【バスケW杯】アメリカ代表でも活躍するオースティン・リーブスの秘訣|FIBAワールドカップ2023

Mike DeCourcy

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オースティン・リーブスの物語は、約半世紀前に映画「ロッキー」が公開されて以来、最もあり得ないようなスターへの階段を駆け上がる話かもしれない。

そう、リーブスは彼なりのやり方で大変なスターとなっているのだ。そうでなければ、歴史的に最も強力なバスケットボールの代表チームの一員としてプレイし、ボールを持つたびにファンから大きな声援を送られることはないだろう。

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FIBAバスケットボールワールドカップ2023の初戦、リーブスは12得点をあげてニュージーランド相手の勝利に貢献した。続くギリシャ戦でも15得点を記録し、2次ラウンド進出を決める白星に貢献している。いずれもベンチスタートからの途中出場で、フィールドゴール成功率58%、3ポイントショット成功率56%、4アシストをマークした。

これらの活躍で思うのは、彼がどこから来たのかということだ。

高校時代に『247Sports』でスター選手として評価されず、大学時代にNBAチームからドラフトで指名されなかった彼は、どのようにしてワールドカップの王座奪還を目指すアメリカ代表のローテーションプレイヤーにまで成長したのだろうか。

彼のことを見てきた人たちの口から繰り返し聞こえてきた言葉は「自信」だ。

オクラホマ大学で指導したロン・クルーガーは「自信に満ちている」と評した。

『ESPN』でリーブスの試合を多く担当してきた大学バスケのアナリストであるフラン・フリシラも「自信」と述べている。

2019-2020シーズン最終戦でリーブスに41得点を許したテキサス・クリスチャン大学のコーチを務めるジェイミー・ディクソンも、「彼はとても自信たっぷりの子なんだ」と話した。

ロサンゼルス・レイカーズでのプレイ、そしてアメリカ代表として臨んだ5試合の強化試合やワールドカップでの3試合でのプレイからも、それは分かっただろう。得点を記録したり、魔法のようなパスを通した時、リーブスは臆することなく相手にそれをアピールする。

メンフィス・グリズリーズとのNBAプレイオフ・ファーストラウンド第1戦、メンフィスでの試合でも、リーブスは自信をあらわにした。彼にとって初のNBAプレイオフというだけでなく、故郷から最も近いNBAアリーナでの一戦だった。

フリースローライン付近からのジャンプショットが、リングを何度か叩いてからネットを通過すると、リーブスは自分の胸を何度か叩きながら「オレだ!」と叫んだ。

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フリシラは『スポーティングニュース』で「自信と、ほめ言葉としてのうぬぼれ。今の彼はそれを見せている。とにかく自分に強い自信を感じているのが常に明らかだ」と話した。

「自信、そして才能、それからガードのわりにあのサイズを持っていること。彼がこれほど優れた選手だとは思っていなかったが、様々な事情で見過ごされていたのだろう」

高校時代のリーブスは、シーダーリッジ高校で3回の州優勝を達成した。ある試合で73得点をあげ、最上級生の時に平均32.5得点を記録した事実が、いかに貢献したかを反映している。

だがそれでも、有力大学は彼をチェックしに行かなかった。当時ウィチタステイト大学のコーチを務めていたグレッグ・マーシャルが、ミズーリステイト大学での遠征の帰りに立ち寄って、リーブスをスカウトしたのだ。

当時のウィチタステイト大で選手育成マネージャーを務めていたデボン・スミスは、スポーティングニュースで「彼は自分に絶対の自信を持っていて、我々が注目するはずだと分かっていたんだ」と振り返っている。

ウィチタステイト大でのリーブスは、将来NBA入りするランドリー・シャメットらの後塵を拝し、1年生の時に1試合平均12分間、2年生で同22分間という出場時間だった。その彼の勝利への飽くなき執念がうかがえたのが、ウィチタステイト大が敗れたマウイ・インビテーショナル決勝のノートルダム大学戦かもしれない。

チームが1点をリードしていた残り13秒、リーブスはフリースローを失敗。続くノートルダム大のショットも決まらず、リーブスはボールを手にしたものの、動きがとれず。ノートルダム大にポゼッションを明け渡し、そこから残り1秒に味方のファウルで決定的なFTを与えることとなった。

スミスはスポーティングニュースで「リーブスは自分の責任と感じていた」と話している。

「まったく彼のせいではなかった。我々が残り30秒で勝つために必要なプレイをやれなかったんだ。だが、彼はとても取り乱していた。チームメイトたちの名誉のために言っておくと、彼らは兄弟のように深い絆で結ばれていた。あの夜はずっと彼をみんなが支えていた」

「そして翌朝、ビーチで彼らが7on7のフラッグフットボールをやっていたのを覚えているよ」

ウィチタステイト大に入学した時のリーブスの最大の弱点は、彼の「弱さ」だった。両肩をそれぞれ手術しなければならず、それによって大学レベルの強化トレーニングを最大限に活用する機会が限られてしまったのだ。

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NBAドラフトにエントリーしたルームメイトのシャメットをはじめ、良い関係にあった友人たちの多くがウィチタステイト大を離れてから、リーブスが大学を変えることを決めたのは、自身の肉体とプレイを向上させる素晴らしい機会につながった。

クルーガーはスポーティングニュースで「ウチに来たどの選手よりも、彼は転校してからの1年間を最大限に生かした」と明かしている。

「ウィチタステイト大でのリーブスはもっとキャッチ&シュートの選手だった。だが本当にプレイの幅を広げたんだ。彼は自分で困難な立場に身を置いたんだよ。オールラウンドに向上するためにやるべきことを分かっていた。そしてそれをやってのけたんだ」

