「僕の仕事は、彼の仕事を楽にさせること」
ワシントン・ウィザーズがラッセル・ウェストブルックを獲得してから1週間が経った。ウェストブルックは9度オールNBAチームに選出され、元MVPであり、ここ6シーズンで平均26.4得点、9.7アシスト、9.2リバウンドを記録している。チームやファンの間で、新シーズンに向けた興奮と期待は予想通り高い。ウェストブルックが再びスコット・ブルックス・ヘッドコーチと手を組み、チームの若手に与える影響もその好材料のひとつだ。
しかし、最も議論されているのは、ウェストブルックがいかにして、昨季キャリア最高と言えるシーズンを送ったチームのスターであるブラッドリー・ビールと共存できるか、ということだろう。昨季、ビールはここ10年で平均30得点以上を記録したわずか5選手のうちのひとりとなった。
移籍市場がようやく落ち着き始め、ビールとウェストブルックは実際にコートで共に練習を開始している。ブルックスHCは両者の共存と、残りのローテーションの組み立てを探り始めている。
コート上でのお互いの役割について、ビールもウェストブルックも似たようなシンプルなプランを口にしている。
「僕の仕事は、彼の仕事を楽にさせることだ」と、ビールはトレーニングキャンプ最初のメディア対応で発言した。
数日後、ポッドキャスト『Off The Bench』でのインタビューでウェストブルックも似たような発言をしている。
「僕の仕事は、彼をしっかりと助けて、彼が楽にプレイできるようにすることだ」。
どちらもお互いとフィットするか、ケミストリーは大丈夫かなど心配している様子はない。それには理由がある。ウェストブルックはキャリアを通してエリートスコアラーと共にプレイしており、ビールも周りとしっかり合わせてプレイできる能力が自身にあることに自信を持っているのだ。
ビールは「僕は周りに合わせるのが得意」と話す。
「自分が誰とプレイしていていようと、新加入した選手であろうと、合わせてプレイすることができる。問題はないと思うよ」。
2人をよく知る指揮官
ブルックスHCはどちらのスターガードについてもよく知っている。ここ4シーズン、ビールがウィザーズでスター選手になっていく間、彼はチームをコーチし続けてきた。そしてウィザーズに来る前は、2008-09シーズンから7シーズンをオクラホマシティ(1シーズンは移転前のシアトル)でヘッドコーチを務めていた。その最初のシーズンのスタールーキーは誰だかご存知だろうか? ラッセル・ウェストブルックだ。
ブルックスHCは2010年にコーチ・オブ・ザ・イヤーに選出され、ウェストブルックはブルックスHCの下で3度オールスター出場を果たし、サンダーはウェスタン・カンファレンス・ファイナルに3度進出。ファイナルには1度出場している。
だからこそ、ブルックスHCはウェストブルックがチームに何をもたらしてくれるのかを深く理解しているのだ。
ウェストブルックが初めてウィザーズの施設にやってきた先週末について、ブルックスHCは「昔を思い出したね」と振り返る。
「これまでも見てきたことだ。彼の気迫は見てきた。チームのレベルを上げてくれるのも見てきた。選手たちはそれが彼の影響だと気付いていないかもしれないが、明らかにみんなの集中力とレベルは上がっていた」。
ウェストブルックがウィザーズで上手くやっていけるかどうかの大部分は、ビールと共存できるかにかかっている。ブルックスHCはそこに関して前向きで、「彼とブラッドとのパートナーシップは問題ないだろう。どちらも似たタイプだ」と語っている。
「どちらもバスケットボールが全てなんだ。それが彼らの仕事で、愛することでもある。その他の要素はそこから派生するものだ」。
オンボールでのプレイに慣れている2人
どちらの選手も、自身がボールを持った状態でプレイすることに慣れている。ウェストブルックのキャリア使用率(usage rate/当該選手のプレイでポゼッションが終わる割合)32.69は、マイケル・ジョーダンに次いでNBA歴代2位という高さだ。
そして昨季のウィザーズのオフェンスはビールから始まり、ほとんどの場合、ビールで終わっていた。昨季の彼の使用率は34.4で、自己最多よりも6ポイント高く、偶然にも2019-20シーズンのウェストブルックと同率だった。
ビールの平均得点は、ウィザーズの2番目に高いスコアラーよりも15.1得点も上回っていた。平均アシスト数(6.1)とアシスト率(29.1)では自己最多を記録している。
ビールがシーズンを通して見せた活躍は、彼がリーグ屈指のオフェンシブプレイヤーであり、コート上の責任を大きく担うことができることを証明した。しかし生産性は増したものの、効率は落ちていた。エフェクティブ・フィールドゴール成功率(3ポイントショットの得点数の違いを加味した成功率)の52.0%は、2015-16シーズン以降で最も低い数値だった。
