契約交渉の終盤、もし1本の電話がなかったら、アンドレ・イグダーラはヒューストン・ロケッツのジャージーを着て2017-18シーズン開幕を迎えていたかもしれない。
今夏ゴールデンステイト・ウォリアーズと再契約した万能型スウィングマンのイグダーラが、ロケッツに移籍していた可能性があったと『ESPN』のクリス・ヘインズ記者が伝えた。ヘインズ記者によれば、イグダーラはウォリアーズが最初に提示した契約内容に満足しなかったという。NBA選手会の副会長を務めるイグダーラは、選手としての自分の価値を最大限に高め、後進にとって良い見本になる必要があると考えた。特に2013年にウォリアーズと4年4800万ドル(約53億9900万円)という格安の契約を結んだ後だったため、余計にその思いが強かったのだろう。
フリーエージェント選手との交渉解禁後、ウォリアーズはイグダーラに3年3600万ドル(約40億4900万円)という条件を提示した。しかし、イグダーラ側は年俸1600万ドル(約17億9900万円)という線を譲る考えはなく、ヘインズ記者のリポートによれば、イグダーラは7月1日(日本時間2日)にロサンゼルス・レイカーズ、サンアントニオ・スパーズ、ロケッツの話も聞いたという。
中でもイグダーラの心を掴んだのはロケッツのプレゼンテーションだった。イグダーラと交渉していたことを知らず、たまたま違う用事でダリル・モーリーGMに連絡を入れたジェームズ・ハーデンが電話でイグダーラと話し、その数日前にロサンゼルス・クリッパーズからロケッツにトレードされたばかりのクリス・ポールが交渉の席に姿を見せた。ヘインズ記者によれば、イグダーラにとって過去最高の勧誘になったという。
ロケッツとの交渉後、イグダーラはスティーブ・カー・ヘッドコーチとボブ・マイヤーズGMと会談。1時間に及ぶ話し合いの末、イグダーラはヒューストンへの移籍を決断しかけていた。
ウォリアーズとの再契約を決めた最大の要因は、イグダーラの代理人ブランドン・ローゼンタールが取った行動にあった。ローゼンタールはマイヤーズGMに電話を入れ、イグダーラの年俸を上げる方法がないかを尋ねた。マイヤーズGMは、ジョー・レイコブ・オーナーに連絡を取り、改めてイグダーラに3年4800万ドルという条件を提示した。
イグダーラにウォリアーズを退団する意思はなかったのかもしれないが、ハーデン、ポールらを擁するロケッツでのプレイは魅力的に映ったはずだ。リム周辺を守れるクリント・カペラがいる以上、ハーデン、ポール、イグダーラ、エリック・ゴードン、トレバー・アリーザらによるスモールラインナップは、対戦相手にとって厄介でしかない。また、オフェンスの爆発力も申し分なかっただろう。
それでも最終的に、ウォリアーズは自分たち以外のチームが優れた選手を揃えることを許さず、コアメンバーの維持に成功した。
原文:NBA free agency rumors: Andre Iguodala nearly left Warriors for Rockets by Jordan Greer/Sporting News(抄訳)