「毎日、彼は戦って競った。毎日、健全なやり方でチームメイトたちに惨めな思いをさせたんだ。彼がファーストユニットを向上させていき、当然、彼自身も向上していった」

オクラホマ大での最初の2シーズンは、前述のテキサス・クリスチャン大との一戦で終わった。もともとはビッグ12トーナメントや、ほぼ確実にNCAAトーナメントを戦う予定だったが、COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックのためになくなってしまったのだ。それでも、リーブスはFG23本中12本成功、FT16本中15本成功を記録し、6アシストもマークするなど好印象を残した。

ディクソンはスポーティングニュースで「ずっと彼を良い選手と思っていたが、ウィチタステイト大を離れた時の彼を考えれば、その上達ぶりに驚いた」と話している。

「単なるキャッチ&シュートの選手のままだろうと思っていた。だが、我々と対戦した時の彼はほかのこともできるようになっていたんだ」

4年生の時にリーブスはオールビッグ12ファーストチームに選ばれ、スポーティングニュースのオールアメリカチームでも票を獲得したが、トップ15入りには至らなかった。フリシラは、リーブスのプレイで唯一分からなかったのが、3Pの精度だったと話している。オクラホマ大での2シーズンで、リーブスは美しいフォームとクリーンなリリースを持ちながら、約30%の成功率だったのだ。

その点が、NBAのチームにアピールするのに影響したかもしれない。それでも、6フィート5インチ(約196センチ)ながらポイントガードができることを証明するアシスト数と、テキサス・クリスチャン大との試合のような得点力を何度か記録したことで、ドラフト指名候補になると思われた。

リーブスは指名されなかった。ただそれは、42位での指名を本人が望まなかったからでもある。デトロイト・ピストンズが2ウェイ契約を望んでいたからだ。リーブスはフリーエージェントでもっとうまくやれると考えた。そしてある意味、そのとおりとなったのだ。レイカーズからの提示も2ウェイ契約だったが、サインしてから2か月としないうちに2年の本契約を結び、そしてわずか2シーズンで4年5300万ドル(約76億8500万円/1ドル=145円換算)の契約を勝ち取るに至ったのである。

彼はそれだけの契約を、最も多くの得点をあげてきたレブロン・ジェームズとコートに立つことへの自信、そしてそれだけでなく、時にはキング・ジェームズを差し置いてでもショットを打つべきという信念で勝ち取ってきた。自分がオープンになっているからというだけではない。得点をあげる上で特定の相手に対してリーブスが最高の選手という場合もあるからだ。

Austin Reaves, LeBron James 07012023
(NBA Getty Images)

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レギュラーシーズンでは平均13得点、3P成功率40%という数字だったが、レイカーズがウェスタン・カンファレンス・ファイナルまで勝ち進む中で、リーブスは平均17得点、3P成功率44%をマークした。

クルーガーは「みんなが思うよりもオースティンは大きく、そして長い」と話している。

「そして彼の面白いところは、本当に守備がうまいんだ。アイソレーションで彼を倒せると思っても、普通はコンテストされてタフな2ポイントショットを打つことになる」

そして今、リーブスはアメリカ代表で試合を変えるセカンドユニットの一員として重要な役割を担っている。タイリース・ハリバートン、パオロ・バンケロ、キャメロン・ジョンソン、そして直近ではブランドン・イングラムとともに、第1クォーター終盤や第2Q開始から途中出場し、対戦相手をどうしようもない状況に立たせることに貢献している。

前半も後半も、リーブスとハリバートンがバックコートでコンビを組んでいる時、出場時のチームの得失点差を表すプラスマイナスは+16だ。これはチーム最多の数字である。ニュージーランドとの開幕戦でスターターが苦しみ、7-14とビハインドを背負った際も、リーブスは途中出場してすぐに仕事をした。5得点、4アシスト、1スティール、1リバウンドを記録し、アメリカを苦境から救い出し、30-26と4点のリードに導いたのだ。

アメリカ代表のスティーブ・カー・ヘッドコーチは、報道陣に「スロースタートだったが、セカンドユニット全体が出場してから船を立て直してくれた」と話している。

「そのことは良く思っている。オースティンやタイリースのあのグループ全体が、ボールの動かし方やペースチェンジなど、本当に見ていて楽しかった」

アメリカが2014年以来となる王座返り咲きで金メダルを手にするか、7位と落胆の結果に終わった2019年のオーストラリア大会のようになるか、その違いをつくるのは、リーブスやハリバートン、バンケロの出来となるかもしれない。

30歳以上のベテランがひとりもおらず、平均年齢が25歳未満という若いチームだけに、荷が重いかもしれない。だが、リーブスはプレッシャーに対処できると示唆している。

フリシラは「オースティンで本当に目立つのは、みんなが思っている以上に自分は優れていると分かっていることだと思う」と話した。

「みんなというのは、私のような人間を含めてだ。彼は自分に自信を持っている。振り返ってみると、だからこそ彼はリーグであれだけ優れた選手なんだ」

「レイカーズでサマーリーグに臨んだ日から、彼はずっと自分がいるべきところにいるかのように振る舞ってきた。あとはもう歴史、周知の事実だと思う」

いや、まだ歴史ではないだろう。

だが、ワールドカップが終わるまでには、歴史となっているかもしれない。

原文:Austin Reaves believes: Confidence is key to Team USA's not-so-secret weapon at FIBA Basketball World Cup(抄訳)

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Mike DeCourcy

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.