意味で、なぜクラークが上手く使えているのかを解説しよう。

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解説

アイバーソンは現役時、リーグで最も速い選手のひとりだった。彼の手にボールが渡らないよう、ディフェンスはベッタリとくっついて守っていた。パスを受けるスペースを生み出すために、彼はアイバーソン・カットというものを編み出す。両エルボー付近にいる2選手からスクリーンをかけてもらい、フリーになるというプレイだ。

Caitlin Clark cutting across two teammates
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2枚のスクリーンを使うことで、クラークはコートの片側を利用する自由が与えられ、ヘルプディフェンダーを何人か引き剥がすことができるのでパスもキャッチがしやすくなる。それもあって、アイバーソン・カットはNBAやWNBAの多くのスターペリメーター選手が愛用するプレイとなっていった。

2枚のスクリーンを使って、リングに向かって切り込むことで、フリーでのレイアップやジャンプショットを生み出すことをファーストオプションとしているのがアイバーソン・カットだ。フィーバーはケルシー・ミッチェルともこのプレイをよく使っている

クラークの場合、さらに少し変化を加えている。クラークはリングに向かって切り込み、まずレイアップを狙っていると見せかける。

ディフェンダーの最初の仕事は、その飛び込みをさせないことだ。ミネソタ・リンクスのブリジェット・カールトンはこの場面で上手くそれをやれている。クラークとボールの間にしっかりとポジションを取り、リング付近でパスを受けられないようにしているのだ。ここでフィーバーは、このプレイに"Ricky"要素を追加してくる。

"Ricky"はリスクリーン(再スクリーン)の別名だ。クラークがアイバーソン・カットでアリヤ・ボストンののスクリーンを使った直後、ボストンは逆方向へのスクリーンをかける(リスクリーン又は"Ricky")。これによってクラークがフリーになるのだ。

このリスクリーンで、クラークとディフェンダーの間に大きなスペースが生まれ、スピードに乗った状態でパスをキャッチすることが可能となる。これだけのスペースを与えられれば、あとはクラークの自由だ。フィーバーはこのプレイを使って、彼女のレイアップや3ポイントショットを多く生み出している。

クラークをベッタリと守りパスを受けさせないようにしているディフェンスに対して、リスクリーンはとても有効な技だ。この守り方は多大な労力を要する。最初の飛び込みを阻止したディフェンダーが仕事を終えたと思い込み、一瞬だけ気を抜いてしまうのは自然な反応だ。ディフェンダーが0.25秒ほどガードを下ろしたその瞬間に、リスクリーンがやってくる。クラークのような優れた選手には、そのわずかな隙があれば十分なのだ。常に動き回るクラークのプレイは、試合中のすべての瞬間で彼女を止めるという選択が困難となる。

アイバーソン・リッキーはあらゆるリーグで愛用されるプレイになり始めている。ファンから多くの批判を受けることもあるフィーバーのクリスティー・サイズ・ヘッドコーチだが、クラークに多くのスペースを与えるために賢い起用方法をしている。

ここ数十年でバスケットボールは大きく変化したことは確かだが、現代のスター選手でも過去に生み出されたプレイを使って活躍することは可能だ。クラークを始めとした多くのトップ選手たちが、今でもアイバーソンのプレイを自分たちのレパートリーに加え続けているのだ。

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。