NBA.comによると、昨季ビールが放ったフィールドゴール試投のうち50.2%は、相手のディフェンスがタイト(約60~122cm)かとてもタイト(0~60cm)だったという分析が出ている。これはキャリアでも圧倒的に高い。
ウェストブルックがローテーションに入ることでディフェンスが引きつけられ、ビールがよりオープンになり、オフボールからの得点チャンスが生まれるはずだ。昨季、ビールはキャッチ&シュートからの3P成功率が38.0%で、ドリブルから放たれた3Pショットより5%も高い。
ウェストブルックは「ブラッドはスーパースタータレントだ」と話す。
「彼は昨季それを証明しており、これからもより上手くなっていく。僕の仕事は、彼が上昇し続けられるようにし、より上達していけるようにプッシュすることだ」。
ビールは「彼は真のポイントガードで、僕は真のツーガード(シューティングガード)」と説明している。
「それだけ見ても、僕らが上手く混ざり合えるのがわかるだろう」。
ビールがよりオフボールからの役割に戻り、世界レベルのシャープシューターであるダービス・ベルターンスがいることで、ウェストブルックが自身の強みを発揮するスペースも十分に生まれるだろう。その強みとは、飛び抜けた身体能力を使ってペリメーターのディフェンダーを抜き去り、リングまでアタックすることだ。ここ3シーズン、ウェストブルックのゴール周辺のショット成功率は61.1%、65.0%、64.0%で、彼がどれだけそこから効果的なのかを物語っている。
ディフェンスがドライブを止めようと収縮すれば、ウェストブルックは外で待っている味方を見つけることができる。2016年以来、ウェストブルックは156試合で10アシスト以上を記録しており、これは同期間中リーグトップの数字だ。
勝利のカギは?
ビールとウェストブルックはどちらもスーパースター・タレントであり、どちらもが試合で圧倒的な数字を残してリーグ全体に響き渡るような活躍ができる存在だ。しかし、注目されるようなスタッツを勝利に紐付けられるかは、それぞれが周囲とどれだけ上手くやっていけるかにかかっている。
今のウィザーズのロスターで、5年以上のNBA経験がある選手はわずか4選手しかいない。ビール、ウェストブルック、イシュ・スミス、そしてこのオフに契約したロビン・ロペスのみだ。ベルターンスは4シーズン、そして残りの選手たちは全員3シーズン以下だ。ビールとウェストブルックは、トーマス・ブライアント、トロイ・ブラウンJr.、八村塁、そしてルーキーのデニ・アブディヤといった若手の主力選手たちと共に、期待値が高まる新シーズンを迎えることとなるのだ。
ブルックスHCは「(若い選手たちは)ラッセルがどのように準備に取り組み、どれだけ集中していて、試合前にロッカールームでどう過ごしているかを見ることになる」と話す。
「彼のコミュニケーション能力は素晴らしいんだ。相手の肩に手を回してやるべきか、もう少ししっかりと指示をしてやるべきか、その見極めが優れている。彼は勝つことがどういうことなのかを理解している」。
ブラウンJr.は「(ウェストブルックは)ブラッドと同じように、いろいろと学ばせてもらいたい選手だ」と話している。
トレーニングキャンプ開始後、ウェストブルックはブラウンJr.を筆頭に若手選手のプレイに感心している様子だ。
「よくわかったのは、彼らがしっかりと努力し、聞く耳を持っているということだ」とウェストブルックは語る。
「彼らが一番やるべきことは、努力をし、コーチ・ブルックスや他のコーチングスタッフの話に耳を傾けることだ。それが成長することへの唯一の道なんだ。ミスはすればいい。努力さえしていれば、それは問題ない。若い選手たちは努力したいという姿勢を見せてくれている。練習前からやってきて、練習後に時間を費やし、そういった習慣をつけることは個人のキャリアのために良いのはもちろん、チームにとってもプラスになるんだ」。
Brodie on the @WashWizards' young core!
— Wizards Podcast Network (@WashWizardsPN) December 8, 2020
FULL EPISODE: https://t.co/SuubgibsUS pic.twitter.com/eL17FLGxkd
ビールは「勝つことに貪欲、成長することに貪欲な若手が揃っている」と話す。
「ラスのエナジーとメンタル面でのアプローチは、このチームにとって最適だろう」。
原文:Beal, Westbrook aligned on fit: “My job is to make his job easier" by Jackson Filyo/WashingtonWizards.com